63.リスティを怒らせました?
しかし次々と攻撃してくるリスティの攻撃を、軽々と考え事をしながらユウマは避けていた。
その動作を間近で見ていた執事のセバリオは、鮮やかにそして無駄の無い動きで避け続けるユウマに、凄く驚き言葉を詰らせていた。
何度か長剣を振り回していたリスティだったが、段々息が上がり動きも若干鈍くなってきた。
そしてユウマは、その姿を見てこう思った。
『そりゃ息も上がるだろう。何せ彼の着ている鎧は、とても重そうなフルプレートで重騎士が着る様な頑丈な鎧だ。しかも役に立ちそうもない大盾を構え。そのうえ彼の身の丈にあってない長剣を振り回しているからな』
そう思ってからリスティを馬鹿にしたように声をかけた。
「あのう、疲れません。そんなに重そうな鎧を着込んで戦って。これって訓練ですよね?あっ、そう言えば決闘て言ってましたっけ?」
「きっ・・貴様!何処まで愚弄する気だ。こっ、殺してやる」
完全に頭に血がのぼったリスティが、ヒステリックな言葉を吐いた。
「あっ、やべ、怒らせすぎた。ちょっと馬鹿にしすぎたかな?」
この様な会話をする間にも、所構わず剣を振り回すリスティだった。
だが、その殆どが雑でかわしやすいので、余裕でかわし続けるユウマであった。
数分後リスティは、疲れてはて完全に動けなくなり長剣を、杖代わりに立て肩で息をしてこちらを睨みつけていた。
そして、息を整えてから重いフルプレートの鎧をすべて脱ぎ捨て、再度構えてこちらを睨み付けてきた。
先程とは打って変わって真剣な顔立ちになり。
その姿のリスティを見たユウマは、考えて真面目に答えた。
「すみません。少し悪ふざけが過ぎましたね」
ユウマはそう言って自分も本気を出す為に、気合を入れ合気道の構え右半身の構えを取った。
そして、その構えのままリスティに言葉を掛けた。
「ここから本気でいきます。貴方の攻撃に答えますから覚悟してくださいね」
そう言葉を掛け真剣な目でリスティを睨みつけた。
このユウマの視線に少し及び腰に成ったが、リスティは頭を振って構えなおして息を呑んだ。
両者ともに構えた状態でにらみ合いをしていたが、最初に耐え切れずに動き出したのはリスティの方だった。
彼は自分の持っている剣を思いっきり振り上げ、上段から振り下ろす行動に出た。
正直で素直な攻撃だったが、何故か雑念を感じたユウマだったが、その正体は直ぐに解った。
なにせ表情をニヤつかせながら、単調な攻撃と思わせ卑劣な罠を仕掛けてきたのだった。
せっかくさっきの行動と真剣な顔を見て、ユウマは見直し構えを取ったのに。
その行為を観戦席でシルフィーたちと領主のロベルトも見ているのに。
ここで変な事を企んでたと解ったら、みんなさぞ残念がるだろうな。
ユウマはそう思い考えていたのだった。
そして、その卑劣な罠とは剣で攻撃しながら、最終的に魔法を放って来たのだ。
この時リスティはユウマが感じたとおり、馬鹿な考えを起こして、ユウマに対して騙し討ちをしようとしていた。
『ふふっ!馬鹿な庶民め、貴様は僕の剣の錆びにしてくれる。まずは閃光を放ち目くらましてやる。それで慌てたところをそのまま切り捨ててくれよう。ふふふっ・・』
などと考えながら顔をニヤ付かせ剣を振り下ろしていたのだ。
まだ成功もしていないのに、早々と勝った気でいるようだった。
それで光属性魔法の【閃光】を発動して、もう少し曳きつけて放とうとしていた。それと器用にも炎系の魔法を剣に纏わせて振り下ろしている。
この光景は、観戦している者達とユウマには、見えない様に発動しているのだったが、何故かユウマには魔法に種類と剣に纏った炎が見えていた。
これは恐らく、冒険者ギルドで行なった戦闘の時に、魔法を発動する時に見えた光、その魔法陣の光が見えたので解ったのだった。それを確認できるのは恐らく魔導師の能力のおかげだろう。
そしてユウマは、剣での攻撃と光魔法を発動している状態のリスティを見てから、どうしようかと、振り下ろしてくる剣の攻撃に、視線を向けながら考えていたのだった。