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「もうじき建物の入り口だ」
すぐそばに巨大な建物がある。
「この建物は、全体として、天国で一番大きな建物群で、今も建築は続いている。
これから、まだまだ大きくなる予定だ。
ほら、あそこに旗があるのが分かるか? あれが入口だ」
テスが旗を指さす。
「建物の手前にあるものが、【神器】を使って、本を書く為に作業する場所で、その奥に行くと、作成途中の本が大量に本棚に並んでいる建物。さらにその奥が、完成した本の内容を、石の板にドリルで彫って写す作業をする建物だ。
紙では長持ちしないから、本の内容を石の板に彫り込んで保存しているんだ。これで内容を数千万年は保存できるはずだ。
この建物は千年以上前に計画されたものだから、パソコンのデータのように内容を保存していない。保存は石の板だ。
ずっとこの方法で続けてきたし、年寄りばかりの天国では、不便は感じてない。現状では、この方法を続行する予定だ。
そして、さらにその奥から先の建物は、全て、石の板を保管しておく為の建物で、完成品の倉庫になっているんだ。
全部で4層になっていて、作業用の場所を手前に並べてある。それでも移動の距離はかなりあるがな。
建物の奥の方の大部分は、倉庫だから、あまり行くことは無いだろう。
今日は一番手前の建物で行う、【神器】を使って、本を書く作業を紹介する。
この作業は、始めは難しく感じると思うが、【真理】や、【地球がある宇宙の法則】を解れば解るほど、簡単になるから、休みながらゆっくり行っていこう。
難しさを感じるのは、能力が不足しているからなんだ。能力は成長するから、いずれは難しさも減っていく。
いったん離れて、【真理】や【地球がある宇宙の法則】を少し学んで、能力を増やしてから、再度やり始めてみるのも良い。マイペースにな」
●「はい」
遠くから壁に見えていたものは、連続して端まで並んでいる、石を積んで作られた建物群だった。
上から下まで、何重にも雲が階層状に広がり、それぞれの雲の上には建物が隙間なく詰まっている。
建物の奥は地平線まで続いていて、どこまで続いているのか分からない。
入口に近づき、旗が風で煽られて音を鳴らしているのが聞こえ始めた。
5mぐらいの金属の棒が雲の上に自立してあり、旗がそこで波打っているのが見える。
旗は白地で、紺色の二重線の枠取りがあり、中央に紺色で、本を開いた状態のイラストが描かれている。
旗から数メートル離れたところに、両開きの木の扉があり、扉は開いている状態で固定されている。
扉の上には「1-1」と番号が書いてあるから、他にも入口があるようだ。
テスの後から扉の中へ入ると、ホテルのロビーのようなの広い空間があった。
空間は、天井がとても高く10メートルぐらい上にある、右にも左にも50メートル以上はある横長のもので、窓からの光だけで明るくなっている。
俺達の他には誰もいなく、閑散としていて、磨かれた石の床に俺たちの足音だけが響いている。
目の前の壁に黒板のような木の板があり、テスと俺はそこに向かって歩いていた。
木の板には番号が沢山並んでいて、その番号の横には、名刺ほどのサイズの紙を入れる枠があり、いくつかの枠の中には、名前を書いた紙が入れられているが、ほとんどの枠には、何も入っていない。
「このボードの番号は部屋の番号で、紙に書いてある名前は、今、その部屋を使っている天使の名前だ。
…やはり戦士長がいる。夕飯に誘ってくるので、少しここで待っていてくれ」
テスはそう言い残すと、スタスタと右の方へ歩いて行ってしまった。
俺は、周りへ視線を戻す。
入って来た入口の扉を振り返ると、扉の左右の壁際には彫刻が置いてあり、その横には、絵画と長椅子が交互に並んで、左右の部屋の端まで続いている。
部屋番号のボードの横には、まっすぐ奥に伸びている通路がある。
通路は複数あり、通路と通路の間に、それぞれ部屋番号のボードがあって、通路と部屋番号のボードも、左右の部屋の端まで、交互に繰り返されている。
俺は、静かすぎる石の空間で、しばらく長椅子に座って待っていると、テスが足音を響かせながら戻って来た。
「戦士長も、夕飯を一緒に食べるそうだ。現地集合になった」
テスが嬉しそうに返事を伝えてくる。
「そうですか! お会いするのが楽しみです」
俺は立ち上がり、それに答えた。
「俺も彼と一緒に飯を食べることは久しぶりだ」
テスは、そう言いながら、部屋番号のボードの端にある紙に、ペンで自分の名前を書いて、枠の1つに入れた。
「こっちだ」
テスは、そう言うと、目の前にある通路を進んでいき、通路を入ってすぐにある部屋に入っていった。
その部屋の、扉の上の壁には部屋番号が書いてあり、通路の壁には、通路から部屋の中が見えるように窓がある。
テスの後から俺も部屋に入っていくと、部屋は、建物の外から光が入る窓に、カーテンが閉められていて薄暗く、テスがランプに火をつけて、火の大きさを加減していた。
部屋の奥に大きな立方体が置いてある。その立方体は、枠が白く、それ以外は透明なもので、1辺が5m以上はある。
「どこの部屋も、ほとんど同じ作りをしているから、どこの部屋でも、空いている部屋を使えばいい。
集中して作業を行いたい者は、人と離れた奥の部屋を使ったりしているが、今日はこの部屋で問題ないだろう。入口から近くて移動が楽だからな。
座ってくれ」
テスが、俺に入口と立方体の間にあるソファーを勧めてくれた。ソファーの前には少し大きめの机がある。
机の上には、紙とペン。それとキーボードのようにボタンとダイヤルが並んでいる。
俺はソファーに座ると、立方体と向き合う状態になった。
(更新日 2024年09月04日-No.01)




