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その27 敵の襲撃者がやってきた


「鬼姫出て来い! 今日という今日は許さないぞ!」

「そうだそうだ! いい加減頭にきたのだ!」


 広場の端に設置された時計塔のてっぺんに現れた二つの人影。


 鬼が島を襲撃してくる敵ですか、やっぱり桃太郎ですかね?

 なんだ、ようやく金太郎は御役御免になりましたか。そうですよね、やっぱり鬼が島には桃太郎に来てもらわないと気持ちが悪いです。


 襲撃者は背中に翼が生え褐色の肌。一人は塔の上に仁王立ち、もう一人はその隣でパタパタと浮いている。二人とも女の子のようだ。

 あれって……


「魔族だ! 魔族が殴り込みに来やがった!」


 やっぱり魔族だったわ。


「我が名はリヴァイア! 魔王軍幹部にして魔王さまのご寵愛を受ける者!」

「我が名はキルギルス! 魔王軍幹部にして魔王さまのご寵愛を受ける者! って被ったのだ! 私が一番なのだ!」


「なにおう! 勝負するかキルギルス!」

「受けて立つのだ! 殺人電撃ドーン!」


 時計塔の上で迷惑な喧嘩を始めた魔族の二人の女の子をジト目でみつめる。

 キルギルス……毎回突然出てきますね。


「何をやっとるんじゃあいつらは……」


 寵愛って女の子に何してるんですか魔王ちゃん。


「風評被害じゃ、わらわのオヤツや人形を少し分けてやってるだけじゃ。半分奪い取られとるようなもんじゃがな」


 リヴァイアって子はお初ですね、褐色の肌に背中には小さな翼、ロングの金髪にはお約束の赤いリボンだ。

 ん? リヴァイア?


 ほらリヴァイアさんじゃないですか。やっぱり田中さんとか山田さんの親戚じゃないですか。


「こんなやつがおったのすっかり忘れとったわ。そうか、あいつ田中さんの親戚じゃったか、全然知らんかったな」


 魔族の二人は魔王ちゃんがいる事には気がついていない、そりゃそうだ、取っ組み合いの喧嘩中なんだから。迷惑な話だ。


 リヴァイアさんとキルギルスの謎の喧嘩で、あちこち電撃だ冷凍光線だの爆発が起きて宴会会場がとばっちりを受けている。

 迷惑な喧嘩のとばっちりで、鬼族の人たちが吹き飛ばされてるんだけど。


「こら! やめなさいよあんたたち! 喧嘩なら他でやって! きび団子に砂がかかったじゃない!」


 鬼姫がどなっているが、怒るとこそこですかね。


「出たな鬼姫! 今日こそは許さない、討伐してやる!」

「私が何したっていうのよ!」


「魔王さまの悪口を言ったのだ! チンチクリンだの大平原だの煎餅だの乗せても玉が転がらないだの!」

「いや幼女体型としか言ってないわよ」


「戦争じゃな」


 ま、待って下さい魔王ちゃん、落ち着きましょう。そんな下らない事で魔族と鬼族の全面戦争なんか起きていいわけがありませんから、器が小さいですね。


「なによ胸が小さいくらい、大きいとむしろ大変なんだからね! それにこの青い髪の子なんか、自分の悲しい境遇に絶望せずにたくましく生きてるじゃない! この子を見習ったらどう!」


「戦争ですね」


 魔族と鬼族と青い髪族との間で世界大戦の勃発です。

 え? 下らない事? あはは、そんなわけないじゃないですか、戦争が起きても仕方無い案件ですよこれは!


「私も参戦するわよ、何だかわからないけど魔族が出た以上、私の最大奥義のフレイムオーバーキルでこの辺りもろとも吹き飛ばせばいいのよね?」

「がんばれお姉さま!」


 ピンク髪族まで参戦して来た――!

 とにかく皆さん落ち着きましょう、特にミーシア! あなたが一番危険な爆発物なんですからね、自重してください! 二番目は魔王ちゃんですよ。


「自重なんかお断りじゃ、わらわも参戦するぞ! 何しろわらわが被害者のまお……もがもが」


 セカンドボムの爆発もさせません!

