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その20 次々現れる刺客を撃破せよ!


 広い玄関には受付のオジサンが座っていた。


「あの、こんにちは、ミーシアを取り戻しに来た者ですけど。あ、アポイントはありません」


「ふふ、よくここまで来たな。あのバルバロスを突破してここまで来たのは褒めてやろう。だがお前たちの進撃もここでストップだ」


 オジサンはゆっくりと椅子から立ち上がった。よく見たら上半身裸で筋肉モリモリじゃないか。


 よくもまあこんな物体を受付と間違えたもんだ、カレンを置いてきて涙で前が見えなかったからか。


「我が名はイストーラン! 隣町のかつての武闘大会十連覇にして、フェンベルク家四天王が一人! 貴様らをこの筋肉で粉々に砕いてやろうぞ!」


「タンポポです」

『コケー』


「もう名乗りませんからね、またボクに恥をかかそうとしたってそうはいきません。恐ろしい事を考えますね、さすが悪役と言いたい所ですが、あなたの悪事はここまでです」


「なんか、納得のいかない事を言われてる気がするんだが……気のせいかな」


「マ、マーシャです。い、言えた! 今度は挨拶できた!」


 危ないので、とりあえずこのドジっ娘は後ろに下がらせておこうと思う。

 マンクがボクを庇うように前に立って、筋肉オジサンと対峙した。お陰でボクは筋肉越しに筋肉を見る事になった。


「下がってろみのりんちゃん、こいつは只者じゃねえ、バケモノだ! 俺が食い止めている間に、みのりんちゃんたちは先に進んでくれ!」

『コケー』


「じゃマンク、後はよろしく~」


 ボクたちはスーっと横の階段を登って二階へと上がって行く。


「ちょっとみのりんちゃん! さっきのカレンの時と随分違わないか? 俺の屍を越えていけーみたいなの、俺もやりたいんだけど!」

『コケー』


 マンクが四天王の筋肉と組み合いながら下で何か言ってるみたいだけど、ボクたちは先を急ぐのだ、あなたの死は無駄にしませんよ。

 ではダ・スヴィダーニァ~。


 二階の廊下を走るボクたちは、遂にボク、タンポポ、マーシャの三人になってしまった。


 四天王という言うからにはやっぱり四人いるんだろうし、残り二人をこの三人で突破するのは難しそう。

 いよいよボクの木の棒がその力を発揮する時が来たのか。


「ふふふふふ!」


 遂にボクの黒竜めっさつ……何でしたっけ? 木の棒に付けた名前忘れちゃいました。


 新しいのを考えないといけないですね、黒竜暗黒ダークネスうーんと……何も浮かばない。

 ボクの木の棒のかっこ良さは、言葉でなんか表現できないのだ、ふふふふ。


「みのりん笑ってる場合じゃないかな、また現れたんだよ」


 タンポポの声に妄想から帰って来ると、正面の廊下に立ち塞がる人物がいた。


「ここまで到達するとは素晴らしい! だけどあなた方はここで終わりですね、私はフェンベルク家四天王が一人、立ち塞がる筋肉ことモスカァーです!」


 遂にボクたちはモスクワ正面に到達したのだ。あと一歩、ここを突破できれば四人目の四天王も見えてくるはず。多分名前はスータリンだかスターロンとかなんじゃないかな。


「いえ、モスクワではなくてモスカァーです。何ごっこをしているのですかあなた方は」


 ドヤ顔で立つボクの前に立ち塞がるのは、肉のカタマリといった感じの巨漢の男の人である。文字通り、廊下は肉で塞がっていたのだ。


 さっき立ち塞がる筋肉と自己紹介してたけど、これ筋肉じゃないですよね、贅肉ですよね? 表現はキチンとしてもらわないと困りますよ。


「なんだか凹む事を言われているような気がするけど、気のせいですかね」


 それにしてもどうやって突破すればいいんだこれ。邪魔だから、600ミリ砲で吹き飛ばしたい。


「遂に私の出番なんだもん、ふふふ、みのりん私にまかせるかも」


 不敵な笑みを浮かべてタンポポが前に出た。

 モンスターじゃないから掌握できませんけど、どうするんです?


「ほうほう、あなたがこの私の相手をするというのですか、身の程知らずですね」

「あ!」


 突然タンポポが窓の外を指差した。

 モスカァーとマーシャが思わずそっちを見た隙に、タンポポが廊下の反対側の壁にスーっと消えた。


「何も無いじゃないですか、おや? さっきの女の子はどこに行きました。さては逃げたのですね、まあそれが懸命でしょう」


「どうしようみのりんさん、私たちだけになってしまったけど」


 マーシャが不安そうにボクの顔を見て視線を外した時だ、モスカァーの後ろの壁からスーっとタンポポが現れたのである。


 壁抜けショートカットですか、凄い! さすがオバケだ。ボクたちの目の前にまたもや颯爽と勇者が現れたのだ。


 モスカァーの後ろはがら空きなのだ、タンポポはオバケなので気配を消すことができる、まさか後ろにいるとは思うまい。

 さあやっちゃってタンポポ!


 タンポポは両手を重ねて、二つの人差し指に力を込めている。

 ちょっと待ってください、よりにもよってその攻撃を選択する気ですか! ボクは慌ててマーシャの目を手で隠した。


「え? 何? 夜?」


 女の子に触るのは危険だけど、今から起こる惨劇は、貴族の少女には耐えられないだろうからだ。


 十分に溜めてフル充填になったのだろうか。


「死ね!」


 恐ろしい掛け声とともに、タンポポが容赦の無い攻撃を開始した! 必殺の一撃である。


 余り聞きたくない音がしてモスカァーが白目を剥き、そのまま後ろに倒れた。

 巨漢は後ろのオバケを巻き込んで失神。潰されたタンポポは親指をボクたちに向けて立てたままでノビていた。


 勇者相打ち!


 先に行けという事でしょうけど、この状況で感動は生まれませんでしたよ。

 後ろに現れたのなら、後頭部をぶん殴るとかで良かったんじゃないですかね。後でその手はちゃんと消毒してくださいよ。


 ボクとマーシャは文字通り、巨漢とタンポポを乗り越えてその先に進んだのである。

 あ、マーシャ、その女子高生の顔は踏まないであげてください、一応女の子の顔ですから。


「な、何? どうやって倒したの? いったい何が起きたの?」


 追求してはいけません、貴族社会では絶対に起こりえない禁忌が行われたのですから。


 この世界でもあれをできるのは、恐らくタンポポだけじゃないですかね。

 今の出来事は忘れましょう、何も無かった、そう何も無かったのです。


 恐ろしい戦いだった……


 しかし、何も無かった事にできない案件が一つだけあった。

 そう、四天王はまだ一人残っているのだ。


 残るはボクとマーシャ、二人だけである。


 次回 「決戦! それは屋敷が吹き飛ぶ戦い」


 みのりん、最後の四天王と対峙する

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