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その3 初めてお邪魔したカレンの家


 ボクと魔王ちゃんは、カレンの家に遊びに行く事になった


 カレンの家に着くまでに、川だ橋だ家だと魔王ちゃんの興味が分散しまくって、通常の三倍の時間がかかってしまったのだけど。


 二人で橋の上を歩いている時だ、そこは洗濯場を見下ろせる橋でカレンの家も近い場所である。

 いい天気だ、太陽の光がキラキラと川の水面を照らしている。


「あれは何じゃ?」

「川ですけど……」


「川ぐらいわかっとるわ、馬鹿にしてるのか! あそこで何をしているのだ」


 洗濯ですね、いくらなんでも魔族だって洗濯くらいするでしょう。しないんですか? もしかして臭いんですか?


「魔族はいつもにこにこ清潔さんじゃ! 嗅いでみろ、石鹸の良い香りがするじゃろ。そうじゃなくて、あの男は何をしとるのじゃと聞いとるのだが……」


 魔王ちゃんに言われて洗濯場を見たら、スカートの中を覗こうとしたオジサンが女の子に見つかり、土下座をしていた。


「さ、行きますよ魔王ちゃん。カレンの家はすぐそこです」


 魔王ちゃんにあまり刺激的なシーンは見せてはいけない、ボクは彼女の手を引いて歩き出した。

 一生懸命だったので、女の子の手の温もりで死なずにすんだ。



「カーレーンー! あーそーぼー!」


 くそ! ボクが言いたかったのに魔王ちゃんに先を越された!


 ボクたち二人が立っているのはカレンの家の前だ。

 あちこちを見たい魔王ちゃんを誘導して、なんとか辿り着けたのである。途中で野宿も考えたほどだ。


「はーい」


 程なくして涼しい声とともに玄関が開けられて、カレンが姿を見せた。

 その瞬間にパッと花が咲いた気分になる。


「あれ、みのりん、魔王ちゃんも来てたんだね。二人ともいらっしゃい」

「遊びに来たのじゃ。ところでカレン、そこの壁はどうしたのじゃ?」


 魔王ちゃんが指を差したカレンの家の外壁を見ると、壁に開いた大穴を修理したらしい跡があった。


「あはは、これね、この前ついうっかり壁に大穴開けちゃったんだよ」


 なにをどうすれば女の子のついうっかりで、壁に大穴が開くんだろうか。

 料理をうっかり爆発させたのだろうか、よくある事だよね。


「ああ、わらわもよくあるわ、モンスターに力の限り体当たりをされて吹っ飛んで、何度も壁に大穴を開けておるからのう。わかるわかる」


 全然わかりません、魔王ちゃんとカレンを一緒にしないで欲しいのですが、カレンは普通の女の子なんですからね。


「壁に虫が這ってたから、とっさにスキル使ってぶっ飛ばしちゃった。あはは、よくあるよね」


 普通の女の子は虫が嫌いなので、そういう事もあるのでしょう。

 あるある。


「さすがにそれはねーよじゃな、人の三倍くらいある虫モンスターが、壁をぶち抜いて突っ込んで来た事はあったが」


 そっちの方がねーよです。何ですかその状況、どんなパニック映画ですか。


「さあ、上がってみのりん、魔王ちゃん」


 カレンの家に入るの初めてだ! ちょっと興奮する。


「お邪魔……します」

「誰も居ないから気楽に上がっていいよ」



 カレンの家は女の子の家といった感じで、白い壁がその清楚さを引き立たせていた。

 家具もその上に置いてある可愛い小物も女の子の家といった感じで、白い壁が清楚で、あれ、これもう言ったっけ。


 えーとえーと、女の子の部屋なんか行った事の無いボクには、どういったものが女の子らしいのかサッパリわかりません!


