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食堂では、木で出来た弁当箱が、壁際の棚にずらりと並んでいる。
柄も何も彫り込まれていない、あっさりしたデザインの弁当箱だ。
俺は、冷めても美味しそうなものを選んで弁当箱に詰めて蓋をする。
蓋が取れないように紐で縛ってから、さらに布で包んで、縛る。
その包みを手に持って、次からは弁当を入れるカバンを玄関に置いておこうと思った。いつもテスは突然に来て、早々に出発する。
昼飯の準備が出来たので、テスを探すと、メイさんと会話しているのを見つけた。
メイさんは、いつ見ても綺麗にしていて上品だ。しっかりと髪が結われていて、服にアイロンもかかっているようだ。メイさんは、トレーを持っているので、これから朝食を食べるのだろう。
俺が二人に近づいていくと、テスがこちらに気付き、二人の会話の内容を教えてくれた。
「メイさんと一緒に夕飯を食べることになった。もちろん正幸迎も参加するだろう?」
メイさんが俺を見て微笑んでいる。
「もちろんです! ぜひご一緒させて下さい」
俺は、夕飯に誘われて嬉しい。メイさんとは、もっと仲良くなりたいと思っていたが、挨拶に行ってから、まったく何もなく生活が進んでいた。
まだ言葉があまり通じないし、メイさんの家に訪ねていく適当な理由も見つからなかったのだ。
「他の人も誘おう。ついでに、もう一人、正幸迎に紹介したい人がいるんだ。
それと、メイさん、新八も、夕飯に誘っておいてくれないか? みんなで食べたい」
テスが話を進めていく。
「ええ。多分、新八さんは、これから食堂に来られると思うので、話しておきますね」
「ありがとう。では、のちほど」
二人で短く挨拶をしてから、【映写要約所】を目指して飛ぶ。
「もう一人は、天国の戦士長をしている人を誘う。よく【映写要約所】に居るから、今日もいるはずだ」
テスが、機嫌よく話してくれる。
「戦士? 天国では戦いもあるんですか?」
「神からの指示には、『悪魔との戦いに備えろ』ともあるんだ」
「悪魔との戦いがあるんですか?!」
俺は予想外の返答にかなり驚いて聞いた。
「分からない。今までに、悪魔との戦いがあったことはない。備えろと指示されているから、備えているだけだ。
天国は小さな小競り合いすらなく、最初からずっと平和が続いている。
現状は、悪魔が、天使と戦うことは不可能な状態にしてあるんだが、念の為に、一番大きな戦いを想定して、全天使と、全悪魔の最終決戦の準備はしている。
とはいえ、いつ、どのような戦いになるのかは、まだ分からないので、どのような戦いにでも対応できるように、常に備えている。
もしも、天国に緊急の異常が発生したならば、各地で大きな花火があがるから、それで分かるよ。
まぁ、気楽に構えていていい。そのうち、どのような防衛をしてあるか教えるが、かなり完璧なものだよ。心配して消耗する必要は無い。
それで、戦いのときに、全ての天使の最高司令官になるのが、今日紹介する戦士長だ。
だから、彼を正幸迎にも紹介しておきたくてね。
戦士長と俺は、ほとんど同じ時期に天国に来ているから、付き合いが長くてね。頼りになる人だよ」
「…最終決戦とは、かなり凄そうですね」
「まあね」
「人数の差が100万倍以上…ですかね」
「もっとだろう。このまま行けば、さらに差は開くだろう」
「天使1人対、悪魔100万人以上ってことですよね」
「そう」
「…そうですか」
「大丈夫だ。武器の開発もしているし、悪魔の研究も進んでいるから。まったく心配はいらない」
「はい」
とは言ったものの、地球上での戦争の勝敗に、兵士の数の差は大きい。
いくら強力な武器を用意しても、兵士の数が少なければ、旧式の銃や剣だけの軍隊にも負けるだろう。
人数の比率が開けば開くほど、戦力の差は増し、人数が多い方の勝つ確率が高くなる。
悪人がこれほど多いことは、人間の悪人に対する油断、侮りの結果だ。
悪人が増えれば増えるほど、駆除がやっかいになる。
地球では【地球がある宇宙の法則】を、神から与えられているから、善が強い。
だが、これだけ悪人を、繁殖させてしまったんだから、悪人と善人は、人数の差が少なくなっている。
善が強いという法則も、この人数の差では、効果が少ない状態だ。
悪人を倒すのが大変で、善人はなかなか本当の幸せな【正しい地球の状態】に、辿り着かないでいる。
悪人がどれほど愚かだとしても、善人は悪人に同情し、悪人が増えることを許すべきではなかった。
善人は悪人に対して優しさがあった。善人は、悪人に、慈愛の『心』を使った。
悪人が改心する結果を望んで行動したのだろう。
でも善人は考えが甘かった。結果として、悪は残り、成長、繁殖を続けた。
判断(選択)は、常に、『心』と『思考』を使うべきだ。どちらか一方だだけで判断するならば、正しい結果にならない。
神から、『心』と『思考』の両方を持たされているのに、人間は上手く使えずにいる。
人間の、上手に生きれずに彷徨う人生。
人間の作った、上手にいかない社会制度。
欲のみしか持たない悪人が、満たされないと暴れている地球。
地球の人間の下手な生き方が、天国にも大きく影響している。
空の単調な景色の中で、風が優しく撫でてくれる。風が神の手の平のように感じられた。
(更新日 2024年08月04日-No.01)




