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「それと、途中で誰か、他の天使に会うかもしれないから、先に説明しておく。
天使は全員が、地球から来ている。
天使は、人類が誕生した時から、世界中で選ばれて、天国に来ている。
だから、原始人や外国人、障害者もいる。
他にも、思いもよらないような、色々な天使が暮らしているんだ。
だから、出会っても、驚かないようにな。
天使は、それぞれ、好みや生態などが違うが、神様への忠誠心は、天使に共通している。
争いは、ほぼゼロだ。
天国は、人間界のように、無作為に作られた、デタラメな生き物で構成された、秩序の無い社会ではない。
全て、神様によって、選別済みのものだからだ。
神様が、何を基準に天使を選んでいるのか、まったく分かっていない。
天使には、幾つかの共通点があるから、推測はあるがな。
まぁ、人間界よりは、天国の方が、似ている者が集まっていると、感じることだろう」
似た者? 俺、原始人と似ているところなんて、有るのかな?
「人間界から天使が来るときは、神器が教えてくれる。
正幸迎が天国に来ることは、十五年ぐらい前から知っていた。
ずっと、予定されていたことだ。
正幸迎がいつ死んで天国に来ても、大丈夫なように、準備して待っていたんだが、ずいぶん早くに死んでしまったな。
天使は、善行を推し進めていく者が多くて、矢面に立つ事も多い。
だから、早死にする者も多くいるが、その中でも正幸迎は早いほうだ。
まぁ、これからは天国で生きて、天使の人生で、色々学んでいけばいい」
「はぁ…」
俺はただの事故死だけど、有能な人ほど早死にするし、天国には若い人も多いのかな。
「正幸迎の事は、ずっと天国から見ていた。
どんな人物かは解っている。
もちろん、全てを見ていたわけでは無いが」
「ずっとですか? 俺が子供の頃から、俺を見ていたんですか? 何を見ていたんです?」
「正幸迎が子供の頃から、どう生きてきたかの大体は、映像を見て知っている。
転んで泣いたり、初恋で色々悩んだり、正幸迎の親より、正幸迎の事に詳しいかもしれん」
自分の人生が他人に見られていたと思うと、恥ずかしくて、顔が赤くなっていく…。
「あの…。他人の人生を見ることも、天使の仕事なんですか? 何か意味があるんでしょうか?」
「もちろん、それも天使の仕事のうちの1つだよ。天使は、地球上の全ての人の、人生を見ることになっている。
もちろん、俺の人生も、他の天使の人生もだ。
無意味に見ていたわけではない。
それが神様の助力となるから見ていたんだ。
恥ずかしがる必要はない。どの天使も大体が似たような人生だ」
俺の人生…。
他の天使も、俺と似たような人生なら、天使は間抜けで、女に縁の無い人生を送った者の集まりだろうか?
そういえばハードディスクは? 俺が集めた、夜のデータ達は、どうなったんだ?
パソコンの自爆装置の開発が先か、坊主がパソコンを封印後、花の代わりに棺に入れてくれる葬式が先か、の時代だっただろう。なぜ俺は未発達の時代に産まれてしまったんだろう…。
俺は、自分の人生を思い返していた。
テスは話を続けている。
「俺は、正幸迎が子供の頃から見てきたから、正幸迎を身近に感じているんだ。遠慮はいらない。正幸迎からすると、俺は初対面の人だろうが、疑問に思うことがあったら何でも聞いてくれた方が、俺も説明が楽で嬉しいんだ」
テスは初めからずっと、優しくしてくれる。俺を、孫のように思っているのだろうか。
「…はい。ご指導お願い致します」
なんというか…。隠し事ゼロの状態だな。だけど、見られているならば、もっとまともな人生を送ればよかった。
「最近はあまり、天使が産まれないんだ。残念だよ。
地球の社会がとても汚いから、悪魔ばかり産まれている。
昔はもっと、天使が産まれる比率が高くて、一度に複数の天使を、案内したりもしていたんだが…。
正幸迎は、かなり久しぶりの新しい天使で、天国に来そうだと分かったときは、天国の全体が喜んだものだ。
新しい天使は、もう産まれないかもと思っていたからな。正幸迎は天国の期待の新人だ」
「え?! それは荷が重いというか…。俺は凡人で、天使っぽいところなんて無いですけど?」
「大丈夫。正幸迎はきちんと天使だ」
俺は本当に、天使っぽいところが無いんだけどな…。
「…期待に応えられるように、頑張ります」
とは言ったものの、天使ってなんだろう。
俺は、善人になれば良いのだろうか…?
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(更新日 2024年07月31日-No.01)




