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勇者の代わりなんていくらでもいるんだよ
「陛下、一大事でございます」
「何?」
「魔物が街に侵入しております」
「よし、直ちに勇者を派遣しろ」
「それが、勇者達は褒美が少ないと戦わないと……」
「ハァ?バカじゃねーの」
勇者の仕事が敬遠される理由に「不安定な生活」があった。
兵士、即ち正規兵は公務員である。したがって彼等には給料はもちろんのこと、まとまった休暇を取ることも許されている。
だが勇者となるとそうはいかない。彼等には毎月の給料はもちろんのこと、決まった時期に一定の休暇をとることもままならない。
その結果、勇者の質は著しく低下し、戦闘能力が未熟な「自称勇者」あるいは「名ばかり勇者」は魔物達に対して連戦連敗である。
「人間の敵は人間」
今やそれが人類の共通認識であり、そして新たな脅威となりつつあった。が……
「ったく、使えねーな! 」
王様にしてみれば、勇者の代わりなどいくらでもいると思っている。
一人の勇者の死は悲劇かも知れない。しかし100万人の勇者が屍の山を築いた場合、それは単なる統計学的な数字でしかない。