83 偵察からの帰還?
ユウマがこの行動をしている間、見張り場所ではユウマが行ったであろう丘の方を、見張りをしていたメンバーで見ていた。
ユウマが丘の方へ向かって姿を消した後、さほど時間が経ってないくらいに、先程光が点滅していた辺りが・・・急に神々しい光を放ち周囲を、光で満たしていた。それで丘の上ももちろんだがこの野営場所も昼間と同じぐらい明るくしていた。
その光はこの辺だけでなく、かなり遠くまで影響をあたえ、短時間ではあるが明るくなっていたのである。
一時その明るさのままであったが、次第に元の闇夜に戻った。先程神々しい光を放った場所だけは、今だぼんやりと明るいままであり、その後に何故か、その周辺に竜巻が発生して、その後は元の暗闇に戻っていったのであった。
そこで見張りをしている全員、特に冒険者の3人は、その光景を見て何が起きたのか解らないが、恐らく得体の知れない生物か何かがいるのか、それとも不思議な現象が起きていると思って警戒していた。
ただ冒険者以外の全員は、ユウマが行ったのだから・・・まったく心配はしていなかったのだが、何が起きたのかは凄く気にはなっていた。
冒険者は何故か《ピリピリ》と警戒態勢をとっている状態のところに、ユウマは何気ない顔で戻ってきた。
「ふぃっ、ただいま、あぁ怖かった」
声を掛けたところ突然冒険者の1人が怒鳴ってきた。
「てめぇ、なに勝手な事してやがる。その調子じゃ偵察には行ったが、ビビッて逃げてきやがったな」
「まっ、まさか、魔獣を連れてきていませんよね?」
「はぁあ、やっぱりさっきの話はデマだったのか?そうだと思った」
冒険者の3人は、全員でユウマを責めて来た。
ユウマは何事と目を白黒させて、騎士隊長のレオンの方を見てみると、首を振って両手を挙げて『駄目だこりゃ』とため息を吐いてから言葉を掛けてきた。
「ところで、ユウマ殿その両手に抱えている子と、子犬ですか?どうしたのですか?」
レオンに問いただされたので、説明する事にしたが、その前にこの娘達をちゃんと寝かせてやりたかったので断りをいれた。
「すいません。この子達を寝かせてきますから、ちょっと待っていて下さい」
そう言って自分の寝床である荷馬車の後ろに、少女と子狼のランを一緒に寝かせて焚き火の所まで戻ってきた。
先程起きた事とアンデッド系の魔獣がいた事を伝えた。
すると、冒険者の3人が、またユウマに向けて吠えてきた。
「そんな、事あるわけねぇ。てめー!嘘ばっかりつくんじゃね」
「大方、アンデッド系のゾンビにビビッて逃げてきた。と言うのがホントに話しじゃないですか」
「そうだろうな、そんな話し信じられねからなっ。はははっ」
最後は、笑いながら語っていたが、ここでアリアとメイリが冒険者達に文句を言った。
「ユウ兄様は、嘘なんて付きません。絶対にいたんだと思います。魔獣が!」
「そうよ!ユウ兄は、勇敢なんだから」
「そうよ、恐らくさっきの子達を助けて連れて帰ってきたのよ!」
そう叫んだ。アリアとメイリは、悔しかったのか目に涙をためて文句を言っていた。
ただ不思議なのは未菜が、まったく文句を言ってなかったので不思議に思い、様子を見てみるといつの間にか、完全に寝入っていた。
『はあ、この娘はどおりで大人しいはずだ。普段なら真っ先に飛び掛るだろうに、気持ちよさそうに寝ていらっしゃる』
ユウマはこの時、未菜の方はどうでも良かったが、参ったなぁと思っていた。
正直に話したら大事になりそうなので、ある程度隠していたかったのだが、この娘達の期待と信頼を裏切る訳には行かないから正直に話そう。
「えっと、あのですね。ちょっと聞いてもらいたいのですが、いいですか?」
俺のこの言葉を聞き、冒険者の3人はいやらしい顔をしながら笑いながら語りかけてきた。
「おおっ、やっと正直に逃げて来たって言う気になったか」
「はははっ、駄目よゲートそんなにいじめちゃ!ふふふっ」
「あははははっ、ゲートもミリアもこの兄ちゃんが、はははっ」
茶々を入れてきた冒険者を見てアリアとメイリは、そいつらを睨んでいた。
ユウマはとりあえず喋る前にアリアとメイリをなだめているとレオンが話し掛けてきた。
「ユウマ殿、先程聞いてもらいたい内容とは・・・教えて貰えますか?」
レオンが気になったのか、先程の続きを聞く為、冒険者達に少し黙れと脅しを掛けてからユウマに訊ねてきた。
「あっ、はい!先程あの丘の上に偵察に行った際にですね。アンデッド系の魔獣がいたって言いましたよね」
「ああ、確かにそう言っていたが、それが何か?」
「へっ、どうせグールか、ミストワントじゃねえか、あいつら弱いからふふっ」
「少し黙っとれ、お前達!それでユウマ殿続きをお願いします」
「ええ、それでその魔獣は、ゾンビだったんですよ。ゾンビ」
「えっ、ゾンビですか?ならそんなに脅威では無いですな、傷さえ負わなければ、それで何体ぐらいいたのですか?5体ですか?それとも多くて10体ですかな?」
「それが・・・・」
ユウマが言いよどんで、どう言う風に説明しようかと考えていた。