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「体調の急変など、緊急に、他の天使に助けに来て欲しいときは、この打ち上げ花火を打ち上げた後に、玄関の前に旗を立てておいてくれ、近所にいる天使が駆け付ける」
扉の横に、ピンク色に近い赤紫の旗が、旗立てで自立している。
「電話は無いんですか?」
「携帯電話も、有線の電話も無いが、ずっと平気で暮らしているよ」
テスが、奥の木製の扉へ向かって行く。
「こっちが裏口だ。同じ鍵で戸締りが出来る」
テスに続いて裏口を出ると、広い車庫のような空間に出た。
左を見ると、木製の、車が通れそうな、大きな両開きの扉がある。
テスが、俺の目線に気付いて、説明をくれる。
「あそこの扉に鍵は無い。
この場所は、正幸迎が、家に居る居ないに関係なく、天使が仕事で自由に出入りする。
この水瓶の水を、足してくれたりするんだ」
腰の高さ程の水瓶が、5つ並んでいる。
「この水は飲める。手洗いや、トイレを流すのにも使うものだ。
この場で軽く、水浴びをする事も出来る。
床に排水の穴があって、床下に排水が溜まる様になっているんだ。
溜まった水は、定期的に担当の天使が取りに来て、捨てる事になっている。
水瓶の水が足される前に無くなったら、自分で川から汲んでくれ。
トイレは、そこの扉だ」
右を見ると、木製の扉がある。
「洗濯物は、そこの袋の中へ入れておけば、天使が持って行って、洗ってくれるし、洗い終わった服等は、そこの下の段に置いてくれる」
洗濯機ほどの大きさの木枠に、白い布の袋が、口を開いて固定されている。
棚には、今は何も置かれていない。
「かなり至れり尽くせりだろう?
研究などに没頭して、自分の生活の世話をしない天使が多いから、担当者を作り、天使の生活の世話をするようになったんだ。
それと、ゴミ入れはそこ。あとは…、大丈夫かな? 残りの説明は、明日にしようか」
「はい。ありがとうございます」
「では、俺は自宅に帰って、眠るとしよう。また明日、朝に来るから、それまでゆっくり休んでくれ。おやすみ」
そう言うとテスは、両開きの扉から、さっさと出て行った。
俺も疲れているので、このまま寝ようと、裏と表の扉に鍵をかけ、すぐにベッドへ入った。
何時だろう。時計が見当たらない。明日の朝にでも、探してみよう。
…体感的には、昨日の昼過ぎに死んで、今日の昼過ぎには、天国に居た感じだ。
急展開だな…。
でも、事故死って大体そうだよな…。
いつかは死ぬと思ってたけど、こんな急とは…。
やり残した事と、心残りはある。
でも、神様に選ばれて、天国へ来ているのなら、グチグチと文句を言ってるのは、神様に悪いよな。
神様は何の目的で、俺を天使にしたんだろう。
俺は天国で、何をすれば良いんだろうか?
楽園っぽく、ゴロゴロして、休息を味わえば良いのかな?
…俺の葬式とかは、家族がやるんだろうな。
家族には、俺が居なくても、悲しまないで、強く生きていって欲しいな…。
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(更新日 2024年07月31日-No.01)




