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悪がいるからダメなんだ  作者: 神共 歩(しんとも あゆむ)
【一章(天国①)】 天国の案内 (完了済)
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1-7

 俺とテスは、途中で地上に降り、木になっている枇杷を食べ、川の水を飲んだ。

 枇杷は香り高く、完熟の柔らかすぎる感じは無いのに、甘くて美味い。

 川の水は冷たく、透き通っていて、川底の石がはっきりと綺麗に見える。

 川辺の岩に座って、川の流れる音と、風が葉を動かす音を聞きながら、少しの休憩を楽しんだ。

 森の音が食後に気持ち良い。

 のんびりしていると、テスが森を眺めながら説明をくれた。

「天国にある植物は、地球で生まれたものもある。

 天国の環境でも育ちそうな地球の植物の種を、天国で複製して、天国に種を撒いて育てている。

 天国の水と空気は、現状の地球より綺麗だから、果実も美味しく栄養も高く実るんだ。

 天国の動物や微生物なども、同じだよ。

 ただ、天国の生物の、繁殖機能は低くしているか、無くしている。

 天国は、神様に選ばれた者だけの世界だから、選ばれない者が、あまり増えないようにしているんだ。

 もちろん、天国で新しく生まれる命はゼロではない」

 天国で新しい生物が生まれるなら、地球で生まれたものより、優秀な生物が生まれそうだ。

 天使も、地球から来るよりも、天国で産まれた、天使同士の子供の方が、優秀になりそうだが…。

「地球から天国へ来るものよりも、天国で生まれるものの方が優秀そうですが?

 優秀なものが天国に増える方が、神様も喜ぶのではないでしょうか?

 その為に、天国の繁殖を抑えるのではなく、増やすべきでは?」

 俺は疑問に思ったことを、テスに質問した。

「天国での繁殖を抑えているのは、神様に選ばれた者が統治している状態の、天国を作る為だよ。

 神様に選ばれていない者が増えると、その状態を保つことが難しくなるからな。

 天使は、神様に選ばれていない者が増えると、神様の意向のとおりに、天国が機能しなくなるかもしれないから、神様に選ばれていない者が増えることが嫌なんだ。

 それと、地球よりも、天国で生まれるものの方が、優秀であるとは、かぎらない。

まぁ、優秀である可能性は高いと思うがな。

 だが、天使は、優秀か、優秀ではないかと、いう安易な判断から選ばれたものではない、神様が天使として選ぶか、選ばないか、である。

 天国で、天使から生まれた子供も、神様の選別をうける者であり、地球で生まれる者と、天国で生まれる者と、あまり変わりは無いよ。

 天国にいる天使は、地球で天使を作ることが可能なので、あえて天国で子供を作る必要は無いと考えている。

 天使は、地球は、天使を作る為の専用の場所であり、天国は、天使が神様の仕事を行う為の専用の場所であると、考えている。

 そして、天国の良い環境は、地球でも作れる環境である。

 天国の良い環境で、優秀なものが生まれるならば、地球にその良い環境を作り、地球でも優秀なものが生まれる状態にすればいい。

 だから、天国で生物を進化させて、新しい生物を創る必要はなく、新しい生物を創るのは、命の選別が行われる、地球でやるべきなんだ」

 地球での、過酷な命の選別を思い返す…。

 とても沢山の選別方法が、行われていたと思う。

 悪人によって、間違った選別を強要されてもいた。

 俺の、混沌状態の地球の記憶は、まだ過ぎ去った事ではなく、生々しいものである。

「…天使は、その命の選別の結果、選ばれたものでしょうか?」

「そうとも言えるし、違うとも言える。

 現状の、地球の命の選別は、神の意向の有るものと、神の意向の無いものがあるからだ。

 まぁ、多分、現状の、地球の命の選別の、一部は、天使を選別することの、判断の材料になっているだろう。

 俺は、地球の命の選別が、神の意向の有るものだけになることを望んでいる。

 それが、正常な地球の状態だ。

 その状態こそ、天使を生み出す機能を持つ、地球の本当の姿なんだ。

 未来には、改善されていると良いんだが…。

 さぁ、また飛び立とう。

 正幸迎はもう、充分に飛べるようになったし、俺と手を繋がなくても、大丈夫だろう」

 え?! もう俺一人で飛ぶのか?

「あの…。もう少し手を繋いでもらっても、いいですか? まだ少し、慣れないので」

「そうか。では」

 テスが、また手を差し伸べてくれた。俺の家に着くまでは、手を繋いでいてもらいたい。

 一人は、まだちょっと…な。安全第一だ。

 日が暮れ始め、辺りが朱色に染まっていく。

 そこから、かなり長い時間を飛んでいくと、雲の上に建物の形が見えた。

 平屋で長方形のシンプルな形だ。

 でも、暗くて遠くにあるから、よく見えない。

「あの建物も、天使の家だ。

 ここら辺は、食堂を中心にして、天使の家がドーナツ状に建っている。

 正幸迎の家も、その中の一つだ。

 空の上下の空間も使っているので、慣れるまでは、迷子になるかもしれない。

 だが、慣れれば、地球よりも簡単だと思う。

 道が無いから、目的地までは、基本的にまっすぐ飛べば良い。

 場所と方向と距離を、感覚的に覚えるだけだ。

 もうじき、正幸迎の家が見えてくる。気に入ってくれると良いんだが」

「自分の家を貰えるだけで、嬉しいです。本当に良くして頂いて、感謝しています」

 俺の家はどんな家だろう。なんか楽しみだな。


(更新日 2024年07月31日-No.01)

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