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その6 ネコモンスターを助けた


 魔王ちゃんは、不気味な呪い人形を売っているお店の前に立った。


 誰かを呪い殺すアイテムでも買おうというのか。

 まさか、ボクの胸を嫉妬してボクを暗殺しようってんじゃないだろな、恐ろしい事だ。


「おい、おもちゃ屋のオヤジ、またデュラハン人形の首が無くなってしもうたわ、替え首をくれ。支払いはツケで」


 奥から店主が姿を現す、緑の髪の毛をした魔族のオジサンである。


「おお、魔王様いらっしゃいませ、すりすり」


 店主のオジサンは冷ややかな目で見るカレンに気が付き、さっと魔王ちゃんの足から離れた。


「ど、どれがいいですか、この目玉が飛び出たヤツは新作ですぞ。あと、通常の五倍の値段ですが、胴体から一定以上の距離を離れたら、爆発して居場所を知らせてくれるのもありますぞ」


「ほうほう、それは便利じゃな。どこに行ったかすぐわかれば、五倍の価格でも買い替えが無くなってお得かもな、それを貰おうか」

「さすが魔王様お目が高い、まいどありー」


「ちょっと待ってくださいそこのオジサン。爆発したら居場所がわかっても結局買い替えじゃないですか、そんな商売ボクが認めませんよ」


 というか、魔王ちゃんはおもちゃ屋と言いましたか。


「そうじゃ、ここは子供たちに夢を与えるおもちゃ屋じゃな、魔人人形は子供たちに大人気でわらわもここで買っておる」


「悪魔の呪いグッズ屋かと思ってました……」

「わ、私もだよ」


 カレンも引き気味である。

 どうみても不気味な人形だらけで、ウッ、全く可愛くない。


「これ最近出た新製品のマンドラゴラ人形じゃな、こうやって地面に埋めて引き抜くと」


『ギャー』


「どうじゃみのりん、これ楽しいか」


 全然楽しくないわ!


「うむ、わらわもそう思う。おまけに全く可愛くない。おもちゃ屋のオヤジはもうちっと可愛い人形を作れ、猫とかな」

「猫ですか? これとか?」


「化け猫人形でもないのじゃ、わらわも買ったがそれも違う。何で目を尖らせて牙だらけの真っ赤な口で『キシャー』となっとるんじゃ。夜中に廊下にそれが落ちとった時の事を想像してみろ、びっくりしてお漏らししそうになるからな。あ、勘違いするなよ? しとらんからな?」


「可愛いと思うんですけどねえ、魔王様の感覚がずれているのではないですか?」


 いや、ずれてるのはオジサンです。

 キルギルスなんて人形のせいで山を吹き飛ばしてるんですよ。


 結局魔王ちゃんは普通のデュラハン人形の首(それでも青くて不気味なやつ)を買って、おもちゃ屋さんを後にしたのだった。


「因みにおもちゃ屋の隣がゲーム屋じゃ、ここも子供たちに大人気でな」


 ああ、さっき持ってると言ってたコインのお店ですね。

 カレンも興味深そうだ。


「へー魔族の里の子供たちの歓楽街なんだね。魔族の里ではみんな何して遊んでるの?」

「最近流行っとるのはスライム練りじゃな、青や赤や黄色なんかを練り合わせて色んなスライムを作るんじゃ」


「スライム危なくない? でも綺麗なスライムが作れそう!」

「主にゴジュメ色じゃな」


 何色なんですかそれは。



「寄り道させてすまんな、わらわの家は町の奥じゃ、もうすぐ着く」


 その時だ、魔王ちゃんが指差した方角の木と木の間から何かが飛び出してきたのだ。


『シャー!』


 小さなモンスターのネコがボクの胸に飛び込んできた。でも喜んでる感じではなく、怒ってるというか何かに怯えている?


