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その11 怪獣大戦争と団長の秘密


「はっはっは! 魔王ちゃんに恐れ入ったか! ボクの友達だぞ!」


 魔王の威を借るボク。


 銀竜と魔王ちゃんの横で、胸を張っているボクをカレンが連れ戻して遠くに避難した。

 この巨大な竜が暴れたら無事ではすまない。


「うわーだめだ! 傭兵団はお終いだー!

「ぎゃー」

「逃げようぜ!」

「助けてー」


 傭兵たちもさすがに恐慌に陥ったようで上を下への大騒ぎだ


「うわーだめですじゃ! この村はお終いですじゃー!」

「きゃー」

「逃げましょう」

「お助けー」


 ついでに村長さんも慌てたようで、村人たちまでパニックになっている。


「落ち着け野郎共! そんなヤツがこんな所にいるわけがねえし隣の町を破壊してるはずだろ! 人間と遊んでるわけがねえ、こいつはニセモンだ!」


「そ、そうだよな団長の言うとおりだ。アホがどこかの竜を銀色に塗ったに違いねえよ」

「ツインテールのメイリーちゃんも、最初ニセモノだったしな」

「ニセモノが好きな村だな」

「なんだよ、驚かせやがって!」


 さすがは傭兵団の団長である、一瞬で部下の混乱を静めてしまった。


「落ち着け皆の衆! みのりん様の友達ならこの村の味方じゃ! 村長だけが食われておればよいのじゃ!」


「なんだ、犠牲は村長だけでいいのね」

「それなら何も問題ないわ」

「あーびっくりしちゃった、お茶でも煎れるわ」

「お茶請けにお菓子も用意するわね」


 村長さんの奥方も、一瞬で村人たちのパニックを静めてしまった。

 村長さんも『やれやれ』と落ち着いているけど、とりあえずあなたは今のに抗議しなくてもいいんだろうか。



「こっちにはヒドラがいるんだ! ヒドラをけしかけて全員でかかれば竜なんて倒せる!」


「おう! 我らはヒドラ傭兵団!」


『ヒドラ! ヒドラ!』

『ヒドラ! ヒドラ!』


 ヒドラを銀竜の正面に置き、傭兵団が周囲を包囲して武器同士をぶつけ合い、盾や槍で地面を叩く。


『ガキガキ!』『ドスドス!』


 声と叩く音が重なって一つの巨大な音になっていった。

 この音がヒドラと傭兵団を鼓舞し、更には相手への威嚇となっているのだろう。


 これが向かう所敵無しという歴戦の戦闘集団か……

 ボクはその光景に圧倒されてしまった、銀竜とヒドラの大きさは殆ど同じ、魔王ちゃん大丈夫なんだろうか。


「ほう……」


 それを見下ろす魔王ちゃんの目は、周りを氷漬けにしてしまう程にどこまでも冷ややかだ。


「わらわと戦うというのか、面白いのう、一度こういう戦いをやってみたかったのじゃ」


 銀色の髪が風に舞い、グリーンアイが輝きを増して一瞬傭兵たちが怯んだ。


 だが待って欲しい、今の魔王ちゃんの言葉。

 そう言えば村に来る途中でも、彼女は戦った事なんて無いって言ってなかったっけ。戦闘力はボク並だって。


 戦ってもいないのに、どうして冒険者でも軍隊でも勝てないとわかるんだ。

 まさか人々の噂だけが先行して、魔王ちゃんが軍隊でも叶わないという話になっているだけじゃないだろうな……


「かかれ!」

「オオー!」


 ボクの不安もよそにとうとう戦闘が開始されてしまった。


 ヒドラが銀竜に突撃して体当たりを食らわす、少し体勢を崩した銀竜の首とヒドラの三本の首が、激しく絡み合い噛みつき合い威嚇した。怪獣大戦争だ。


 傭兵団が剣や槍で銀竜に襲い掛かり、後方からは弓兵隊が矢を放ち銀竜の上の魔王ちゃんを狙撃した。


「あっ」


 ボクの目は信じられないものを見たせいで、見開いたままである。

 何十本もの矢が刺さり、魔王ちゃんが矢のカタマリになってしまったのだ。ここから見るとまるで針山である。


 魔王ちゃん散る――!


「ウソでしょ! 魔王ちゃん!」


 カレンが飛び出そうとするのを飛び掛って押さえた、もちろんカレンまで犠牲にしない為というわけじゃない。

 彼女に『よく見て』と魔王ちゃんを指差す。


「いったいな! チクチクと鬱陶しいわ! なんじゃいこんな物を投げつけおってからに、何の真似じゃ! わらわへの嫌がらせか?」


 魔王ちゃんが自分に刺さった矢を全て蹴散らしたのだ。


 あ、違った。頭の両サイドに二本残ってます。

 これも一応ツインテールの部類に入るんですかね? 何テールですか。


「銀竜! いつまで遊んでおる! 戦いごっこはここまでじゃ!」


『グオオオオウ!』


 魔王ちゃんの言葉に銀竜が咆えると、衝撃でヒドラの身体が半分吹っ飛んだ。

 即座に再生しだすヒドラに魔王ちゃんが説教する。


「お前もお前じゃ、躾がなっとらんヤツ! 嬉しいのはわかるが全力すぎるわ! 遊びたいなら後でいくらでも遊んでやるからちょっと大人しくしとれ!」

「くそ! なんなんだよ余裕こきやがって! ヒドラ! その娘っ子を叩き落せ!」


 団長が叫ぶ!


 だがヒドラは魔王ちゃんの側に付いた。

 銀竜の横に並び、三つの頭で魔王ちゃんにすりすりしている。


 尤も、ヒドラの首にすりすりされている魔王ちゃんの姿は、埋もれてしまって完全に見えなくなっていたのだが。

 ボクがあれをやられたら一撃で昇天だろうな、舐めるくらいにしておいて貰わないと。さすがは魔王ちゃんである。


「ひー太郎?」


 団長が膝から崩れ落ちた時に漏れた声である。


「小さい頃に拾ってからずっと今まで友達でいたのに……なんでだよ、ひー太郎おぉ」


 なんだろうか、多分団長の頭の中では昔の思い出が過っているようだ。


 小さいヒドラを拾う女の子、一緒にご飯を食べて一緒に寝て。少女とヒドラは一緒に遊んで一緒に育って――


 何故だかそんな映像が映し出されている、ような気がするが、ちょっと待ってもらっていいですかね。一時停止ですよ。

 映像の中に、とてつもなくつっこみを入れたい内容が紛れ込んでいる気がするんだけど、気のせいでしょうか。


 あなたカレンをお嫁さんにするって言ってましたよね? 本気だったんですかそれで。

 さっき、女同士でお嫁さんはないわーとか発言してましたよね確か。


 団長ちゃんがずっと遠くにいたので、ボクの女の子センサーは危険なしと判断して反応しなかったのだ。


 精度の高いボクのセンサーにもこんな弱点があったとは。


 次回 「恐怖の女の子サンドイッチ」


 みのりん、フシュウウウウってなる

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