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悪がいるからダメなんだ  作者: 神共 歩(しんとも あゆむ)
【三章(天国③)】(2024.8.23~作成中、近日公開)
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3-1

 自宅の窓から見える、朝の空をぼんやりと眺めていた。

 食堂で朝食を終え、自宅に戻ってからのんびりと座ってお茶を飲む。これが毎日の日課になっていた。

 天国語の本は、やっと、2冊目を読み終えたところで、まだ全ての量の半分にも満たない。

 だが、他の天使達と、食堂で軽い挨拶程度の会話が出来るぐらいには、天国語が上達していた。

 とりあえず順風に天国での生活が進んでいると感じる。

 このまま天国語を学び終われば、他の天使と一緒に、のんびりと天国で暮らしていくのだろう。

 今後の順風な天国での暮らしを思い浮かべていると、玄関の扉をノックする音が聞こえた。

 テスだろう。この家には、まだテスしか来たことが無い。

 玄関の扉を開けると、やはりテスが立っていた。

「おはよう。今日は、【神から指示を受けている仕事】の1つを紹介したいんだが、今からいいかな?

 神からいくつかの仕事の指示を受けているから、その全ての指示を、全ての天使が行える状態にする為に、君にもやり方などの知識を持っておいて欲しいんだ」

「もちろんです。今から行けます」

「ありがとう。じゃあ、目的地へ移動しながら話すよ。

 食堂で、昼食の弁当を持ってから行こう」

 テスはそういうと、後ろを向き、そのまますぐに飛び立った。

 俺は玄関の扉を閉め、そのままテスの横に飛んでいく。

 神の指示…。神が求めているものって何だろう?

 求められているものが分かれば、目標が見えて、毎日がやる気の充実したものになりそうだ。

 いよいよ天使らしいことになってきたな。

「目的地は、あの壁のような建物だ」

 テスは、左の一面に広がっている、巨大な壁のような建物を指さした。

「建物の名前は、【映写要約所】という。ここからは、片道一時間ぐらいだ。

 少し遠いが、多分、正幸迎は、毎日のように通うことになるだろう。

 俺は、今日紹介する仕事が、正幸迎に最適な仕事になるだろうと思っている。

 現状は仕事の内容が辛いが、正義感が有れば、乗り切れる仕事だから大丈夫だ。

 それに、現状は適任者が少ないから、正幸迎に出来る部分だけでも行ってもらえると助かるよ」

「俺に出来ることならばやりますが、辛いとは、どのような…?」

「まぁ、実際にやってみれば分かるだろう。

 少し天国の説明になるのだが。

 天国は、現在4つの星で構成されている。

 1番目の星は神が与えてくれたもので、最初からあった。

 2~4番目の星は、天使が作ったもので、今いる4号星は、4番目に作られた星だ。

 必要があれば、星は増やしていける。かなり複雑な計算が必要になるから、大規模な仕事になるがな。

 2~4番目の星は、1番目の星をコピーして作った。所々を少し変えてね。

 だから、まったく同じ星が4個あるわけじゃないが、大体同じだ。

 そして、星どうしの移動は【星の入口】の【星門連結神器】から行っている。これは前にも説明したな。

 1番目の星は、神が与えてくれたものなので、天使に人気が高く、離れたがらない者が多い。 

 だが、皆が1番目の星に住んだら人口密度が高くなって窮屈だろう?

