87.妖精フレイとファル・・・?
するとフレイが突然、シルフィーに泣きついてとんでも無い事を言い出した。
『うぇぇぇんシルフィー!ユウマが、ユウマが私の事を捨てたよ。捨てられちゃった私ぃぃ』
その悲しそうなフレイを、シルフィーが胸に抱き慰めていた。
ユウマ自身は、フレイと契約した覚えが無いし、それにフレイの契約者は・・・と考えていた。
「あのさ、フレイの契約者て、シルフィーさんじゃなかったけ?俺は別に契約を交わした記憶が・・・」
そう尋ねて見たらシルフィーとフレイは、お互い見つめ合い考えて何かを思い出したように声をあげた。
「『あっ!』」
「そうでした。フレイ、あなたの契約者は私じゃないですか」
『そうだった。そうだった。つい、いつもののりで、てっ、ごめんねぇ。私の主様はシルフィーだけだよぉぉ、愛してる。シルフィー』
そう言ってシルフィーの顔に飛び付き頬ずりをして、愛情表現をしていた。
「て、言うより浮気をしていたのは、フレイの方なんじゃないか?」
そのユウマの言葉にシルフィーとフレイが、声をそろえて「『それは違います』」と語ってきたのであった。
このときはいったい何が違うのか、さっぱり解らないユウマであった。
それでシルフィーとフレイの声で、ユウマに寄り添って寝ていたファルと少女、そして子狼のランが目を覚まして、ユウマの顔とシルフィーの顔を順番に見て、何故かユウマの後ろに隠れた。
ただ子狼のランは、どうでもいい雰囲気でユウマの膝の上に移動して、そこで丸くなってまた目を閉じていた。
二人を見てから、ユウマに向けて少女が言葉を掛けて来た。
「あっ、あのあの、助けてくれてありがとうですの。ミーアはミーアて言いますの。この子は、白王狼のランて言いますの」
少女の名前はミーアと呼ぶらしいが、自分の事を一人称でミーアと呼んでいるようだ。それで子狼のランは、どうやら白王狼と言う希少種族の狼であるらしい。
「あの、お兄ちゃんホントに助けてくれて、あり・が・うっ、ぐすっ」
ミーアは俺にお礼を言おうとして、何かを思い出し突然泣き出してしまった。
このときユウマは、困った顔をしたが自分の膝の上に抱き寄せた。
この時ランは、あらかじめユウマの膝の上から降りて、シルフィーの前に移動していた。どうもこの子は頭が良い様で、ユウマ達の会話も理解している様だった。
それでユウマはシルフィーに視線を向けると、しょうが無いですねと目で合図をしてくれて、しばらくの間ミーアが泣き止むまで見守ってくれた。その間にシルフィーは自分の前まで来ていたランを、抱え膝の上に乗せて優しく撫でていた。
ランの方も嫌がるそぶりを見せず、おとなしくシルフィーの膝の上で丸くなって寝ていた。
この様な事をしている間のも妖精の姿であるフレイとファルはお互い挨拶をして、何やら会話をしていた様だ。
それはお互い自己紹介をしていたのであった。
まずはフレイが先行して自己紹介をしていた。
『私はね、炎の妖精のフレイって言うのよろしくね』
そう説明してシルフィーの元に行き、顔に抱き付き笑顔で続きを話した。
『それでね。私の主様は、シルフィーなの。そんでお気に入りはユウマだよ』
また、とんでも無い事を言い、今度は俺の頭の上に乗っかった。
それを聞いたファルは、せっかくユウマが黙っていた事実を、呆気なく調子に乗ってフレイに暴露していた。それは昨日ユウマに、説明した事と同じような内容だった。
『私はね。虹の妖精のファル、またの名を聖霊剣グランドファルシオンよ。私は剣より生まれた妖精で有り、七属性の守護を持つ聖霊でもあるの。もちろん主様ユウマなの」と。
その言葉を聴いたフレイが驚いて、ユウマの方を見ていたが、見られていた本人は泣き続けるミーアをあやしていたのが実は、話をふられては困るので気が付かないふりをしていた。
それで何故フレイが驚いたかと言うと、まず妖精族に虹の妖精と言う種族はいないが、伝説上の聖霊で七属性を操る存在の者がいた事を言い伝えで知っていた。しかしそれはあくまで伝説上の中の存在で実物を見た妖精はいなかったのである。
その話では実際は妖精で無く、聖霊だったと言う噂までもあった。しかし、誰もその存在を知らず、そのうえその妖精、いえ聖霊は世の中の悪意に嫌気がさして、自分自身で力を封印して眠りについてしまった言われていた事をフレイが教えてくれた。
それがまさか目の前のファルがその存在とは思っていなかった様だ。
その後、何故か意気投合してフレイとファルは、仲良くユウマの頭の上に乗っかて話をしている。
ユウマは、何故俺の頭の上なのかと不思議に思ったが、今は考えない様にした。
それからユウマの胸でひとしきり泣いた後、ミーアは今迄起こった事と自身の事情を説明してくれた。