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その21 鬼族を探してたらコロッケ発見


 早速鬼族が出没するというビーチに行ってみる。何の事はない、昨日散々遊んだビーチだ。


 サクサクが帰って来なかったので、調査隊は彼女抜きの五名のメンバー+マーシャ、そして使い魔一匹。

 ボク、カレン、タンポポ、魔王ちゃんにミーシア・マーシャ姉妹とシロである。因みにシロ以外は全員水着着用だ。


『わん』


 俺にも水着を寄こせと言われても、あなたは野生の生き物じゃないですか。自然体が一番ですよ。


「うーん、昨日も気が付かなかったけど、鬼族なんていないねえ」


 カレンが額に手をかざして周囲を探している、ボクも同じく額に手をかざす。

 彼女が眩しくて目がくらみそうだからだ!


 ビーチは遊んでいる人でごった返していて、特に何者かが妨害したり暴れたりしている様子はなさそうだ。


「コロッケどうですかー? 美味しい出来立てコロッケがなんと一つ二ゴールド!」


 聞き覚えのある声と単語と匂いに誘われて、それらがする方向に自然と足が向いてしまった。


 目の前にあるのは海の家〝野郎どもの荒波屋withフェアリーポニー〟だ。

 何ですかこの、荒々しいんだかメルヘンだかわからない店名は。


 どうやらコロッケを販売しているようだ、鬼族を探して代わりにコロッケを発見した、これはもう正解でいいんじゃないだろうか。

 鬼よりコロッケの方が重要なのは、疑いを入れる余地がない事実なのだ。


 なにやらオジサンたちがその海の家に群がっている。大盛況のようだ。


「何だこの、お日様の下でくたっとなった猫みたいなの」

「どれ食ってみるか、コロッケとやらを一つ」


「うお! なんだこのカリカリサクサクで中がほくほくの食べ物は、うめー!」

「お、俺にも売ってくれ、五個だ」

「こっちもくれえええ」


「はーい、ありがとうございまーす。キス! ジャガイモ増産!」

「ぎゃあああああ! もう助けてくれ!」


 珍しさと美味しさでコロッケが飛ぶように売れて、大行列ができている。

 キスチスも大活躍をしているようでなによりだ、感激の余り叫んでいるみたいだし。


「あ、みんな来てくれたんだ。一個ずつあげるよ、食べて行って」


 ボクたちを見つけたアルクルミがピンクの可愛い店員服で現れた、おまけにコロッケまで奢ってくれた彼女が眩しすぎて正視できない。うおお神々しい! 女神様が出た!


 コロッケは比較的裕福な人たちが遊ぶリゾート地でも大評判じゃないですか。庶民もゴールド持ちも関係無い、コロッケがあれば人類はまだまだ戦えるのだ。

 でも確か冒険者の町では一個一ゴールドでしたよね。


「しー! お客さんには黙っててね、出張費で上乗せしたんだ。こんなに売れるんなら三ゴールドにしとけば良かった、失敗しちゃった」


 こっそり打ち明けてくれたアルクルミに商売人の魂を見た。そして女の子の耳打ちでボクの魂が口から半分出たのをタンポポに見られた。


「ねえアル、何で店名がお肉屋さんじゃないの?」


 そうです、カレンの言うとおりこの店名が気になるのです。私気になります。


「この海の家の元の名前は〝野郎どもの荒波屋〟なのよ。あまりにもむさくて可愛くなくてやる気なくなるから、ファンシーなのをくっ付けたんだ。コロッケ販売が〝フェアリーポニー〟ね、可愛い店名と店内に憧れてたからもう幸せすぎる~」


