その一
なんとなく死のうと思っていた。
死に場所を探しに、等という程大袈裟でなく、散歩の延長の様な感覚で、けれどもやはりただの散歩とは違う暗い心持ちで電車に乗り、小さな田舎の無人駅でふらと下車した。
とある週末の午後、秋の空が高かった。
駅舎をでて呆然とした。
無人なのは駅だけではなかった。見事に何もない駅前である。コンビニはおろか商店の一つも無い。人の子一人、見当たらない。
ああ、寂しい所だな…。
ただそれだけが、第一印象だった。
それでもこの場所が自分の今の心持ちに調度フィットする気がして、微かに安心すると共に妙な気だるさを覚えた。
さて、いつまでも駅前に立ち尽くしている訳にもいかない。電車はとうに去り、今は音もない駅前を背に、遠く彼方に佇む何の変哲もない小柄な山々に囲まれた小さな町へ向かいとぼとぼ歩き出した。
何もない道が果てなく続く。たまにカラスやら野鳥が飛んでいく姿があり、バサバサという羽音がやたらと大きく聴こえる。道々見かける商店は古く錆び付いた看板と下ろされたシャッターが、余所者を黙殺するかの様にひっそりと佇んでいるのみだった。
この辺りの人々は一体どこで買い物をして生活しているのだろう、等と考えたりしながら私は頼り無く歩き続けた。
誰も居ない。時折気だるげな音をたてて軽トラックがすれ違い、消えてゆく。
左には刈り取りを終えた後の田園が茶色い山々を背景にポツポツ広がり、やはり人の姿は見られない。
まことに心休まるのどかな風景ではある。目を細めてその寂しい雰囲気をゆっくりと味わい、けれども余りのどか過ぎても人は苦痛を覚えるものなのだとしみじみ痛感せざるを得なかった。
秋の日暮れは早い。
既に陽は赤く傾き、遠く山々の陰にその身を半ば沈めようとしている。一人きり、山あいの名も知らぬ場所で、コオロギやらキリギリスの儚い鳴き声だけが私の傍にあった。




