69.おかしな事とトライアを出発?
その光景を見ながら、複雑な気持ちで何で考え込んでいた。
『たしか俺は、朝食に招かれてここに来たんじゃ・・・なかったけ?』
改めて今までの事を考えてから、なんか厄介ごとばかり巻き込まれるなと思いながら、何故か盛大に「はあっ」と溜息を吐いて空を見上げていた。
ユウマが空を見上げてる間に、シルフィーがレーネとユウマの元に戻って来て、何故か黄昏ているユウマの方をみて、不思議に思いレーネに聞いてみた。
「ユウマ様は、どうしたのですか?レーネ」
「いえ、先程から何故か空を見上げて、考え込んでいる様なのですが?」
ユウマの現状を見て、どうしたのだろうと2人が心配になって近づいていき、声を掛けたのだった。
ロベルトはリスティの様子を看ていた治療師の近づき、上級回復薬の入った小瓶を渡した。
治療師が小瓶を受け取り、中身を聞いて驚いていた。
だが驚いている場合じゃないと、直ぐにその上級回復薬をリスティに飲ませた。
するとリスティの頭にできていた、たんこぶが風船の空気が抜ける様に縮んでいき、そして身体全体に負っていた火傷が、無かった様に消えて治っていった。
治療師がすべての傷が治ったのを確認して、最後に光属性の体力回復魔法をかけて帰っていった。
何故最後に体力回復魔法をかけたかと言うと、身体に負った傷を急速に治すと体力が残っていない為に、すぐには目を覚まさず、下手をすると二、三日間は目を覚まさない事があるそうだ。
ただし上位の回復薬又は治療薬を使用した場合は、その行為はあくまで気休め程度でしか内容で、かける必要も無いとの事だ。
今回使用したのは、上級回復薬なので、あくまで念のためだったそうだ。
それでその後は、静かな寝息をたてているリスティは、そのまま医務室に寝かした状態にしてこの部屋をあとにした。
一応この部屋には使用人を、何人か残し看病をさせるように指示を、執事のセバリオが出していた。
そして、ユウマ達は少し遅めの朝食を頂くため、領主の館の食堂に連れられていかれたのであった。
食堂では談話をしながら楽しく朝食をとり、それが終わると今度は応接室で、この後の予定などの話をする事にした。
現状この時点で時間的には、普通では遅い時間なのだが、まだ朝食と言っても問題の無い時間帯であった。まあ地球で言うところの8時から9時の間であった。
ちなみにここに来た時点では、ちょうど朝日が昇ってきて辺りが若干明るくなってきた時だった。時間にして5時から6時ぐらいだったからである。
そして、応接室で1時間程度、みんなで楽しく話をしていると、部屋の扉を《コンコン》とノックする音がした後に、女性の使用人の声がして「失礼します」と言って中に入ってきた。
「リスティ様がお目覚めになりました。でも?ちょっと様子がおかしいのですが、どうしましょうか?」
使用人の娘が説明する内容は、確かにリスティが目を覚ましたのだが、今までと態度が違うのといつも使用人達に吐く暴言がまったく無いと言う事らしい。
それを聞きみんな頭を捻り「はぁあ?」と声をそろえて疑問に思い、頭をひねっていると、ロベルトさんがその使用人の娘に、リスティ自身をここまで連れてこれるか尋ねた。
するとまた応接室の扉を《コンコン》とノックをした後に、先程リスティの様子がおかしいと色々と説明してくれた使用人の娘がロベルトさんに指示されて扉を開けると、それを待っていたかの様に、1人の青年が中に入ってきて挨拶してきた。
「失礼します。叔父上、あっ来客中でしたか?すみません」
このリスティのこの言葉と、現状の姿を見た全員が一斉におかしなものでも見ている様な感じで変な声をあげた。
「「「ん?んんん・・?」」」
