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その7 ダンス衣装でカーニバル?


 朝である。

 カーニバルの町二日目の朝である。


 昨夜はボクが一番寝つきが良かっただろう、なにせ気絶したのだから。


 この旅のメンバーでカレンを除くと、一番女の子しているのが赤毛のポニーテールが可愛い、お肉屋さんの娘のアルクルミなのだ。


 その子と一緒のベッドで寝る……どうやったら気絶せずにいられるのか。どんなに科学が発達しても、無理なものは無理なのだ。

 アルクルミのいい匂いと、柔らかい胸に抱き締められた瞬間にカクンである。


 気がついたら朝だ、ボクは生き延びた。瞬時にカクンと気絶したのが功を奏したのだ。

 ああ、生きてるって本当にすばらしい。


 ボクはこの旅の最大の試練を乗り越えたのだ!


 今夜はどうしよう……


 不安になっていてもしょうがない、とにかく起きよう。

 ボクに巻きついていたアルクルミの腕を外して起き上がろうとする。


「クマ太郎……むにゃむにゃ」


 クマ太郎って誰ですか。

 寝ぼけているアルクルミからなんとか脱出すると、『みのりん助けて……』と聞こえたので声がした方を見る。


 タンポポだった。

 彼女はカレンにまるで炊き枕のように抱きつかれて硬直していたのだ。


「あなたもクマ太郎になってましたか。今回はちゃんとベッドの上で夜を明かしたんですね」


「寝る早々にこいつに羽交い絞めにされて、全く身動きできなかったんだもん、めちゃくちゃ暇で泣きそうになった」


 羨ましいというかなんというか、ボクもこの前までこの状態だったんだよな、と考えるとヒットポイントが一個ダウンしてしまった。


 本体のオジサンが寝ている為に、オバケタンポポは寝る事がないのだ、さぞ暇を持て余していた事だろう。


「おはようみんな」

「おはよう」


 カレンとアルクルミももぞもぞと起きだした、タンポポがサっとカレンからすり抜けて部屋の隅に退避。

 よっぽど暇だったのだろう、右手で折り紙を折りながら、左手でペンをくるくる回し始めた。


「地味なストレス解消法ですね」

「ホントはうわーって叫びながら、走り回りたい。それかみのりんのおでこに絵を」


 我慢ですよタンポポ、がんばれ。

 サクサクはまだ起きない、相変わらずベッドを一人で占領して大の字になって寝ている……おや? という事は。


「あれ? キスは? どこ行ったの?」


 アルクルミが、寝ているサクサクのベッドにいない幼馴染を探していると、二つのベッドの隙間から『シクシクシク』と声がする。


「もう、なんでそんなとこで寝てるのよキス。寝相悪いなあ」

「私の寝相じゃない、サクサクに落とされたんだ。身動き取れないんだよ、出してくれ」


「もうしょうがないなあ」


 アルクルミがキスチスを引っ張り出した、その時だ。


「おはよう諸君! さあカーニバルだ!」


 くっそでかい声で飛び起きたサクサクの挨拶で全員が飛び上がり、カレンとアルクルミはベッドから落ちた。


 びっくりしたタンポポは思わず隣の部屋に顔だけ壁をすり抜け、ボクは廊下に転がってひっくリ返り、ちょうど歩いていたオジサンに飴を貰った。

 この町のオジサンも何故か幸せになって、ボクに食べ物をくれるようだ。


 隣を覗いてしまったタンポポによると、ちょうど起きたオジサンと目が合い、オジサンはまた寝たそうだ。

 それって気絶したんじゃないですかね。


 そしてサクサクは、一つのとんでもない事を言い出したのである。


「せっかくのカーニバルだし、みんなでチームを組んでパレードに参加しよう!」


 その言葉に全員が首を斜めに傾げる。


「はい?」



「だからパレードだって、踊りながら市内を練り歩くんだよ! すっごい楽しそうじゃん!」


 突然カーニバルに参加すると言い出したサクサクに、皆及び腰だ。

 ボクはこうなるんじゃないかなーっとは予想はしてたんだけど。


「わ、私とみのりんとタンポポちゃんは、ちょっと用事があるから、キスとアルお願い」

「「ええー!」」


 アルクルミとキスチスの幼馴染ハーモニーだった。

 キスチスなんて置いていかないでと、仔犬のような目をしている。


「えーみんなで踊ろうよう、午前中だけだし、ダメ?」


 サクサクが少し寂しそうに見える。


 これはもう仕方無い、皆サクサクに借りがあるのだから参加するしかないかな。大事な取って置きのお酒使っちゃったの悪かったし。


「そうだね午前中だけならいいよ、みのりんが参加するって言うんなら私たちも参加する」


 カレンとタンポポも了承してくれた。


「でも櫻子ちゃん、そういうのは事前に登録とかしなくちゃいけないんじゃないかな?」


「タンポポちゃんはいい所に気がついた! もちろんこのサクサクちゃんに抜かりナッシング! 登録は昨日の晩にしておいたからね。全員分の衣装も借りてきてあるんだよ! もうバッチリバッチグー!」


 いつの間に! 仕事ができすぎるのも困り者ですよ。

 そうか、昨日サクサクはお酒が無いから酔っ払ってなかったんだ。これは盲点だった、この人は酔ってた方が世の中平和な事もあるのだ。


「じゃじゃーん! これが衣装だよ!」


 そう言ってサクサクが皆一人一人に渡した衣装、なんじゃこりゃである。


「ちょっとサクサク、これ過激すぎない? さすがに恥ずかしすぎるんだけど」

「うわー、お腹も背中も丸見えだね」


「大丈夫大丈夫、アルクルミちゃんもカレンちゃんも綺麗なんだから似合うって、みのりんもね」


 ううーボクのもかなりやばい、服屋さんで買わされた紐キャミソールとマイクロミニスカートセットと何も変わらないのだ。

 これを着て町中を踊れと? サクサクはボクを亡き者にしようとしているのか。


「おいこらサクサク! 私のこれなんだ! ビキニパンツしか無いぞ」

「あーしまった、男の子用の衣装を借りてきちゃった、失敗失敗」


「わざとだろ! あーやめやめ、私は踊るのやめ。今日は寝る」


 キスチスがパンツをくるくる回しながらベッドに寝そべった。


「観念しなさいよキス、男の子のふりしてトップレスで踊っちゃおうよ」

「さすがにバレるわ!」


 そりゃそうだ、よく男の子と間違われたってキスチスは十六歳の女の子なのだ。トップレスで男の子だと言い張るのは、さすがに無理がありすぎだろう。

 まずい、想像しただけで頭がくらくらする。


「でもどうしよう、衣装これしかないし、トップレスでもバレなさそうなのって……」


 おいこら、どうして皆でボクを見た後に顔を伏せましたか、失礼ですよ、とても失礼です。


 ボクは着やせするタイプですからね、脱いだら凄いんですからね、ボクの想像の中では。


 ボクはほっぺを膨らませてプンとなったのである。


 次回 「ダンスクイーンが誕生したらしい」


 みのりん、ダッシュで逃亡、三秒で逮捕

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