 胸のところで手を組んで、くねくね幸せそうな笑顔のアルクルミ。


 見れば店内もお花や人形で飾られて、女の子が好きそうな雰囲気になっているようだ。これは冒険者の町のチーズ屋さんを彷彿とさせるオシャレな店内だった。

 オジサンたちにはなかなか近づけないオーラが漂っている。


「お、俺の店のイメージが……〝野郎どもの荒波屋〟が……」


 海坊主みたいなオジサンがポカーンとしているが、この人が知り合いのオーナーさんだろうか。

 でもコロッケと一緒に海の家も大盛況みたいで、オジサンはアルクルミにグッジョブのサインを出した。


「おーいアル、追加でコロッケ揚がったぞー」


 奥から出てきたのはキスチスだ。

 ん、あれ? キスチスの声はするけど姿が見えない、出てきたのは可愛い店員服を着て、栗色のショートカットの髪にリボンを付けた可愛い女の子なのだ。


「ぎゃっ」


 女の子はボクたちを見つけて悲鳴をあげた。人を見て悲鳴をあげるなんて失礼な子ですね、こんな可愛い美少女たちを見て、何ですか一体。

 まあこの女の子が突然出てきて、心の中でボクも悲鳴をあげてましたけどね。負けませんよ。


 オレンジ色を主体としたミニスカートの可愛い店員服の少女は、顔を真っ赤にしてもじもじしている。

 その姿がまた可愛い、けど顔を見れないので胸に視線を移す。


 あれ……この胸の感じは十六歳。それはいいんだけど、なんだか知り合いの胸だぞこれは……


「カ、カレンにみのりん……」


 どうして名前を知ってるんですか、そうですかボクたちお肉強盗団はそんなに有名でしたか。でも女に子に見つめられるとキョドらざるを得ない。

 もじもじ娘にキョドり娘、勝敗の決着はつきそうに無いのだ。


「あはは……カレンに見つかっちまったか」

「アルのお友達? 私はカレン、よろしくね!」


「え?」

「え?」


 少女とカレンが二人揃ってポカーンとしたところで、少女に腕を絡めてきた人物がいる。


「あれー? キスチスちゃん、こんなに可愛い服着てどうしたのー? とてもとても似合ってる、キラリンドキムネだよ!」

「うわ、サクサク!」


 どこから現れたんですかサクサクは、え? キスチス!?


「キスなの? あはははは! キスだ! キスがスカート穿いてる!」

「うるさいなカレン、別にいいだろ」


 どうしたんですか、女装に目覚めましたか。知り合いの女装っ娘を一人紹介しましょうか。


「みのりんたちのお友達? 馬車隊にいた男の子だよね、この子女装っ娘なの? 中々いい感じに仕上げてきてるわね、でもまだ未完成って感じね」

「何事も完成に至るまでは、積み重ねが重要ってことですねミーシア」


 ミーシアが興味津々である、同種族の登場だから仕方無いのだろう。


「なんで女装扱いなんだよ! 私は最初から女だ!」


「私を騙したのね酷い」

「女なのに未完成扱いされた私の方が酷い目に遭ってないか?」


 キスチスがぷんになった。こうしてみると可愛いから困る。


「それにしてもこのミニスカートは何なんだよ、風がスカートの中に入って来てパンツがスースーするし、さっきからオッサンたちに見られて死にそうになるんだけど」


 そういいながらもじもじスカートを押さえるキスチス、萌えの真髄を見た気がする。こういうシーンがオジサンたちを奮い立たせるんだ。

 ボクはスカートを押さえてもじもじなんてやった事が無いけど……無いよね? キスチスの気持ちはよくわかる。


「わかります……」

「わかってくれるかみのりん」


 少女と少女の心が触れ合った瞬間だ。


「オジサンに見られるくらい何よ、減るもんじゃなし。我慢なさいよキス――」


『ズドン』


 キスチスに説教をしながらアルクルミが、自分のお尻を舐めるように見たオジサンを頭から砂浜に突き刺した音である。


「ごめんなさい、ごめんなさい」

「なんだこんな素晴らしいサービスがあるのか、よし俺も並ぶぞ」


「コロッケ販売以外のサービスは受け付けていません!」


 コロッケ屋さん『フェアリーポニー』の前に謎の行列が出現したのだ。

 行列は周りの他の海の家のお客さんまで吸収して、とんでもない事になっている。


 ほ、ほら、隣の海の家から溜息が聞こえてきたじゃないですか。


「ふう、隣が大繁盛でこっちには全然お客さんが来ないよ、爺ちゃん」

「可愛い孫よ、店を出す場所、爺ちゃん失敗しちゃったかな、てへ」


 隣の海の家で溜息をつくメガネをかけたお爺さんと、その孫の少女を発見。

『すみません――』と謝りかけて、ボクはその二人をじっと見つめる。


「ねえカレン……鬼族って見た目……どんな特徴?」

「頭に角が生えてるよ、ニョキニョキって」


 改めてくお爺さんと孫の少女のコンビを見つめる。おわかり頂けるだろうか、ボクの目がジト目になっているのを。

 二人の頭には二本の角。ニョキニョキっと突き出た二本の角


 こんな所で店出してましたよ、鬼族。


 次回 「鬼が出ちゃった」


 みのりん、金太郎伝説の真実を知る

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