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悪がいるからダメなんだ  作者: 神共 歩(しんとも あゆむ)
【一章(天国①)】 天国の案内 (完了済)
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1-10

 扉をノックする音がする。

 ベッド横の窓には木の扉が閉まっているが、その透き間から光の線がいくつか入って来ている。

 もう朝か?

 玄関扉の向こうから「おはよう」とテスの声が聞こえた。

 俺は急いで起きて玄関扉を開けると、テスが覆いを乗せたオボンを持って立っていた。

「おはよう。食堂から朝食を持って来た」

 そう言いながら、軽くオボンを持ち上げて見せてくれる。

「おはようございます。どうぞ」

 自分の寝グセを気にしながら、テスを部屋の中へ招き入れると、テスが暖炉の前の大きな机にオボンを置いた。

「天国の料理は素材が良くて美味しいぞ。きっと気に入る」

 テスが覆いを取ると食べ物が見えた。

 レタス、トマト、コーンなど10種類程の色鮮やかな野菜のサラダ。

 スープは透き通っていて、小さく刻んだ具が入っている。

 目玉焼きにはスパイスが振られ、その隣には切れ目の入った大きなウインナーがある。

 パンは美味しそうな焼き色で、ふんわりとしている。

 食器は全て木製で、素朴で優しい感じがする。

 金属製のナイフ、フォーク、スプーンはよく磨かれていて、光を反射している。

 俺は美味しそうな朝食にゴクリとツバを飲み込んだ。

 食欲だけには自信がある。どんな時でも腹が減る。

 …俺って子供の頃から図太い奴なんだよな。もう少し繊細になりたいものだ。

「いただきます」

 さっそくスープから食べ始めると、…うまいっっ!

 コンソメスープだ。スープに入っているベーコンを噛むと、旨みが滲み出てくる。

 パンはフカフカで、柔らかく千切れる。

 サラダのドレッシングも、塩気とスパイスが効いていて、香りがいい。

 俺が夢中で食べていると、テスが竹のコップに水を入れて持って来てくれた。

 俺がコップを受け取ると、テスが向かいの椅子に座りながら話し出す。

「食べ終わったら天国を案内する。生活に必要なものを店に取りに行こう」

「店? 俺はお金を持って来てないんですけど…」

「天国に貨幣制度は無いんだ。

 店にある物は、何でも好きなだけ持って来ると良い。無くなったらまた作るから。

 店の品は全て、天使の手作りなんだ。

 沢山の生活用品があるから、俺も店から運ぶことに協力しよう」

「何でも無料なんですか?」

「そう。食べ物も、家賃も、生活用品も全て無料。

 だから、天使には、給料が払われることは無い。もちろん、正幸迎が働いた場合も同じだよ。

 それでも天国の社会は上手くいっているんだ。

 皆、自分が好きでやっている仕事だし、天使は神様に選ばれた者達の集まりだから、正常な状態を保とうと行動する者が多いようだ」

 なるほど。さすが天使だな、善良だ。

「正幸迎が天国の言葉を覚えたら、仕事を紹介する。色んな仕事が有るから、自由に選んでくれ。

 それと、何も仕事をせず、ゴロゴロしていることも可能だ。

 天国の社会は自由意志で成り立っているから、誰も、それに文句は言わない。

 正幸迎もそのうち分かるが、有り余る時間は、仕事が無いと暇なんだ。

 他の天使の役に立てることも嬉しいし、神様の役にも立ちたくて、仕事が有る方が楽しいという天使が多いだけだ。

 それに、ずっと、働く事も無く、好きな研究をしている天使も少なくない。

 正幸迎も、好きなように暮らしてくれ」

 なるほど、俺はしばらくゴロゴロ休んでから働き始めようかな。

「それと、天使の寿命だが」

 そういえば、すでに死んでいるからな…。天使も死ぬのか?

 天使が死んだら、次はどこへ行くんだろ?

「分からないんだ」

 えっ?

「今まで天使は誰も死んだことが無い。病気や傷もすぐに治せるし、いつ死ぬのかは不明だ。

 ちなみに、俺は天国に来てから2千年以上生きている。

 天使は神様によって造られたから、多分、死ぬ時も神様が導いて下さるだろう。

 天国がいつまで続くかも分かっていない。それも神様がお決めになるだろう。

 だから、正幸迎の寿命がいつまで続くか分からないが、長生きの可能性がある。

 まぁ、…先に教えておいた方が良いと思ってな」


(更新日 2024年07月31日-No.01)

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