61.領主の甥っ子リスティ登場?
まあ、確かに最初はそうだろうね。
まずはここの主に挨拶をして、それから食事会になるのが普通だろう。
そして、領主の執務室の前までやって来て、扉を《コンコン》と執事のセバリオさんがノックして声をかけた。
「旦那様、お客様のユウマ様とレーネ様をお連れいたしました」
すると内側より扉を開けられて、2人のメイドが姿をみせ中へどうぞと進められた。
そして、レーネさんの後ろについて室内に入室すると中には、シルフィーと1人のダンディーな男性がソファーに座っていた。
2人は話をしていたようだが、自分達が中に入って来ると、話を中断してこちらに視線を向けてから2人とも立ち上がった。
「ようこそ、おいでになりました。私はここトライアの領主をやっているロベルト・フィア・トライアと申します。一応シルフィーの叔父になります。よろしく」
「あっ、はい、自己紹介を、ありがとうございます。俺は、あっ、いえ、自分は、ユウマと申すものです。一応は冒険者をしておりますです。はい・・・」
ユウマは、意識はしてなかったのだが、どう話していいものか緊張して、ギクシャクの状態で答えてしまった。
「はっはっは、そんなに固くならなくてもいいよ。領主としてでは無く・・・いや、そうともいえないが、シルフィーの叔父としても、君に興味があってね。それで話をしたかったのだ。だからもっと砕けた感じでいいよ」
ユウマはここの主人である領主ロベルトが、敬語とか慣れない事をしたくても問題ないと言ってくれたので、少し安心しているとシルフィーが笑顔で話し掛けてきた。
「うふふ、そうですよユウマ様。叔父様が言うように、そんなにカチコチじゃ、お話が楽しくありませんよ」
シルフィーからそう言われ肩の力を抜いて、シルフィーに進められその横に座り、ユウマの反対側の横にレーネが腰を下ろした。そして、ここに居る人達で楽しく話をした。
話した内容としては、これまでの経緯と魔獣との戦闘から不振な奴等との戦いなど、そして、このトライアであった事などを話した。
話をしだしある程度時間が過ぎたころ、突然この部屋、執務室の扉が勢い良く開け放たれた。
そして、痛々しく恥ずかしい派手な格好をした男性が入ってきて声をあげた。
「君かね、庶民での冒険者でユウマと言うのは、何とも冴えない顔だねぇ。それに格好が普通だね」
「こらっリスティ。お客様に失礼だろう」
「いえいえ、すみません叔父上。庶民を見たらつい癖で色々言いたくなるのですよ」
なるほど、彼が例の派手馬車の持ち主にして領主様の甥。それでしかもシルフィーに、求婚してきた人か。
「君かい、僕の婚約者であるシルフィーさんの命の恩人は、なんでもすごく強いんだってね。僕も強いよ、なにせメリウェルにある魔導騎士学校を上位で卒業して、現役騎士団をものの数秒で倒した事があるからね」
リスティがシルフィーを婚約者と言った時、ユウマは一瞬すごい悪寒と殺気を両隣から感じていた。
その殺気を放っていた2人に小声で順番に尋ねてみた。
「レーネさん、彼の言ってる事はホントですか?」
「いいえ、あんなの彼の妄想です。頭がおかしいのですよ」
まず、最初にレーネに聞くと凄い殺気で、何故か小声ではあったが、すごく怒っている事は良く解った。
続いてシルフィーに聞いてみた。
「ユウマ様みたいに、お優しく強い方でなくては、私はなびきません。それに・・・」
などとユウマの目をジーと見て答えてきたので、それとなく目をそらした。
しかしその行動が気にくわなかったのか、突然リステーが怒りだした。
「面白いこの僕が、強い所を見せてやる。決闘だ!お前っ、直ぐに訓練場に来い」
などと言って顔を赤くして執務室を出ていった。