 今は窮屈になるほど天使の人数は多くないが、管理の為にも、なるべく分散して住むようにしている。

 4号星には、知的な仕事に関するものが多くて、住んでいる天使も知的作業に向いている人が多い。

 もちろん、農作業や、洗濯場とか、肉体作業の場も、少ないがある。

 そして、知的作業を嫌がる天使は、天使の割合に多くいる。

 棚卸の表に数を書き込むだけの作業でも、やりたがらない天使が多い。

 お日様の下で体を動かして、気持ちの良い汗をかく! これが多くの天使がやりたがる仕事でね。

 生活品には困らなくてありがたいが、食べる為に生きているわけではなく、生きる為に食べているんだ。我々は、生きる意味を達成する為に、生活用品が必要なんだよ。

 だから、生活品があっても、天使全体として神の指示が達成できないならば、本末転倒だから、神の指示を達成する為の、知的作業員が増えてくれると嬉しいよ」

 テスが俺を見て、しばらくにっこりとしている。期待されている感じだ。

「棚卸の記入ぐらいなら、俺でも出来ます。ぜひ手伝わせて下さい」

 簡単な仕事ならば、部屋で暇をしているより、断然良い。

「そう言ってくれると、ありがたい。

 時が流れるほど、人間は進化して知的になっていると思うんだ。

 昔の猿から現代の人間までの流れで、知能が進化していっている事実を考えると、子孫の知能はどんどん高くなっていかないと、知的進化の法則上、おかしい。

 だから、平均の知能レベルの値は、世代を経るごとに高くなっているはず。

 つまり、天国に一番新しく来た正幸迎は、古くから居る天使より賢い可能性があるんだ。

 だから、俺は凄く、正幸迎に期待しているんだ」

「いえ…。でも、それは平均値のことで、俺自体は、それほど賢いかどうか…」

「ははっ。日本人は謙虚だからな。

 ちなみに、1番目の天使は原始人なんだが、原始人は、あまり知的作業員として向いていないんだ。

 原始人の群れは1番目の星に住んでいるから、しばらく会うことは無いと思う。

 彼らは天国語も少し話せるし、長生きしているから、悟っているかのようにのんびりと暮らしている。

 彼らに天国語や道徳などを教えることは、かなり苦労したが、天使に選ばれた原始人だから、一般的な原始人より大人しくて知的な者が多い。

 族長や、シャーマンに似ているような感じだよ」

 原始人の天使が存在することは、俺の天国のイメージの、かなり予想外のことだった。でも、いるんだな…。

「原始人は、どのような仕事をしているんですか?」

「彼らはほとんど働いていない。彼らの群れの近くに、果実がなる木を植えたから、そこから食べ物を得たりして暮らしている。

 彼らは、文明といえる程の群れの機能を持っていた天使達とは、交流はあるが、ほとんど無いといえる。

 一応、彼らの群れを観察している担当の者はいるがね」

「失礼ですが、原始人は、天国でどのように神の役に立っているのでしょうか?」

「神の役に立つか立たないかは、神が決めることだから、あまり出しゃばらない方がいいが、はっきり言って、俺はあまり役に立っていないだろうと思っている。

 そして、俺の予測では、彼らは、保存されているのではないかと思っているんだ」

「保存?」

「種の保存だよ。

 地球に、どのようなものが出来たのかの保存だ。

 多分、彼らは、原始人として、優秀な者なんだ。

 それと、未来に天使として来る者は、知的進化の法則から推測して、現在よりも知能が高くなっている者が来るだろう。

 だから、未来の天使から見ると、現在の俺ら天使も、賢くない原始人のような存在かもしれない」

「なるほど…」

「未来にでも、知能が高い天使が天国に来てくれることは大歓迎だ。

 地球にまだ解けていない謎があるように、天国にもまだ謎があるのでね。

 それと、ショックかもしれないが、神の指示とは、石板に書かれていたものだ。神から直接に聞いたものではない。

 その石板は1番目の星の洞窟に、積み重なって置かれていたものだ。

 多分、石板は、1番目の星が出来た当時に置かれたものだと思う。だいぶ埃をかぶって置かれていたようだ。

 文字の概念が有る天使が、1番目の星に住み始めて、数百年以上が経ってから、やっと、その石板は発見された。

 そして、すぐにその時に存在した天使達が解読を始めたが、その当時は、まだ解読の技術が未熟で、かなり時間がかかったようだが、現在では、解読は終わっている。

