その6 初めてパーティを組んだ!
何か聞こえてくる……
これは日本の歌……
なんだ……
今まで転生した夢を見ていたのか。
「うーん」
目を開けると、目の前にボクを覗き込むカレンの顔。
彼女はボクの頭を優しく撫でながら……膝枕を……膝枕だと!?
ガバっと起きたボクはガタガタと腰が砕けそうになりながら這って退避、ヒットポイントがとても危ない状態だ。危うくトドメを刺されるところだった。
まあ〝カレンの膝の上で永眠〟もまた悪くないんだけど、彼女からしたらトラウマになりそうである。
カレンはボクの様子を見てまた慌てたようだ。
「ねえ、さっきからどうしたのみのりん!」
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「あーそういう事かー、みのりんが不治の病の発作を起こしたのかと思って、びっくりしちゃった」
橋の上で息を吹き返したボクから事情を聞くと、カレンはあははと笑う。
ある意味で不治の病ですけどね、ボクもあははと苦笑。
「大丈夫だよ、みのりんは女の子だよ。そりゃあ人間の私とはちょっと違うかもだけど」
モンクが女の子には触れないけど、ボクには触れるんだよ……?
「みのりんは、精神的な制約で女の子に触れない宗教や職業、種族でも触れる女の子だもんね。でもねー、その人達は禁忌によって力を得ると思い込んでるだけだから、実は普通の女の子にも触れるんだよね」
え、どゆこと。
「ただ、やたらと思い込みが強すぎて、触ると本当にレベルやエナジードレインが起きてしまうんだよ、実際には相手に吸い取られてもいないのにねえ。その思い込みの強さが、彼らの強さに正比例してるから仕方無いんだろうけど、迷惑でやっかいな話だよね」
ホント、迷惑でやっかいな連中だな、近寄るのはよそう。
因みに男の娘の反対もいるとの事だ、これまたレア種族らしくて女の息子と呼ばれてるそうだ。
そっちの方はおっぱいを平らにするのに四苦八苦しているらしい。
ずるい、ボクにも一個くらい分けて欲しいものだ。
「ボクはもう育つ希望が完全に絶たれたと言うのに……」
そんな誰かに聞かせるともないボクの呟きに、カレンが反応する。
「そうだねえ、男の娘だもんね。でもそのくらいの身長でも可愛いよ。私よりちょっと低いだけだし、女の子はそんなもんだよ」
「……身長……話……ではな……え? ボク背、伸びないの?」
びっくりしすぎて普段なら恥ずかしくて見れないカレンの顔を、真っ直ぐ見てしまった。
「伸びるわけないじゃん、ずっとそのままの姿で老化もしないよ? だって男の娘だもんみのりん」
なんなんですか、男の娘で何でも片付けられてしまうそのヘンテコな種族は――
「ところでみのりんは、今日はお散歩?」
カレンの問いにボクの使命を思い出した、おつかいの途中だったのだ。
「送金業務? この先に住んでる人? わたしもこの辺だから連れてってあげるよ、なんて人?」
「えと……」
受付のお姉さんが渡してくれた地図が書かれたメモを広げ、覚えられなかったから書いてもらった名前を読み上げる。
「マウ・ド・レン・フィンク・カレンティア。知ってる……人?」
「知ってる知ってる、それ私だよ」
ああ、よかった知ってる人なんだ、え?
「ありがとうみのりん、そっかそっか、すっかり忘れていたよ。なんでだろ」
それはボクを迎えにいった報酬で、お肉屋さんに駆け込んだ後で、カレンがコロっと貰うのを忘れていたものらしい。
ボクからお金を受け取ったカレンは不思議そうだけど、それだけ彼女にとってお肉屋さんが重要だったという事なんだね。
「そうだ、お肉といえばお肉だ、お肉お肉。ねえみのりん、一緒にお肉を仕入れに行かない?」
お金をポーチにしまうと、妙な事を言い出したカレン。
「……仕入れ?」
「うん、男の娘のみのりんに頼みたい事があるんだ」
ニシシーという笑みに頷いてしまったボクは、お肉の仕入れとやらを手伝う事になった。
不穏なのは、カレンがすぐ近くにある自分の家に入って出てきた時には、胸に簡単な赤い鎧を付け、腰にロングソードを下げていたという点。
やってきたのは町の門の前。
「外へ出る……の?」
「そうだよ! 町の外はお肉の可能性に満ち溢れた世界だよ! モンちゃん倒してお肉の仕入れ!」
や、やっぱりか。
まあ、状況証拠が揃いすぎて、そうとしか考えられなかったけどね。
「ここから先はモンちゃんに襲われても仕方の無い場所、そこで私達はパーティを組みましょう」
「パーティ……?」
そういえば受付のお姉さんもLv上げに行くのなら一人ではなく、パーティを組めって言ってた。
「うんそう。パーティメンバーには、倒したモンちゃんの経験値が均等に分けられるの、だから私が倒せばみのりんにも半分入るよ」
昨日Lvアップには百体必要と聞いて、弱いボクには無理だと絶望してたけど、強い人に倒してもらうという方法があるんだ!
ちょっと希望が見えてきたよ、二人だと二百体になるけど、それでもボクが百体倒す絶望感より全然希望だよ!
アリがライオンに戦いを挑もうとしたら、象の集団が加勢に来たくらいの心強さだよ。
象に踏まれなければ、だけど。
ただ……
カレンには何のメリットも無いよね。
「さーパーティの儀式をやろう」
儀式? 手を繋いだりとかハグしたりとか、ボクが死ぬような恐ろしい物じゃなければいいんだけど。
「みのりん、私の前に立って。私の言葉に続いてね、名前の所は変えてね」
門の中で互いに向き合う二人。
通行人が『お、パーティセレモニーか』と見学しているので恥ずかしい、けどしっかり声に出そう。カレンはボクの顔を見て、ボクはカレンの胸を見て。
「私達は、お互いを信頼し助け合う仲間となります」
「ボクた……信頼……仲間……す」
「私カレンは、みのりんの大切なお友達です」
「みのりん……カレン……大切なお友だひ……でひゅ」
なにこれ――
青い光が二人を包み込む。お、ここはセレモニーっぽいぞ。
終わると周りから拍手が起こった、気がついたらギャラリーに囲まれてる。
これは恥ずかしすぎる。
「このまま門を越えてね、町の中に入っちゃダメだよ、町に帰ると解除されるから」
パーティを組む時は毎回これを繰り返すのだという。
青い光が人気で、娯楽が少ないから見物人は結構いるらしい。
「私たちは可愛いもんだけど、これをオッサン同士でもやらなくちゃいけないとか、ちょっとした拷問だよね~」
あはははと笑って先に進むカレンを、オジサン達に合掌しながら追った。
その時に目の端に映った光景。
同じくパーティセレモニーをやっている冒険者のコンビだ。オジサン二人組が顔を赤くして青い光に包まれていった。
見物人から拍手とヒューヒューの声。
あの、ヒューヒューはさすがにやめてあげて下さい。
ほら、走って逃げて行っちゃったじゃないですか。
次回 「ボク達パーティの初戦果!」
みのりん、ついにモンスターを倒す(カ●ンが)