最初にあった時のインパクトが強すぎて、今この応接室の入口にいるイケメンは誰だろうと言うくらいの美男子で、来ている服に関しても普通より若干良い物であるが先程の姿からは想像できない容姿で、その場に立っていたので、中にいた全員は頭に上にハテナマーク、疑問符を出して、頭を傾けいた。
「しっ、シルフィーさん、彼・・・おかしくないですか?」
「はっ、はい、おかしすぎます。だって雰囲気が全然違いますし?」
そう、このときのリスティは、最初に会った時の派手なイメージも無く、間ともな格好でしかも礼儀正しく表情も凛々しく見えた。
「もっ、申し訳ありません。お話中に、こちらの方々は?」
「「えっ!・・?」」
「リスティよ、憶えてないのか?」
今のリスティの言葉に、みんな唖然としていると、ロベルトさんが今までの事を憶えてないのかを尋ねてみたのだった。
するとリスティは不思議がり、一瞬考えてがら言葉を語りかけてきた。
「あのう、どこかでお会いしましたでしょうか?まことの申し訳御座いません。ここ数日の記憶が曖昧になっておりまして。何か失礼な事がありましたでしょうか?」
この時点で先程までとは違い、完全に性格が良い方向に一変していた。
そこで今までの事をロベルトが詳しく説明していると、青い顔をして止めには土下座状態で頭を下げてシルフィー達とユウマに謝罪をして来たのだった。
どうやら、先の戦いの最後に頭を打った影響で、記憶の混濁と何故か性格が変わると言う奇跡みたいな現象が起きたようだ。 実はこのときユウマは、リスティの状態を確認してみたけど、別に頭に関する状態異常も無く、健康そのものと表記していたのでますます訳が解らなかった。
この土下座をする前のリスティは、ロベルトから今までの事を聴き、なんて恥ずかしい事をしていて、そのうえ色々と大変失礼な事をやってしまったと反省していた。
そして、今からは人々に尊敬される、叔父の様になろうと誓っていたのだった。
この後リスティは、ここにいる全員に挨拶をして部屋を出て行ったのであった。
そのあと、もうそろそろこのトライアを出発する時間が近づいてきたので、領主の館を出る準備をして集合場所に向かう事にしたのだ。
この後の集合場所はどこなのかを、シルフィーさん達に確認をしたところ、冒険者ギルドである事を教えてくれた。
それでロベルトさんに別れの挨拶をして、領主の館を出る時はわざわざ馬車を出してくれたのである。
もちろん豪華では、あるが普通の貴族が使う馬車であった。
その馬車に乗り込む際に、ロベルトさんより何故かすごく感謝され、止めには両手を握手しながら、俺にしか聞こえない様に声を掛けてきた。
「君になら、シルフィーのすべてを任せられる。・・・よろしく頼むな」
ロベルトは、このときユウマならシルフィーの婿候補に申し分なしと言う意味でお願いしてきたのだが、ユウマはそうとは知らず普通に護衛の事だろうと、簡単に返事をした。
「任せてください。絶対に護って見せますよ」
「ああ、頼む。この後もずっとな」
ロベルトさんは、やけに念を押してくるな。
だが今までの事があったから、よほど心配なのだろうと思い、改めて任せて下さいと返答をしておいたのだった。
冒険者ギルドまで領主の馬車でやってくると、何故か物々しい数の人と数台の馬車が集まっていた。
何故この様な事になっているのか、ちょうどレオンを見かけたので聞いてみようと近づいたら、その場所にギルマスのグラントも一緒にいたので聞いてみた。
すると今回は商隊の荷馬車と乗合馬車、そして貴族の馬車が一緒にシルフォードに向かう事になり、護衛の為騎士数名と冒険者数名が同行する事になった。
実際総勢60人前後で移動する事になったのである。
もちろんこの中には、アリアとメイリも含まれているのであった。
そして、出発の準備が整いトライアの街を出て、シルフォードに向け移動を開始するのであった。