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その5 いよいよ冒険者の町へ、何この変な町


 冒険者の町へと続く森の中の小さな道を歩きながら、カレンと会話が弾んだ。


「え……」

「あ……」

「う……」


 ああなんてこった! 会話が弾んでるよ! 

 これでも女の子との数年分の会話なんだ、女性専用コミュ障のボクを舐めてもらっては困るのだ。


「それが初期装備の武器なの?」


 ボクの腰の木の棒を覗き込みながらカレンが聞く。


「これ……ゴミ……?」


 一旦抱えていたお肉の袋を左手でぶら下げて、木の棒を取り出して彼女に見せる。

 これ一体なんなの。


「うーん、初期装備だし何かの杖なのかな、意味があるのかも知れないから捨てないでちゃんと持ってた方がいいよ」

「うん……」


 頷きながら大事に腰に差す。


「みのりんはお金はある?」

「え……と」


 腰の袋から、多分これだろうなという硬貨めいた金属を取り出して見せる。


「百ゴールド硬貨が二枚だね、うん、それだけあれば冒険者の町で一ヶ月くらいは暮らせるよ。その間にアルバイトとかして装備を揃えていけばいいよ。因みにみのりんを迎えに来たこのアルバイトは十ゴールド、ちょっとしたお小遣いだね。今朝、クエスト掲示板の張り紙を見て速攻で依頼ゲット、すぐ来たんだよ、早い者勝ち!」


 という事は今午前中なんだ。


「このやんばるトントンのお肉もお肉屋さんで売れるよ、半分は私が食べちゃうけどねー」


 ケラケラと笑うカレンを眩しそうに見つめながら、ボクもこんな風になれるかな? と思う。


 色々と考えなきゃいけない事は多そうだけど、手持ちのお金で一ヶ月は暮らせると聞いて少し安心した、アルバイトという単語にも安心感があるのだ。

 まあアルバイトなんて、一切した事ないんだけどね。

 親の肩叩きをして十円貰ったくらいが関の山だ。



 森が開けるとそこは草原だ。

 開放的な視界になり、牧歌的な景色の中を歩いて行くとやがて町が見えてきた。


 ぐるりと壁で覆われた町、いわゆる城塞都市というやつだろうか、見てるだけでもワクワクしてくる。


 町に到着すると、二人で石でできた大きな門をくぐる。

 門から入ってすぐは商業地区なのか、屋台やお店が立ち並んでいて、人の往来も多く馬車も走っているようだ。


「へー、へー、へえー!」


 興味津々で辺りを見まわすと、町も、行き交う人々も、ゲームに出てくるような異世界的な風情で親しみが湧いた。

 うんうん、確かに遊んでいたゲーム世界もこんなんだった。


 たまにスーツっぽい姿の人を見かけたり、ジーンズにTシャツのような現代でも違和感のない服装もいるけど、まあ服なんてどこもそんなもんだよね。


 通りをセーラー服姿の女子学生が歩いている。見なかった事にしようか、何となく関わってはいけないような気もするし。

 ま、まあなんだ、学校だってそりゃあるだろうし……


 他にはチャイナドレスとか……迷彩服の兵士……サムライ…………

 節操の無さに町の見学はやめてカレンの胸を見る事にする。


「ここはこの国の端っこにある町で、そんなに大きくはないけど冒険者も沢山滞在してるんだよ、だから文化もごっちゃごちゃ。通称冒険者の町、正式名称はアドベンドア。なんだかアドベンチャーとドアを足したみたいなお手軽な名前だよねえ」


 さっきまでキョロキョロと見まわしていたボクを見て、歩きながらカレンが説明してくれた。

 うん、この町の正式名称も覚えなくてもよさそうだな。


「冒険者……て……何?」

「国から外はモンちゃんの領域なんだ、国の中にもわんさかいるけど、外に出たらモンちゃんだらけ。あ、モンちゃんてモンスターの事ね」


 そんな気軽な扱いなんだこの子、さっきまでお肉扱いだったしな。


「その領域の探検や調査をする人、魔族と交渉したり商売する人、盗掘する人、町や人を守る護衛、ただの旅人、戦いたいだけの人、モンスター愛好家やコレクター、何でも屋、町の掃除、引き篭もり、その他もろもろめんどくさいから〝冒険者〟で一まとめにしてるんだね」


 最後の方なんて冒険してなかったぞ。


 魔族って単語が出てきたけど、やっぱりいるんだろうか。


「まお……いるの?……」

「いるよ、魔王ちゃん」


 魔王ちゃん!?


「魔王ちゃんは魔族の里を支配しててとっても強いって話だよ」


 そんな相手をちゃん付けしますかこの人、カレンがなんだか大物に見えてくる。


 ともあれ、カレンのおかげでざっくりしてるけど、大まかな世界観は見えてきた。

 何しろあの手抜き取り説のせいで、何の情報も頭に入ってないんだもんだから助かったのだ。


 ボクは転生者としてメキメキ頭角を現して、いずれその魔王と戦うなんて事があるのかも知れない。

 魔王と戦いこの世界を救う勇者みのりん! 都合のいいカッコイイ自分を思い浮かべていたら。


「魔王ちゃんは恐ろしいんだよ、冒険者の集団でも軍隊でも敵わないんだ。襲って来たら町も国も一瞬で終了だって」


 にこやかに話すカレンにボクは決心した。


 うん、魔王の事も覚えなくてもいいな。

 そんなヤツと出くわさないようにこっそりと生きていこう。


 魔王ちゃんとは絶対に出会いませんように!


次回 「スカート姿で町を歩いても大丈夫だよね?」

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