86.就寝前に忘れ物と朝起きてビックリ?
荷馬車まで来て、後ろの寝床を見て思い出した。
『ああ、そうだった寝床に、この子達を寝かせていたんだった』
完全に忘れていたが、自分の寝床に先程連れ帰った少女と子狼のランに、使わせていた事を思い出した。
その安心しきって寝息をたてている少女と、それに寄り添う様に寝ている子狼に視線を向けて言葉を漏らした。
「はぁっ、忘れてた。どうしよう?とりあえず・・・」
今回はしょうがないので、もう一組持っていた敷物と毛布をアイテムボックスから取りだして、荷馬車の横に敷物を敷き、夜露をしのげる様に簡易的な屋根を取り付け寝れるようにした。
それからある程度時間が過ぎたころ、毛布にくるまって本格的に寝ようとしていたら、丁度ファルがアリア達の元から戻って来た。
『マスター、ただいまぁぁ、それじゃあお休みなさい・・・』
「へっ?・・・・・ああ、おかえり」
ただいまと言った後に何故か、横になっていたユウマのお腹付近に、丸まって寝始めたのであった。
この時ユウマはフレイもそうだけど、ファルまで何故俺のお腹の辺りで寝るのか不思議だったが、眠気に負けてそのまま眠ってしまっていた。
実際は、まあ考えても仕方無いので、明日にでも覚えていたら聞いてみようと考え、そのまま寝てしまったのである。
それだけ今回偵察に行った時に使った力が・・・影響していたかどうかは解らないがとにかく良い運動をしたのには間違いが無かったので、それだけ良く眠れたと言うことであった。
それから数時間後、日が昇り朝がやって来た。
いつもなら朝日が昇って直ぐに、ユウマは目を覚まして朝の運動をしていたのだが、この日は何故か寝坊をして起きていなかった。
それといつもは、ユウマが寝静まってから近づいてきて、特等席であるユウマの腹の上で寝るフレイなのだけど、この日はシルフィーのところでぐっすりと寝ていた。
それで朝が来てふと目を覚まし、いつもどおりユウマの元に飛んで行くと、見知らぬ少女と子狼、それに自分と同じ様な姿の娘を見て、急いでシルフィーの元に飛んで戻り泣き付いていたのである。
『シッ、シルフィー!ユウマが浮気して他の子と寝てるの。私のお気に入りの場所も取られちゃったよぉぉぉぉっ』
とんでもない事を口走りながらシルフィーの胸に飛びついた。その声に驚いてユウマは、目を覚ました。
「はっ!?はいぃぃぃ?・・・・・ん?」
この時点では、ユウマ自身は何が起きているのかさっぱりで、辺りを見渡していると、こちらにシルフィーさんと、その胸にしがみ付いたフレイが共にやって来た。
そこでその二人が近付的たので挨拶しようとしたら、シルフィーさんが俺の周りを物色するように見た後に言葉を掛けて来た。
「あっ、シルフィーさ・・・」
「不潔です。ユウマ様!そんな小さな子を寝床に連れ込むなんて?何故、わたくしじゃ・・いえ、誰でですかその子たちは・・・」
「はぁっ?何を言って・・・・!?」
その言葉で俺は完全に目を覚まし、上半身を起こし自分の周りを確認してみると、昨日確かに荷馬車の後ろに、寝かしていた少女と子狼のランが、何時の間にか俺の毛布の中に、潜り込んでいた。
ファルに至っては今だ俺の膝の上で丸くなっている。
フレイの時にも思ったけれど、どうして俺のお腹の上の毛布に寝ていて、俺が寝返りを打っても落ちていないのかなと不思議に思いながらシルフィー達に声を掛けた。
「えっと、その・・・違うんですけど、弁解の余地はありますでしょうか?」
シルフィーに言い訳を聞いて貰えるか尋ねて、視線をそちらに向けて見た。
するとシルフィーが、一旦目を閉じて、もう一度俺の毛布の中にいる少女を見つめ答えた。
「ええ、お聞きいたします。さぁ、仰ってください。やましい事が無いのなら正直にお願いします」
そう言って敷物の上に腰を下ろして、シルフィーはユウマの言葉を待った。
俺は包み隠さず昨日の見張りであった事を説明して、その時に倒れていた少女と子狼のランを、そのままにしておけないので、ここに連れて帰って来て荷馬車の後ろに寝かせた事と、その後何時の間にか、この娘達が自分の寝床に潜りこんでいて、知らなかった事をちゃんと説明した。
ただ、ファルに関しては、重要な部分をはぶいて、主従契約した事をそれとなく説明したのである。