 カレン、そこのお団子屋さんでお団子を買ってもらえますか、うんと甘いやつでお願いします。


「うんいいよ! 買ってきた! お団子に甘い餡子まで乗せてもらった!」


 なんという早さですか、カレン以外には出来ない芸当ですね。

 カレンに買ってもらった甘いお団子を、もがもがちゃんの口に挟む、楔止めである。


「ねえみのりん、もがもがちゃんは何て言いかけたの?」

「あはは、何でしょうねボクもよくわかりませんよミーシア。きっともがもがちゃんは、もがもがするとお菓子をもらえるからよくもがもがするんですよ」


 本当にそんな気もしてきた。


 ミーシアの問いに答えながら、お団子が挟まってフリーズしたもがもがちゃんを屋台の下に放り込む。すみませんオジサン、この子にお団子をここで食べさせてあげてください。


「なんか魔王さまの声が聞こえた様な気がしたが、気のせいか?」

「魔王さまの声に友達のカレンやみのりん、幻聴や幻覚まで見えるのだ――! なんで?」


「これはあれだキルギルス、鬼族の連中が幻惑魔術で私たちを騙そうとしてるんだ」

「卑怯なやつらなのだ! もう許さないから!」


「とんだ言いがかりできび団子に砂をかけるのやめてもらえないかしら!」

「きび団子に悪さするあの悪魔を退治するぞ!」


 あーあ、なんだかわからないけど魔族と鬼族の全面戦争になっちゃった。


 あちこちに降り注ぐ電撃や氷、鬼族もこん棒や刀でそれらを跳ね飛ばしている、電撃を跳ね返すとかむちゃくちゃな戦いだ。


 鬼族が火矢や魔法火炎弾で応戦、魔族が雷と氷の矢を落とす。あちこちで爆発が起こり、吹き飛ぶ人たち。

 でも丈夫なのか鬼族に怪我人はいない。


 鬼族の兵士の一人が、勢い余って時計塔を刀でぶった切った。倒れてくる時計塔に巻き込まれて地面に落下する魔族リヴァイアさん。


 その彼女をすかさずさっきの鬼族兵士が刀で叩き斬った。とそこにキルギルスの巨大な電撃砲を食らい、その周辺が兵士を巻き込んで木っ端微塵に吹き飛んだ。


「痛ってー! アザになっちゃっただろ!」

「大丈夫かリヴァイア、赤くなってるぞ? 軟膏でも塗っとくか?」


 一方鬼族の方も。


「ふー死ぬかと思った」


 頭チリチリで出てくる。


 何で平気なんですかこの人たちは! 建物をぶった切った刀で一刀両断されたんですよ!

 木っ端微塵に吹き飛ばされたんですよ! 鬼族も魔族も、もうちょっと常識を持ってください!


「まだまだあああ!」

「うりゃああああ!」


「ねえみのりんどうしよう、キルギルスちゃんも鬼姫さんたちも友達だし、どっちの味方にもつけないよ」


 さすがのカレンも引き気味だ、彼女からしたらどっちも友達、そう、挨拶して握手した時点で鬼姫は友達なのだ。友達のひいきなんか出来ないのだろう。


「さっき聞いたけど、リヴァイアさんを討伐する依頼を受けたんでしょ? ならあのリヴァイアさんって子だけを畳んでスマキにすればいいんじゃないかな?」


 タンポポの提案になるほどとも思う。

 この女子高生の指摘通り、討伐の依頼指名はリヴァイアさんだけだった。キルギルスは助かったのだ。


 確かにリヴァイアさんはカレンと握手してないんだけど、ちょっと可愛そうな気もする。友達(魔王ちゃん)の悪口言われて怒ってるいい子みたいだし。


 それよりもボクは、さっきから爆発の中でお酒を飲んでる酔っ払い族の動向が気になって仕方無い。よくこんな大騒ぎの中で動じずに飲んでいられますねあの人。


「だって空なんか飛ばれたらレイピア届かないからね! 無駄な事はしない、そんなのナッシングなんだよ。花火だと思えば美味しいお酒も飲めるってものなのサ! 風流だよね」


 真横で爆発する花火鑑賞なんか絶対お断りです。


『ドカーン!』

『ぎゃあああ』


 吹き飛ばされた鬼族の中に公爵家のご令嬢も見える。

 それを敬礼で見送った。さらば、鬼っ娘摩鬼!


 どうしよう、どうすればいい。



 大地より火炎来たれり――

 天より火炎来たれり――



 めんどくさくなったピンク髪族が禁断の呪文を唱え始めた! 逃げてー皆さん逃げてー!



『すんませんっしたー』


 五分後である。

 魔族の二人も鬼族の人たちも、現在ミーシアの前で正座中である。


 戦闘力の高いこの人たちは、自分たちに迫り来る最大の危機を肌で感じ取り即効で戦いをやめたのである。


 平和が訪れたのだ。


 次回 「依頼は解決? しなかった」


 みのりん、仕事を取られる

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