 そのネコを追って現れたモンスターがもう一体。

 そいつは真っ黒なクマくらいある……というかクマだ、これはクマ。


 頭にドリルが付いてるからクマのモンスターか。

 今までモンスターの大きさの例えに『クマくらいある』と比喩してきたけど、初めての当人登場で少し感動すら覚える。


 クマモンスターは魔王ちゃんとボクを見比べて、どちらに飛びかかろうか考えた末にボクに飛び掛ってきたのだ。


 モンスターを惹きつけるスキル < モンスターを惹きつけるスキル + 猫。

 猫一匹分飛び掛る要素が大きかったのだろう。


「こらやめんかキサマ! 興奮するな!」


 魔王ちゃんがクマモンスターの前に飛び出て止めようとしたが、クマの突撃で吹っ飛び、近くの木に激突してその木をへし折った。


『グアアアアア』


 モンスターが青くなったボクに飛び掛る寸前、カレンが飛び出しスキルが発動!


「スパイクトルネード!」


 風の剣がモンスターを縦に真っ二つにしたのだ。


「クマのお肉ってケモノ臭くてイマイチなんだよね、えーとどこの部位が良かったんだっけ。あ、魔族の里にお肉屋さんある? 売れるよね?」


 木と草の間から這い出てきた魔王ちゃんが、町の中のとあるお店を指差すと。


「ちょっと待っててねお肉売ってくるから」


 チャッチャとモンスターをお肉に解体したカレンは、それを袋に入れてお店の中に消えて行った。


 とにかくモンスターを倒したらお肉。

 カレンからしたら空気を吸うくらい普通の事に違いない。



「全部で三十魔ゴールドだったよ、一人十魔ゴールドね、はい魔王ちゃんとみのりんの分だよ、で、魔ゴールドって何?」


 初めて見る硬貨だ、ボクも何なのかよくわからない。


「魔族の里の通貨じゃな。昔は物々交換だったのじゃがわらわが作らせた、エッヘン。まあ、通貨の管理はわらわにはサッパリじゃから幹部にまかせておるがな」


「へー珍しいから使わずに記念に取って置こうかな、それにしてもみのりん、そのネコ随分みのりんに懐いちゃったね」


 そうなのだ、さっきからボクに飛びついてきたネコモンスターにまとわりつかれているのだ。

 カレンがお肉屋さんに戦利品を売りに行っている間に、足を怪我していたので手当てをしてあげたらこうなった。


「ミーミー」


 くうう、かわいい、これどうしよう。怪我してるしこのままじゃ可哀想、でも連れて帰っちゃまずいよね。


「うーんダメだよみのりん、ギルド食堂では動物は飼えないし、そもそも町にモンちゃんは入れられない」

「デスヨネー……じゃ魔王ちゃんが飼って」


「わらわもダメじゃ、羊が許してくれん。銀竜はわらわが拾ったんじゃがその時も許してくれんでな。三日三晩泣いて喚いて、やっと自分で世話をするという条件で許してもらったのじゃ」


 へー、今は胴体だけで十メートルはある銀竜でも昔はちっちゃかったんだ、小さいネコみたいな竜を拾ってくる魔王ちゃんを想像したら微笑ましくなった。


「銀竜のヤツは昔からあの大きさじゃぞ?」


 あんなものよく拾って帰ろうと思いましたね……


 さて、このネコどうしようか。


「魔王様」


 その時真後ろから声をかけられて、ボクと魔王ちゃんは『ヒエエエエ』とのけぞったのだった。


「な、なんじゃ羊、驚かすな!」

「メエエではございません、執事でございます魔王様」


「魔王ちゃんじゃ! で、どうした羊」


 魔王様という呼び方も羊という呼び方も、互いに一切直す気がなさそうな二人。


「一大事です魔王様、復活の山にまたもや侵入者です。いかがいたしましょう」


 次回 「侵入した冒険者とネコの恩返し」


 みのりん、ネコに嫉妬する

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