表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪がいるからダメなんだ  作者: 神共 歩(しんとも あゆむ)
【一章(天国①)】 天国の案内 (完了済)
4/64

1-3

 そこから記憶が途切れている。

 俺はあばらを、そっと触って確認してみる…。

 何ともない。痛みも傷も無く、傷跡さえ残っていない。

「何があったか思い出したか?」

 テスが、優しく聞いてきた。

「はい…」

 死んだという実感は無いが、山奥であの傷では、すぐに掘り出されても、助からないだろうと思う。

「では、天使の生活の説明を始める。いいか?」

「え? …はい」

 天使? でも死んだのに、今は生きているって事は、死後の世界が始まったのか?

 新しい人生? ……何だか急すぎて、よく分からない。

「まずは、体の調子を確認しよう」

 テスが、明るく話を進めていく。

「少し、動いてみてくれるか。痛い所や、おかしな所があったら言ってくれ、すぐに治すから」

 俺は、テスに言われた通りに、腕を回したり、少し歩いてみたりした。

「鏡を見てみるか?」

 テスに言われるままに、壁際にある全身鏡を見ると、いつも通りの俺が映る。

 身長178㎝。刑事だから少し鍛えてあるが、マッチョという程ではない。体の線は、細くも太くもない。今時の体つきだろう。

 眉は太すぎず、細すぎず。目も大きすぎず、細すぎず。

 鼻は少し高いが、わし鼻ではない。

 口は厚すぎず、横に広がりすぎず、小さくもない。

 つまり、俺の顔は特徴が無いんだ。

 髪は染めずに真っ黒で、動きやすいように短髪にしている。

 着ているものは、俺の来ていた服ではなく、白い上下の服に変わっている。

 上衣が襟なしで、袖は手首まで真っ直ぐ筒状のもの。ズボンは、ウエストを紐で絞るタイプのもので、どちらも簡単な作りのものだ。

 上下とも、肌触りが良い。多分、材質は綿だろう。

 服は、ゆとりが多過ぎるほどで、まったく締め付けが無い。

 あれっ? 俺の頭の上に、光る輪が浮いている! テスの頭の上を確認すると、テスの頭の上にも、光る輪がある。

「あの、これ?」

 俺は、光る輪を指さして聞いてみる。

「それは天使の輪。天使だけに有るものだ。

 神様の力を【神力】といい、【神力】によって、天使の輪がある。

 【神力】は、【地球が存在する宇宙の法則】とは、別の仕組みのものなんだ。

 多分、天使の輪は、天使を、人間や悪魔と間違わない為に、区別がつきやすいように、あるんじゃないかと思う。

 天使の輪は、神様が作られたものだから、詳細は、神様だけが知っておられる」

「神様?!! いらっしゃるんですか?」

「いや、ここにはおられない。

 天使は誰も、神様とお会いした事が無いんだ」

「そうですか…」

 少し残念だが、いきなり神様と会わなくてもいいので、安心もした。

「…悪魔もいるんですか?」

「そう。悪魔もいる。

 悪魔が住んでいる場所は、こことは違う宇宙にあるから、ここには居ない。

 人間が死ぬと、天使になるか、悪魔になるかの、二択になる。

 天使になるか、悪魔になるかは、神様がお決めになられる。

 君は、神様に選ばれて、天使になったんだ」

「宇宙が違うって何ですか? ここは、どこなんですか?」

「ここは天国だ。

 地球と、天国と、地獄は、それぞれ惑星であり、それぞれの惑星のある宇宙は、別の宇宙だ。

つまり、3つの宇宙に、それぞれの惑星が存在するんだ」

「地球と地獄には、行くことが出来るんですか?」

「行くことは出来るが、交流は無い。

 天国に悪魔が来たことも、人間が来たことも無い。

 天使が地球に行くことは可能だが、緊急時などに限られる。だから、君が地球に戻ることは出来ない」

「…そうですか」

 やはり、一度死ぬと、地球に戻ることは出来ないようだ。

 地球に未練はあるが、もう、どうすることも出来ないだろう。

 それに、悪魔が居ることは怖いと思ったが、天国に悪魔が来ないなら、多分、安全だろう。

 鏡に視線を戻し、また自分を観察する。

 天使の輪を触ってみたが、実体が無い。

 頭から20㎝程上に、ずっと浮いている。蛍光灯のようだ。

 背中に羽は、生えていない。

 天使の輪、以外の、天使らしさは無いように見える。

 目の下に少しあったはずの、薄いクマが消えている。生前より健康そうだ。

 髭が少しだけ伸びている。死んでから、それほど、時間は経過していないようだ。


(更新日 2024年07月31日-No.01)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★この小説の目次ページへ↓★ 
【悪がいるからダメなんだ】

★作者:神共 歩(しんとも あゆむ)のブログ(外部ページ)↓★
【神共歩の公式ブログ】  
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