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その1 カレンとのデートは楽しいな


 今日もお天気、お日様ポカポカ。

 その日の午前中、ボクは町の商業区を探検中だ。


「そこのミニスカートから伸びる白い生足が綺麗なお嬢ちゃん、串焼き一本どうだい安くしとくよ」


 いつもの串焼き屋台のオジサンだ、どこの通りでも出て来るなこの人。


 それにしても、最近どんどん足に対する表現に遠慮が無くなってきている気がする。

 さすがのボクでもちょっと引いてきたぞ。


 店主はボクの足を満足そうに眺めていたが、やがてボクの顔に気がついたようだ。


「青い髪のお嬢ちゃんだったか、ちょっと待っ……」


 そう言うなり店主は屋台の前で四つん這いでうな垂れてしまった。


「すまない……すまない……青い髪のお嬢ちゃん。今日はオジサン、まだ失敗して焦がしちゃった串焼きを準備できてないんだ……俺とした事が……ウゥ」


「やめてくれませんか、ボクがいつもおこぼれを貰っているように聞こえるじゃないですか」


 失礼な、ボクだってちゃんとお金を払って串焼きを買った事くらい……


 無かった……


 今まで何本も串焼きを食べているのに、お金を払った事が一度もない事実に愕然としているボクを、串焼き屋さんの店主が四つん這いのまま見上げていた。

 なんだかオジサン、天使を見るような幸せな笑顔である。何を見ているのだろうか。


「串焼き二本くださいな、今から串焼き屋さんの両目に突き刺す串が必要だから」


 ボクの隣で恐ろしい理由で串焼きを買いに来た客がいる。

 横にいたその客を恐る恐る見る。


 カレンだった。


 串焼き屋さんの店主は即座に立ち上がるとカレンから代金を受け取り、二本の串焼きを渡すとボクたち二人に深々とお辞儀をして屋台を引いて去っていった。


「本当に油断も隙もないよね、はいみのりん」


 カレンはぷんぷん怒りながらボクに串焼きを一本くれたので、お金を渡そうとしたけど断われた。


 またしてもボクはただで串焼きを手に入れてしまったという事になる。

 記録更新だ。こんな記録を微塵も打ち立てたくないんですけど。


 ちょっと困惑気味に串焼きを頬張るが、口の中に広がる幸せなお肉の味で満面の笑みになり何もかも一瞬で忘れた。


「みのりんが美味しいものを食べてる時の顔、ホント大好き」


 そういうカレンもお肉を食べて満面の笑みだ。

 ボクもそういうカレンの幸せそうな笑顔が大好きだ。


「早めのお昼ご飯を食べようと思って来たんだけど、思いがけずみのりんと一緒になって嬉しい」


 今日は午後からカレンとの討伐予定だけど、こうやって早めに出会って遊べるのはボクも嬉しいのだ。


「そこの美しいお嬢さん方、どうだい見ていかないかい、新作あるよ」


 別の屋台のオジサンが声をかけてきたので、二人で覗いてみる。


 その屋台には、商品のカラフルな面積の小さい服が所狭しと並んでいた、どうやら水着屋さんのようである。

 どこでこういうの着るんだろうか。


「この町にプールあるよ、海は遠いけど町の東に湖があってみんなそこで遊ぶんだ。今度一緒に行ってみようか」


 赤い水着を持って笑うカレンに、ボクはドキドキして下を向く。


 カレンは赤が似合う、いつもしている彼女の防具は赤い簡単な胸当ての鎧だし、ボクにとっては太陽みたいな子だから。

 でもカレンと水着で遊ぶのは無理かも知れない、ボクのヒットポイントが持ちそうに無いのである。


 二人で水着を選ぶという楽しい時間を過ごした後で『また機会があったら』と屋台を離れた。

 服を選ぶ行為が楽しくて仕方無い。


 買わないから屋台の迷惑になっているのかも知れないけど、二人の女の子が楽しそうに選ぶ姿は客寄せにもなったようで、他の女の子たちが屋台を覗いていた。


 まあ、他の女の子たちの参戦で、ボクの危険センサーがアラームを鳴らし続けていたんだけど。

 隣で女の子たちが水着を選んでいるのである、なんと恐ろしい事だ、生きた心地がしなかった。


 しばらく歩いていると今度は三軒目の屋台と遭遇。


「あ、これ美味しいんだよ、ちょっと待っててね」


 カレンが屋台で買い物をしているのを見ながら、何の屋台だろうと目線を上げてジト目になる。


『魔王まんじゅう』


 と書いてあった。


「はいこれ」


 カレンがジト目のボクにお饅頭をくれる、キバを生やした女の子がガオーとしている絵が焼印で押されていた。


「これ……なに」


 さすがにこれは気になった、聞かずにはいられない代物だ。


「魔王ちゃんまんじゅうだよ、この町にやってくると聞いて早速名物として作ったみたいだよ」


 なんという商売魂……魔王はこの町に遊びに来るんじゃなくて滅ぼすとか言ってたんだけど。


「魔王ちゃんTシャツも売ってるみたい、ほらあそこだよ」


 見ると四軒目の屋台が見える。

 なるほどTシャツがぶら下がっていて、若い子たちが買っている。人気があるみたいだった。


 呆れたのでボクは寄りませんよ、とお饅頭をパクリ。

 馬鹿馬鹿しいお菓子なのにとてつもなく美味しかった。


 結局Tシャツの屋台も散々ひやかした後で町の門まで行ってみた。


 カレンはまだ装備を整えていないので、さすがにこのままパーティを組んで討伐とはいかないけど、いつものクセで門まで来てしまったのだ。


 門では町の人たちが騒いでいる。

 なんだろうと近づくと、一人の女の子がへたり込んでいて、その周囲を人々が囲んでいる様子。


 それは尋常ではない雰囲気で、何かが起こったのは間違いなかった。


 嫌な予感がするよカレン。


 次回 「近くの村から来た悪い知らせ」


 みのりん、ゴブリンの恐ろしさに半泣きになる

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