 ボクが知ってる女の子の部屋というと、サンプルは二つだ。

 その一つであるボクの〝みのりんハウス〟は部屋と言っていいのかわからないし、もう一つのタンポポのダンボールハウスもちょっと違う、清楚というより何も無い。


「ほう、結構可愛い寝室じゃな」

「あわわわ」


 慌ててカレンが寝室のドアを閉める。

 ダメじゃないですか魔王ちゃん、女の子の寝室を勝手に見るなんて。


「ドアが開いてたから見えてしまったのじゃ。ごめんなカレン」

「別にいいよ、散らかってるから恥ずかしかっただけで」


 ボクも中を見てしまったけど、散らかってるという程でも無かった。

 それよりも、カレンのベッドの上に可愛いぬいぐるみが置いてあったのがちょっと微笑ましかったのだ。


「あはは、見られちゃった? あれはアルとの約束で、ぬいぐるみと一緒に寝る事になっちゃったんだよ」


「うむうむ、そういう事にしておこう」

「本当だって魔王ちゃん!」


 真っ赤になったカレンが可愛い。


 幼馴染みのアルクルミとどんな約束をしたのかわからないけど、カレンには意外とぬいぐるみはアリなのだ。


 ボクはアルクルミにグッジョブと言いたい。

 彼女はさっき、洗濯場で土下座の姿勢からスカートの中を更に覗こうとしたオジサンを、バックドロップで仕留めていた。


「今お茶を入れるから適当に座ってね」


 明るくて可愛い台所に案内されたボクたちは、言われたとおり目の前にあったテーブルの椅子に座ろうと手をかける。


「あ、その席」

「ごめ……ダメだった」


 思わず呟いた感じのカレンに慌てて椅子から手を離す、見るとその席はテーブルの上にカップが置かれていた。


「ううん、なんでもないごめんね。そこは師匠の席だけど、いいよみのりんが座って」


 そう言いながらカレンはテーブルの上のカップを片付ける。

 冷めた感じのする飲み物は、飲まれた形跡がなかった。


 不思議そうに見ているボクにカレンは笑った。


「私の悪いクセなんだよ。もう師匠は帰ってなんか来ないって薄々わかってるんだけど、もしかしたら戻ってくるかもしれないからって、飲まれもしないカップを準備したりさ。そこにみのりんが座ってると安心する。誰かが座っててくれると嬉しいもんだね」


 カレンは三つのカップにハーブティを入れるとテーブルに運んでくれる。


「ししょーってなんじゃ?」


 ハーブティをすすってから尋ねるのは魔王ちゃん。


「私の冒険者のお師匠さんだよ、私を冒険者に育ててくれたんだよ、この家は師匠と私の二人の家。もし師匠が帰ってきたら壁に大穴開けちゃったから大目玉だよ」

「帰って来ないって……どこか行ったの?」


「冒険に出てった、現在冒険中。どこにいるのかサッパリだよ」

「探しに……行こう」


「無理だよみのりん、どこにいるのか本当にわからないんだ、でもありがとう。それにここで待ってろって言われてるしね」


 カレンは師匠を思い出しているのか、静かにお茶を飲んでいる。

 魔王ちゃんもさっきから何故か黙ったままで、何を考え事をしているんだろう。


 ここは空気を変えようか、カレンの家には遊びに来た、じゃ次に行く所は決まっているじゃないか。


「あの……さ、次魔王ちゃんの家……行きたい」

「いいね! みのりん! 私も行きたいよ」

「ほへ? わらわの家か??」


 カレンは一瞬で乗って来た。


「私、この町からあんまり遠くへは行った事ないんだ。魔族の里なんて冒険者なら一度は見てみたい場所だよ」

「わらわは別に構わんが、いいのか? 魔族だらけの魔族まみれの魔族三昧じゃぞ?」


「大丈夫だよ、いきなり襲われて食べられちゃったりしないんでしょ?」

「魔族はあれで気のいい連中じゃからな、わらわの友人を取って食ったりはしないじゃろ、たぶん」


「平気平気。何かお土産持ってった方がいいかな、楽しみだね! みのりん」


 ごめんなさいカレン、言いだしっぺですが、ボクは行きたい気持ちがちょっとだけ……いや、かなり消滅しました。


 次回 「魔族の里に行ってみた」


 みのりん、遂に冒険者が行くみたいな地に足を踏み入れる

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