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その9 ざまぁが早すぎなんです!


「ま、まあチーム名は色々拘りがあるもんだしな、うん、お肉強盗団か、いけてるな。うんうん、いけてるいけてる」


 嘘がヘタクソだなーこの人、目が泳いでるんですよ。お肉強盗団の何が悪いんですか、ミルフィーユやモンブランと食べ物同士仲良くできるじゃないですか。


『それは置いといて』とモン君の立ち直ったようにこちらを見る姿は、若干胸を張ったように見える。


「あんたたちは同行する貴族の話し相手みたいなもんだって聞いてる。もし戦闘にでもなったら、役に立たない娘っ子たちは後ろに下がって足手まといだけはやめてくれよ」

「そうそう、護衛任務は俺たち本物の冒険者にまかしとけ、お嬢ちゃんたち」


 なるほど、こちらをただの女の子集団だと思っているみたいですね。だから威張って胸を張ったというわけですか。

 お約束の噛ませ犬みたいなセリフ言ってますけど、後で腰を抜かしても知りませんよ。例えばボクのレベルはマイナス一ですからね、聞いたら腰抜かし必至です。


 まあ自分に対する侮辱の言葉を受けたって、ボクたちチームにはそれを真に受ける子なんていませんけどね。

 サクサクもカレンもけらけら笑ってるし、タンポポは興味なし、魔王ちゃんも特に何とも思ってない様子。


 ミーシアは……や、やばいジト目になってる。一番ジト目にしちゃいけない子がそのモードに入ってる! 謝って! ミーシアだけには謝って!

 モン君はそんなボクの心配も知らずに、こちらにやって来た。


「あんたの青い髪綺麗だな、顔も可愛いし。名前は何て言うんだ?」


 何を言っているんだこの人。


「みのりんです」

「武器も魔法のステッキみたいだし、何よりその白い魔獣。あんた魔獣を召還して使い魔にするテイマーだろ」


 本当に何を言っているんだこの人。ボクってそんな職業だったんですか、初めて知りましたよ。

 魔法のステッキじゃなくて木の棒ですから、そして白い魔獣じゃなくて野良犬ですから。その勘違い、ちょっと気持ちがいいのでそのままにしておきますけどね。


「おおーすげー。俺テイマーなんて初めて見たぜ」

「俺もだ」


 なんだか冒険者の男の人たちが集まってきたぞ。男の人にチヤホヤされるこの気持ち、舞い上がりそう。

 なに~~これ~~


「お手!」

「ちんちん!」

「伏せ!」


 シロは全て完璧にこなした。向こうで『クロ』がビクンビクンとしてるのは見なかった事にしよう。脊髄反射は耐えてくださいタンポポ、セーラー服の少女が実行すると色々と不味いですからね。


「すげーなこの魔獣、カンペキに仕上がってるじゃないか」


 どこまでつっこんでいいのか、ちょっとわからないので混乱中なんですけど。ホントに魔獣だと思ってるんですよね?


「ま、テイマーってあんまり役に立たないからな、戦いになったらお嬢ちゃんも後方にいろよ」

「役立たずで誰もやりたがらない職業だもんな、いやー珍しいもん見たわ」


 持ち上げられて落とされた。みんな可愛そうな子を見る目で見てる。

 好きな女子にいじわるする男子ですかこの人たち。


 うう、絶対にざまぁしてやるんだからね!


「あ、カレンだ。みのりんもいる」

「ホントだ」


 乗合馬車からカレンが声を掛けられた、声の主はアルクルミとキスチスだ。

 まさかボクの知らないところで、この二人も同行する事になっていたとは。


「あれー? アルにキスだ。二人ともどうしたの?」

「サクサクに誘われたのよ、水着回要員だって。ねえ、水着回って何?」


 なんて事してくれるんですかサクサクは、恐怖の水着が増えたじゃないですか!

 そのサクサクを見るとこちらに親指を立てている、『いい仕事したでしょ私』じゃないですよ!


