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その4 水着パーティ出撃せよ


 町の門でパーティセレモニーを終え、町の人たちに見守られたボクたち六人パーティは出発しようとしている。


 水着代はギルドが出してくれた。

 早速水着屋さんの屋台で仕入れたのだ。


 カレンはやっぱり赤いビキニで目のやり場に困って仕方が無い。

 ボクは白いビキニで短いパレオ付き、ミーシアはフリルが可愛い黄色のバンドゥビキニで短いスカートが付いていた。


「俺は赤い水着の子がいいな、健康的ですごくいい」

「黄色い子もいいぞ、あのお尻に顔を埋めたい」


「青い髪の白い子なんか最高だよな、見ろよあの細い腰。ああ、あのおへそに吸い付きたい」


 町のオジサンたちの声が聞こえてきて生きた心地がしない。処刑される気分だ。


 視線が突き刺さるというのはこういう事か、今までは太モモやお尻くらいにしか刺さる視線を感じていなかったのに全身である。

 カレンの水着姿で恥ずかしがる余裕すらないのだ。


「あんまり見ないでくだしゃい……」


 ボクはもう降伏寸前である。


 降伏するには白旗が必要だ、白いハンカチ……持って無い。そうだこの白い水着を引きちぎって――

 危ない危ない、錯乱してトップスを外して掲げる所だった。使命があるのにこんな所で死んでる場合ではないのだ。


 ミーシアを見ると堂々と立っている。さすがミーシアだ。


 いや違ったようだ、顔は真っ赤で目はグルグルになっている。

 恥ずかしくて立ったまま気絶しかけているようだ。


 ミーシアは気絶しかけてくれていた方がいいのかも、錯乱して魔法でも唱えられたら大騒ぎである。


 カレンだけは元気にニコニコ立っている。さすがカレンだ。


 いやこれも違ったようだ、よく見ると耳栓をしていた。

 イチイチ目潰しを食らわせに行くわけにもいかないので、音をシャットアウトして無視を決め込んでいるのだ。


「それにしても何だあいつら……」

「せっかく女の子たちの水着姿で盛り上がったのに、マイナスまで盛り下げてくれるよな」


 問題なのは残りの三人なのだ。


「なあ、俺どうして女の物のビキニなんか着せられてるんだ?」


 ピンクのビキニを全部着せられてからマンクが疑問に思ったようだ、やはり遅刻して話を聞いていなかったらしい。


 サムライは黒いビキニ。


 女装の感じは全くしない、筋肉に紐が巻きつけられているような状態だ。

 大胸筋矯正サポーターにも見えない、ただの紐だ。紐を巻いた筋肉の山だ。


 そしてもう一人の問題児、タンポポである。

 本体のタンポポオジサンが青いビキニ姿で立っているのだ。


「どうして女子高生のタンポポじゃないんですか」


「仕方が無いんだもん、私セーラー服脱げないんだもん。あれ死んだ時の姿だからあれで固定されてるんだもん」


「どうしてスクール水着で熊にバーンされなかったんですか」

「無茶苦茶言わないでくれるかな」


「みんな! 私について来てくれてありがとう! さあ出発しよう!」


 耳栓をしたままなので、加減がわからないカレンの大声に皆で拳を振り上げ、町の声援に見送られて出発した。

 ボクは回復薬を自分の口に放り込む、門で散々町のオジサンたちに水着姿を見られて死にかけていたのだ。


「ねえ、これ町で着替える必要あったの?」

「その疑問はもっと早くに気がついて欲しかったです、ミーシア」


「ここからリンリン村まで三時間くらい! それまでモンスターに見つからないように進むよ! みんな静かにね! 大声はダメだよ!」


 相変わらず大きな声のカレンの耳から、ミーシアが耳栓を抜く。


「ああ、忘れてたよミーシア、ありがとう」


 カレンが照れくさそうに笑った、ああ眩しいなあ。


「草原のモンスターは〝のっぱらモーモー〟だよ、お肉にされたくないから不用意に近づかなければ襲って来ないはず」


 この恐ろしいサムライの姿を見たら、牛だけじゃなくて他のモンスターも逃げてくでしょう、逆に錯乱して襲い掛かってくるかも知れないけど。


 ほら見てください、普通の動物のトカゲですら一目散に逃げて行きましたよ。


「俺たちゃ冒険者♪ 山越え谷越えどこまでもー♪」


 カレンが歌ってくれたお陰で牛モンスターたちは、頭のオカシイ風貌のこのパーティを早期に発見して、避けてくれているようだった。

 効果があるので、静かに進むんじゃなかったのかというつっこみはしない。


 何しろ草原をビキニ姿で進んでいるのだ。

 世にはビキニアーマーというのもあるのかも知れない、でもこれはただのビキニだ。


 そのビキニ姿でとても鬱陶しい存在が目の前にいて困惑する。


「あのマンク、ボクの周りを人工衛星みたいにグルグル回るのをやめてもらえませんか、チラチラ目に入るんですけど。あなたの今の姿は、可憐な少女が目にしていい代物じゃありませんよ」


「じんこー何だって? あらゆる角度からの今のみのりんちゃんの姿を、目に焼き付けておきたいんだよ」


「ボクはあなたのビキニ姿を目に焼き付けたくないんですけど、焼き付き不良が起こりそうです」


「まあ、そう言うなって。夢にまで見たみのりんちゃんの水着姿なんだぜ。一瞬たりとも見逃すわけにはいかない」


「夢に見るのならもっと建設的なものを見たらどうですか。ハンバーグとかステーキとかソーセージとか素晴らしいものがあるでしょう」


『ぐう』

『ぐう』


 ついお腹が鳴ってしまった。ってもう一人は誰だおい。


「わ、私じゃないかも」


 ああ、タンポポさんでしたか。


 マンクとタンポポオジサンに挟まれて移動しているんだった。そのお陰でカレンの水着を間近で見て卒倒するのは避けられているのだ。


 サムライは、というと。

 何故かパーティの最後尾で少し離れた所を歩いている。


「どうしたんですかサムライ」

「うむ。娘子の水着姿というものに(いささ)か耐性が無くてな。筋肉ならかまわんのだがな、はっはっは」


 まさかあなた、ボクやカレンやミーシアに恥ずかしがっているんじゃないでしょうね、その図体で。


 というより、自分の姿に恥ずかしがるのがまず先じゃないでしょうか。

 どうしてそんな堂々と歩いていられるんですか。


「これがTVの物語だったら、こういうのを水着回って言うんだよね、みのりん。私知ってるんだもん」

「半分ゲテモノの水着回なんて、ボクは見た事ありませんけどねタンポポ」



 何の障害も無く(ボクの精神にはいろいろトラウマを植えつけつつ)三時間近く歩いただろうか、ようやく向こうに村が見えてきた、あれがリンリン村だろう。


 村の建物と言っても、藁の建物が出て来るようなわけでもなく、普通に町で見かける建物だ。

 町とは規模が小さいので村という事だろう。


 あの村がゴブリンのモンスター軍に占領されているのだ。


 はたしてボクたちは上手く任務を達成できるのだろうか。


「くしゅん」


 ずっと水着姿だからくしゃみでた。


 次回 「村の様子は地獄絵図だった」


 ミーシア、いろいろな意味で泣く

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