65.どうも絶対絶命のピンチかな?
この一連の騒動が観戦席で起きているとわは、ユウマは知らずにこれまたすごい魔法を放ってきたなぁと思いながら、落ち着いて【真理眼】で目と前に展開されている魔法【火炎矢弾幕】の情報を見た。
すると半透明の薄青色のスクリーンに、火属性の中級火炎魔法の上位と説明があり、その下には広範囲にわたる攻撃魔法で防ぐには、同等以上の魔法か防御魔法が必要と表記していた。
とりあえず広範囲の攻撃魔法なら、近くで審判をしていたセバリオさんも危ないなと思い。
急いでセバリオの側に向かい、リスティが放とうとしている魔法に向けて手の平をかざした。 そして【風盾】の魔法を自分達の前面に、複数かける為に魔力を込めて詠唱した。
最初の【風盾】は上手くいき、ちょうどユウマ達の前方に、風の膜の様なものが出来た。
なので続けてその風の膜が出来た向こう側に、同じ様な感じで魔力を込め先程よりちょっと強く風の防護膜をイメージして魔法を詠唱した。するとその場所には想像していたものとは別で渦を巻いた風のカーテンの様なものができてしまった。
それから【風盾】の魔法をもう一度詠唱したと同時くらいに、以前シルフィー達を救い出した時みたいに目元が熱くなり、例の魔眼が発動しだした。
すると突然頭の中で、音声が鳴り響いた。
『ピロリン!魔眼の作用により風属性【風盾】の魔法が限界を突破。それと【聖光気】のスキルが発動したことにより、聖属性の上位防御魔法を取得。よって【聖光盾】を使用出来るようになりました。続けて・・・・!』
まだ頭の中で説明の続きをしていたが、取得説明は後で確認しようと無視をしたら音声も途中で消えた。
なので、さっそく覚えたての魔法の【聖光盾】を発動した。
その【聖光盾】が発動した後【火炎矢弾幕】が轟音と共に着弾しだした。
まずは最初にユウマが張った1枚目の【風盾】に全弾の3分の2が防げたが、やはり【火炎矢弾幕】強力なようで、すべてが防げなかった。
でもしかし2枚目の【風盾】で、すべての炎の矢が防げてしまった。
通常であれば初級の魔法である【風盾】では、ある程度防げてもすべて防ぐ事はできないはずなのだ。
だがこの時はどうもユウマの途方もない魔力と魔眼、そして【魔力操作】のスキルのおかげで、通常の【風盾】魔法よりも能力が引き出されたのと、それに伴い同じ【風盾】魔法を複数かけるという高難度の技術により、その魔法を数十倍にも威力をあげていた為だった。
だがしかし折角張った【聖光盾】は勿体無いなと思いながら、前方の爆炎を眺めていると、もう一枚あった【風盾】に干渉して爆炎をリスティの方に押しやりだした。
爆炎が【風盾】の風の影響で竜巻を起こし、炎の竜巻・・・火災旋風となり、リスティの方へと進路をとりゆっくりと動き移動しだした。
「あっ!やべぇ。このままじゃあいつ・・・死んじゃうかもしれない?」
周りから見たら、なんて事していると思われているだろう。 しかし実際は、流石に周りから見てもリスティが自業自得だろうと思われていたのだった。
最初の【風盾】に防がれた【火炎矢弾幕】の爆風と熱気でリスティは、実はダメージをかなり負っていた。
そのうえ自身の持つ魔力(MP)を使いきり、防ぐ手段が無い状態に陥って動けない様になっていたのだ。
その状況を確認したユウマは、後にいるセバリオさんに声を掛けた。
「セバリオさん、ここを動かないで下さいね。ここにいれば安全のはずですから」
執事のセバリオに、ここにいる様に言ってから行動を開始した。
まずリスティのいる方に【超加速】のスキルを使用して、火災旋風を避けるように回り込み、リスティの元に駆けだした。
「ユウマ様、何をする・・・!?」
セバリオが声を掛けようとした時には、既にそこにはユウマの姿は無く、その先の爆炎の中に消えて行く後ろ姿だけを目撃したのだった。
ユウマが、この行動を起こす前にも、観戦席にいたみんなが【火炎矢弾幕】をすべて防いだユウマを見てから驚いて、すごいと歓声を上げていた。
だが、どうも最初に防がれた爆風でリスティが負傷したのも目撃していたが、余りにも自業自得過ぎるだろうと言葉を漏らす者も複数いたようだ。
その中でロベルトも自業自得とはいえ、流石に甥っ子を死なせる訳には行かないので近くにいた使用人たちに、領主お抱えの治療師を呼びに行かせる様に指示を出したのだ。
そしてどうか馬鹿げた行為をした、甥っ子のリスティの命だけはお助け下さいと、神に祈りをささげていた。
それから現在の状態を確認する為に、先程の炎の竜巻が発生した場所を、見てみると何故かその場所へユウマが物凄い速さで、リスティのそばまで向かっている姿を目撃したのだった。