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「こちらが新しい天使の正幸迎だ」
俺がテスの紹介を受けると、カウンターの中の天使が、笑顔で迎えてくれた。
20代ぐらいの、美しい西洋っぽい顔の男性だ。
背が高く、細身だが、しっかりとした丈夫そうな骨格をしている。
黒髪は顎の近くまで真っすぐ伸びていて、ヒゲは剃ってある。
さわやかな青年という感じだ。
「はじめまして。俺の名前はティオンだ。
【星の入口】で伝令指揮官をしている。
何か星中に伝えたい事や、掲示物に不明な点などがあったら、すぐに教えに来てくれ」
テスが通訳をしてくれている。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
ティオンさんの活力みなぎる話し方に影響され、俺も元気に答えた。
「4号星の地図を貰った」
テスが、小さく折られた手の平サイズの紙を俺に渡してくれた。
「店はここのすぐ隣にあるんだ。ティオンまたな」
テスがそう言い、入って来た4号星の扉へ歩いてく。
地図を見る時間は無さそうだ。
「では、失礼します」
ティオンさんにお辞儀をし、俺も4号星の扉を出ると、テスが浮かんでいる空へ、俺も続いた。
扉を背に、すぐ左に、黄土色の石を積んで造られた、平屋の広大な建物がある。
「ここが店の入口だ。4号星の店は、まだここだけにしか無いんだ」
【星の入口】の扉から、店の入口の扉まで、たった数分だった。
店の入口の扉は木製の両開きだが、大きさは平凡で、人が歩いて通るのに丁度よい。
扉の上の屋根に、旗がバタバタと風になびいている。
緑地の真ん中に、黄色の稲穂のマークのある旗だ。
店の入口を入ってすぐの所に、木枠に布が張られたカゴが重なって置かれていた。買い物カゴだと思う。
テスが自分で1つカゴを持ち、俺にも1つカゴを渡してくれた。
数歩進んだ所に店のカウンターがあり、カウンターには白髪と白い髭の西洋人が椅子に座っている。何か紙に書き物をしているところだ。
「ヘロン。こちらが新しく来たマサシゲだ」
ヘロンと呼ばれた男がテスの声に反応し、こちらを見ると、立ち上がって笑顔で挨拶をくれた。
「ヘロンだ。よろしく」
中肉中背の、のんびりとした老人だ。
目が優しい感じで、髭を20㎝程伸ばしている。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ヘロンさんの後ろには棚があり、大量のガラクタが詰められている。
「新しい天使は久しぶりだ。新しい要素が増え、まだまだ天国も発展していく。全ては成長の途中だな」
ヘロンさんの言っている事は良く分からないが、俺を歓迎し、喜んでくれているようだ。
テスが、カウンターの横に置いてある、紙とペンを持って来て説明をくれた。
「店から持っていく物は、この紙に記入してくれ。
記入するのは、品物に付いている番号と、個数だけだ。
ヘロンが棚卸しをして、発注をする。
ヘロンは研究が好きで、店に居ない事も多いが、品物は紙に書き込むだけで、勝手に持って行っていい。
店は24時間年中無休で開店している。扉に鍵がかかる事は無い。夜は、店内のロウソクが消えていることが多いから、自宅からランプなどを持ってきてくれ。
品物が無い時はヘロンへ言ってくれれば良いが、ヘロンが考え事をしている時は、話しかけても反応しないこともある。
ヘロンが対応できない時は俺に言ってくれ、俺が直接、生産元へ発注しに行くから」
「ははっ。テスは働き者で、店長の俺より店のことに詳しいんだよ」
笑ったヘロンさんの目尻にはシワが現れる。
「ヘロンの後ろの棚にあるのは、修理品だ。天国では壊れたものは修理して使っている。
壊れたものは、あの棚に置いておくだけで大丈夫だ。後は、新しいものを店から持って行けばいい。
じゃあ、店内を見てくるよ」
テスがヘロンさんへそう告げて、カウンターを離れて歩き出した。
(更新日 2024年07月31日-No.01)