「よく許しが出たね、温泉、お祭りと続いて三連発だし、そろそろアルが忙しくなる頃だから私はさすがに誘うの躊躇したのに」

「ついでにお父さんの昔の飲み仲間の人が経営している、海の家の手伝いもするのよ。毎年行ってるからね、私がいつも忙しい理由はこれなんだ」


「そういえばそうだった、一回お手伝いに私も行った事あったよね」

「今回はね、ついでにコロッケを売りまくろうと思ってるのよ。だからちゃんとコロッケ職人さんも連れて来た」


 アルクルミはそう言って笑顔でキスチスの肩を掴んでいる。キスチスはちょっと複雑な顔だ。


「ジャガイモ潰しの達人だね!」

「誰が職人だよ誰が、まあリゾート地に連れてってもらえるんだから文句は言わないけどな。この複雑な心境を誰かわかってくれるだろうか」


「カレンたちが護衛してくれるのなら安心だね、みのりーん」


 アルクルミがボクに手を振ってきた、真っ赤になりながら手を振り返す。

 彼女とキスチスの水着まで拝む事になるのか、今回ボクは生きて帰れるのだろうか。


「こんな安心な旅は無いよね! だってみのりんは武闘大会の覇者だもん!」


 アルクルミの声に『火炎のミルフィーユ』のメンバーたちが一斉に固まる。皆が一斉にボクに視線を突き刺した。

  男の人たちの食い入るような視線に、ボクのヒットポイントが一つ減る。


「武闘大会の優勝者……だと」

「生意気な事言ってすんませんっした」


 ちょっと待ってください、ざまぁが早すぎなんですよ。

 もうちょっと溜め込んでからふふんしたかったんですけど! でもまあ、ふふん!


「ぶ、舞踏大会の間違いかも知れん。きっとそうだ」

「あはは、なーんだ驚かせやがって」

「そりゃそうか」

「わはははは」


 聞き間違いの勘違いにしたいんですね、まあいいでしょう。ボクは舞踏大会も優勝しているので間違いではないのです。


「おいお前ら、そんな乗合馬車で町娘とくっちゃべってる暇があったら、本来の仕事の貴族のご令嬢に挨拶くらいしておいた方がいいんじゃないか」

「でもガサツな冒険者の小娘が、貴族様にあまり変な口の聞き方をすると酷い目に遭うかも知れないけどな。お手打ちされないようにな!」


 どうやら冒険者たちはマウントのアプローチを変えたようだ。あんたたちも十分ガサツでしょうがと、つっこみの一つも入れたいところだ。

 で、貴族のご令嬢が乗る馬車ってあれかな? と一番綺麗な馬車に目をやるとそこからミーシアが声を掛けられた。


「お姉さま! お姉さまじゃありませんか。嬉しい、今回はお姉さまとご一緒できるなんて」

「マーシャ、何やってるのよあなたは。まさか護衛の対象が自分の妹だとは思わなかったわね」


『火炎のミルフィーユ』のメンバーたちが一斉に固まる。

 笑った時の大口を開けたまま固まってる、その中にカナブンが一匹飛び込んでるよ。


「な……貴族のご令嬢……だと」

「どうかお手打ちだけはご勘弁を、全部リーダーの責任ですだ」

「お、おまえら!」


 変わり身が早いなあこの人たち、リーダーを犠牲にして生き延びる戦略か、さすがしたたかに生きている冒険者だ。

 ミーシアがふふんという顔で冒険者たちを眺めている。とりあえずジト目が治って良かった良かった。


 とにかくざまぁが早すぎるけど、もういっその事ここで魔王ちゃんの正体をバラしてふふんを完璧な状態に仕上げたい所だ。最終兵器、核攻撃みたいなものである。


 でもさすがにそれはできない。

 ドヤ顔でふふんしている、爆弾娘(ミーシア)のスイッチを入れるようなものだからだ。


 どのみちさっきから魔王ちゃんの姿が見えないのだ。探すと一番先頭の馬車でオジサンから、タンポポと二人で何か貰っている様子。ぐぬぬ、お饅頭ではあるまいな。抜け駆けは許しませんよ、きいい。


「因みに私は武闘大会の準優勝者ですよ~」


 呆気に取られる モン君たち一同。

 冒険者たちに手を振るマーシャが変わりに仕上げてくれたのである。


 そしていよいよ馬車隊の出発だ!


 次回「馬車隊が凶悪モンスターに襲われた!」


 みのりん、モンスターを見てアレを思い出す

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