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食堂の建物は、数百人が一度に食事ができる広さがあり、いくつもある出入り用の扉は全て開いていて、天井付近の窓からの光と共に、天然の照明になっていた。
部屋の中心には、ドーナツ型のカウンターがあり、その周りを、机と椅子が囲むように置かれ、カウンターの中では、色々な人種の天使が、忙しく料理を作っているのが見える。
たくさん並んでいる机には、まばらに天使達が座っていて、雑談をしながら食事を楽しんでいたが、俺に気付くと軽く手を振ったりしている。軽い挨拶をくれているようだ。
「みんな、新しく来た天使が珍しいんだよ。正幸迎が、会話を出来るようになったら、すぐにでも話しかけて来るだろう」
テスが、手を振ってくれた天使に、手を振り返しながら教えてくれた。
カウンターへ向かうテスの後に俺もついていく。
「それぞれが、好きな料理を、好きなだけ皿によそって食べるんだ。座る場所も自由だよ」
テスが俺に、皿とオボンを渡しながら説明をくれる。
カウンターには、様々な料理が並んでいる。
俺は、タレのかかった分厚い肉を数枚と、クロワッサンを皿に乗せた。
「栄養のバランスよく食べないと、不調になるぞ」
そうテスに言われたので、俺は追加でレタスなどのサラダも皿に乗っけた。
「壁際の棚に、弁当箱がある。どこかに遠出するときなどは、食べ物を詰めて持って行くといい。
食堂は24時間開いているから、好きな時に来ると良いが、朝と昼と夕飯の時間帯以外は、料理は冷めている。電子レンジは無いから、自分でカウンターの中に入って、鍋などを使って温めてもいい。
皿などの返却は、向こうのカウンターに置く場所がある。
それと、食器洗いの仕事は、いつでも参加可能だ。料理は知識が必要で、少し難しいかもしれないが、食器洗いなら簡単だろう?
この職場は自宅から近いし、4号星の人気の職場で、俺も暇なときはよくやっているよ」
「皿洗いの仕事ですか? 必要ならば、特に不満は無いですが…。
他の仕事も見せて頂いてから選んでもいいですか?」
「もちろんだ。俺は、正幸迎に天国の色々な仕事を見せながら、天国を案内することを楽しみにしているんだ。
ただ、本格的に働き始めるのは、天国語を覚えた後になるだろうから、それまでの1つの暇つぶしとして紹介したまでだよ。天国での仕事は、暇つぶしとしても機能しているから。
それと貢献だな。天国の仕事は、天国と神への貢献になる。
地球と天国では、仕事に対する概念が違う。正幸迎も多分、仕事に対する概念が変化するだろう。
天国では、地球で行っていた職業をそのまま行っている者もいるし、まったく違う職業に就いている者もいる。
だが、共通して言えるのは、1つの職業では、飽きるってことだ。
だから、複数の職業を、転々としていることが一般的だな」
「なるほど」
テスと俺は、カウンターから少し離れた席に座った。
「それと、あそこに黒板のようなものが3枚あるだろう?」
テスの指さす方向を見ると、部屋の隅に、人だかりが見える。
その人だかりは、黒板と、黒板の前に置かれた机に座っている天使を、取り囲むように出来ている。
壁の黒板は、貼ってある紙で埋め尽くされていて、机に座っている天使は、紙に何かを書き込んでいるようだ。
「あそこは職業の斡旋のようなことをしているところだ。人手が欲しい職場の一覧があるし、長期の休日の申請もあそこで行うから、手が空いている天使の一覧もある。
正幸迎も、いずれ、仕事をあそこから選んで決めることになるだろう」
「朝食を食べに来るついでに、その日の仕事を選ぶことも出来るんですか?」
「そうだな。夕食を食べに来るついでに、翌日の仕事を決めることも出来るよ。
黒板に貼ってある仕事から、自分がやりたい仕事を選んで、あそこの机で記入している天使に言えばいいだけだ。
さて、食べ始めようか」
「はい」
(更新日 2024年07月31日-No.01)