 解読が終わった際は、天使達が喜びで大きく盛り上がり、祭りが凄かったようだ。当時の様子は、天国の歴史の本に、次のように書かれている。


【解読からは、石板の指示に忠実に生きることが、天使の願いとなり、生きる目的であり、幸せとなった。

 石板の指示は、正しいものへの導きであり、目的は、一切の無駄がない状態をくれた。

 安心できる導きは、迷いと悩みを全て消し、やすらぎをくれた。

 毎日、幸福感が胸からあふれて、優しさで世界に触れることができた。

 世界は色鮮やかにくっきりと見え、視界が大きく広がり、呼吸が生き生きと深くなった。

 水のきらめき、葉と風の撫で合い。

 美しい世界を、全ての感覚が味わい、気持ちよさが全身に広がっていった。

 持って生まれた能力を全て発揮できる状態。最高の自分である状態。

 この為に自分は生まれたという実感。

 調和する完璧な世界の一片として、自分が世界に嵌まる(はまる)喜びがあった】


 まぁ、少し詩的な表記だがな。

 神の法則である【真理】が分かるとは、そういうことだ。

 神が目指し、自分も求めている美しく調和した世界。

 やるべきことが明確になり、自分の命の意味が、調和した世界の為にあると分かるとは、そういうことだよ。

 石板こそが大事なもの。よりどころであり、神のぬくもりそのもの。

 それからは、忙しくとも充実した毎日が続いたんだ。

 ちなみに、石板の内容は象形文字のようなもので書かれていて、神の世界で使われている言葉かもしれないので、その言葉を覚えて使えるように、そのまま天国語の元にした」

「神は、いずれ、石板が発見されて、解読もされると先を予測して、石板を置いていた。

 神が、石板を置いて、天使が、それを解読した。つまり、神と天使の共同の作業で、目的を達成したということですね。

 やはり、地球と一緒で、神は進む方向をくれるけど、実際に進むのは天使なのですね」

「その通り。俺達が行うんだ。神が望む通りの結果になるように、俺達が動くんだ。

 神は天使が、石板の指示を、達成すると知っている。

 なぜなら、神は、天使は指示を達成できると予測して、天使を作ったから。

 神は自分の能力に自信を持っているんだ。

 天使は神から信頼されているし、期待されているともいえる。

 天使が、指示を達成することで、神は、『そうなると知っていて、行わせた』ということになるし、自分が、指示を達成できると予測して作った天使が、『上手く作れた』ということになる。

 そして、天使は、神の操り人形じゃない、なぜなら、やらないという選択肢も選べるからだ。

 天使がやらないならば、指示は未達成になる。

 指示を『未達成にすることが出来る』ということが、天使が、『行動を自発的にしないと、達成できない』という証拠だよ。

 天使が『行う』から、『成る』のだよ。

 天使は行うことが出来る者として作られたし、天使が行うことで、天使にも利益があるので、行うことを断る必要もない。


 神は、かなり確実な、先を推察する能力を持ち、それを元に行動している。

 神の裏をかくことが難しいほど、神は全てを熟知されている。

 裏の裏が神の本当の目的だったりもするし、天使が達成できないことで、神や天使が何か得るものがあるのかもしれない。

 だが、俺は、指示を優良に達成することを目標にするべきだと思って行動している。

 正幸迎も、天使なのだから、神が助けてくれることを待つよりも、自分が少しでも神の助けになれないか、神が天使に望んでいることは何かと、そのうち、思考を切り替えて行動するようになるよ」

「なるほど、天使は、神を助力する存在ですものね。もちろん、神も助けてくれるでしょうから、お互いが助け合って、達成していくのでしょうか」

「その通り。だが、優先されるのは、天使より、神だ。そこを間違わないようにな。

 よし! 弁当を取りに行こう」

 食堂の建物に、かなり近づいていた。


(更新日 2024年09月04日-No.01)

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【悪がいるからダメなんだ】

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