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人の動く音がする。
ゆっくりと、まぶたを開けていくと、光が周りを現していく。
どこかの部屋だろうか。
長時間の熟睡から起きたような、体の気だるさがある。
少しずつ、伸びをするように動き始めると、知らない声が聞こえた。
「オハヨウ」
外国人の男が、下手な日本語で、俺に話しかけている。
男は、中肉中背の、西洋っぽい顔立ちで、目は大きく、唇が少し厚い。
白髪の頭部はオデコが広く、白い髭を20㎝程のばしている。
老いてはいるが、活力がある感じだ。年は初老といったところか。
あれ? 彼の頭の上に光が…。
「俺の名前はテスだ。これから、よろしく頼む」
男から片言の日本語で挨拶され、握手を求められた。
俺は寝ぼけながらも、その握手に応じる。
「あの…ここは?」
部屋は、俺の住んでいた日本では見かけることがない、ピラミッドのような黄土色の石が積まれた壁で囲まれている。置いてあるものも少なく、質素な感じだ。
俺が寝ていたベッドも、黄土色の石の上に、白い敷き布団が乗せられただけの、簡易なものだ。
窓からは、青い空に、雲が流れているのが見える。
「ここは天国。俺は天使で、君も死んで、天使になったんだ」
男が、ほほえんで答えてくれた。
だが、寝起きから、外国人のジョークに対応するのは、かなり困難だ…。
どうしたものかと考えていると、男が話しを続ける。
「最後の記憶は、覚えているか?」
最後? ……俺は何をしていただろうか。
*
(更新日 2024年07月31日-No.01)