70.リスティサイドの話?
これは、トライア領主の甥であるリスティサイドの物語である。
◇-◇-◇
始まりは、何故かリスティと本編の主人公ユウマが決闘を行なっていた。
何故、決闘になっているかと言うと。
リスティは彼、ユウマの言動と存在が、特に気に喰わなかったからと言う、なんとも理不尽な理由だった。
何せ自分の気にいった女性を口説き、良い所まで言い寄れて、相手もその気にさせていたのに。
などと勝手に勘違いをしていて、その上逆恨みに近い考えをしていた。
この勘違いには、理由があった。
リスティは、今まで何をやっても一番には成れずにいた。
魔法騎士学校でも成績上位と言っても知識だけで戦闘に関しては素人であったのだった。
しかしただ一度、騎士団の騎士と模擬戦をして勝利を収め、いい気になっていた。
それからである。
リスティの行動と言動がおかしくなり始めたのは。
今まで親に頼らず自分の力で何とかしていたが、急に親のすねをかじってやりたい放題して、周りの人を困らせていた。
そして派手な衣装を着て、派手な馬車を乗り回して、気に入った女性を見かけたら、所構わず声をかけていた。
その結果、何故かすべてが旨く行き、その所為で勘違いが酷くなっていった。
それに貴族である父親の名前と、トライアの領主である叔父の名を出せば、殆どの庶民共はひれ伏していたからである。
なのにここでは自分の言いなりにならず、以前と同じ様な事になりそうになっていた。
その原因は、今決闘をする為にリスティの目の前にいる、ユウマと言う名の冒険者で庶民の青年である。
この庶民の青年はひれ伏すどころか、こちらの言葉に対して正論を言って論破してくる。
そして、リスティはその言葉に対して何も言い返せず、そして悔しかった。
ならば、力でこいつを叩きのめせば良いと考えて、自分の持つ最高の剣と鎧、そして盾を装備して待ち構えた。
だがそのユウマは、何も装備品を身に付けず、素手で戦うと言ってきたのであった。
リスティはこのときも、この庶民は馬鹿にしやがって、こうなったら事故に見せ掛けて殺してやると考えだしいきなり切り掛ったのであった。
しかし何度も剣を振り回し、切り掛っても避けられてしまう何度も、何度も剣を振り回したが、最後には息が上がって動けなくなってしまった。
『くっ!くそっなんなんだ。こいつは、それに動きづらい。そうだこいつは武器を持ってないんだ。鎧は脱いでも問題ない。それに盾もいるまい』
そして、鎧を脱ぎ捨て、盾もそこに捨てた。それから真剣な顔をして剣を上段に構えた。
その行動を見ていた、青年がこちらに向けて謝って真面目に構えたのを見て。
『そうだ、このままいかにも真面目そうに振る舞って、罠にかけてくれよう。ふふふ』
目くらましの為の、光魔法の【閃光】を詠唱して保持した状態で、剣を振り降ろし魔法を発動した。
しかし魔法は発動せず、ミスリル製の剣を折られてしまった。
何がおきたか解らず驚いてしまった。
リスティ自身は、得意とする身体能力向上の魔法を使用して身体能力を上げていたはずなのに、ユウマの動きが見えずにいた。
さらには光魔法も発動せず霧散してしまっていた。
そして、炎を纏わしてさらに強化をおこなったはずの、自分の剣を難なく折られていたからだ。
驚いていると、何故か対戦していたユウマが後ろを向いて離れて行くのに気が付き、これはチャンスだと思った。
『今なら僕の得意な魔法を全ての魔力を注いで打ち込んでくれよう。くくく』
リスティは自分の得意な火属性の火炎魔法【火炎矢弾幕】を詠唱した。そして・・・・・。
「はははっ!油断したな馬鹿め!まぐれで僕の剣を折りやがって、死んで詫びろ」
などと台詞を吐き、不意打ちするつもりで魔法を放った。
しかし、魔法が直ぐに飛んでいかなかった。
その場所で停滞して何故か威力を増して、制御できなくなっている。
『なっ、何故だ?魔力の供給が止まらない?力が入らない。目がくらくらする』
そんな事を思っていると、やっと【火炎矢弾幕】が前方に飛んでいった。
意識が朦朧としながら勝ったと考えていた。
『ふっふふ、くっ・・これなら防げまい。馬鹿な庶民よ、僕を怒らすからだ』
などと思っていると目の前で炎の矢が防がれた。
『なっ、何故だ?俺の渾身の魔法だぞ。何故だ・・・!?』
そして、そのあと爆風と熱気がこちらに向かってきた。
『あっ、ああ、防御魔法を張って逃げなくては』
しかし先程全魔力を使ったので、何も発動せず爆風に呑まれたのであった。
『あっ、熱い助けてくれ。・・・あっ、ああ!?目の前に炎の竜巻が、誰か・・・・!?』
声が出せず先程の時点で意識を失いかけていたが、何とか耐えて意識を失わなかった。
しかし先程このまま意識を失えばよかったと後悔していたのだった。
誰か助けてくれ死にたくないと、リスティがその様に思っていると、人影が自分の前に現れた。
『たっ、助けてください。僕は・・・?』
しかし声が出せずにいた、そしてその人影に安全な場所へと蹴飛ばされた。
『たっ、助かった。ありがとう助けてくれて・・!』
そう思って、助けてくれた人影の方に視線を向けた。
『なっ、君は庶民、いやユウマ殿では?・・・何故、何故僕を・・・』
そう思いを最後に自分の脱ぎ捨てた、鎧と盾の場所に落下してしまった。
その場所で運悪く大盾に頭を打ちつけ、意識を失った。
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・
そして、目が覚めたが、周りが白一色の部屋の中だった。
『あれ?前にここに来たことがあるような?』
などと思い、確かこの後に上のほうから・・・と頭を上に向けると、そこには天使の様な少女が頭上より舞い降りてきていた。
「約束どおり、貴方の封印していた記憶を呼び覚まします。そして現世に戻るのです」
「あの、僕は死んだのではないのですか?」
「ええ、生きてますよ。ただ前世の記憶を貴方の要望どうりに封印していましたので、その解除を行なうのですけど?・・・あれ、忘れてますか」
「えっ、何故です。前世の記憶とは?」
「えっと・・・・!?うん、めんどくさいですね。とにかく封印をときます。それじゃこの後頑張ってください」
「おっ、おい何の冗談を?せっ、説明を・・・・!」
そして、目を開けたら医務室の天井が目に映り込んでいた。
今までの記憶と、封印していた前世の記憶も同時に蘇えってきたのであった。
それも最近の恥ずかしい記憶は、彼の悩ませる原因となり、さらに頭が痛くなってきた。
『恥ずかしすぎる。このまま死にたい気持ちだ。でも、このままではいけないな?よしこのまま今までの記憶は無かった事にして、新たに生まれ変わった様に振る舞おう。うん、そうしよう』
そう思い頭を打った事を理由に、今までの行ないを忘れてしまおうと心に決めるリスティだった。
そして、彼の新たなる人生がここからスタートするのであった。
それに伴い今いるトライアから一旦、自分の実家である。となにの大陸に戻る事を決心したのであった。
・・・・・この続きはまた別の話しで・・・・するかもしれない・・・?