59.トライアでの始めての朝?
この世界に来てから初めてまともな寝床・・・とは言えないが久々ベッドで朝まで寝られる。今までは野営で中途半端な眠りしか取れ無かった。
何故かと言うと慣れない地でもあるが、交代で騎士達が見張りをしているのに、俺がのんきに寝ている訳にはいかないので、ここに来るまでの間その見張りを手伝っていた。
それで今日はトライアの宿で、朝までぐっすり寝れる。そして、深い眠りに落ち朝がやって来た。
深い眠りに落ちていたが《コンコン》とドアをノックする音に気が付き、ユウマ意識が覚醒して目を覚ました。
「ふっ、ふわーぁ、どなた・・ですか?」
欠伸をしつつ、ドアの向こうにいるであろう人に声を掛けた。
「ユウマ様、朝早くすいません、レーネです。少しよろしいでしょうか?」
ユウマ達の泊まっていた部屋を、訊ねて来たのはどうやらレーネさんだった。
「ふぁーい、ちょっと、待っててくださいね。今開けますから」
そう言いベッドから起き上がろうとすると、何時の間に潜り込んだのか未菜が俺に抱き付いて寝ていた。
『この娘は、また何時の間に潜りこんだのやら?』
そう思い揺さぶって起そうと小声で声を掛けた。
「おい、未菜起きろよ。ちょっとお客様が来てるから放してくれ」
「ううやぁあ、もうちょっと寝てるのぉ」
何故か訳が解らない事を言ったので、俺の使っていた枕を渡すとそれを抱えたまま、またベッドに潜り込んだ。
その光景をみつつ、ドアの前に行きレーネを部屋の中に招きいれ様としたらその場で語り掛けてきた。
「あっ、ユウマ様。ホントに朝早くに申し訳ありません。ちょっと問題がありまして・・・。実はここの領主様がユウマ様に是非会わせて欲しいと申されまして、それで一緒に朝食をとの事になりました。それですいませんが御一緒に来て頂けませんでしょうか?」
「えっ、なんで?それは断る事は・・・出来ない、みたいですね」
レーネに言われたので断ろうとしたら、無言で首を横に振り、その後喋り掛けて来た。
「いえ、無理にはとは言いませんが、ただシルフィーがちょっとですね。目を潤ませてユウマ様を呼んで来てと申されまして・・・」
「なんで、どうしてシルフィーさんがそんな事を?」
訳が解らないので、理由を聞いてみるとなんとも理不尽な答えが返ってきた。
「あのその実は、領主様の甥に当たる男性がここに来られていました。その方がシルフィーに一目惚れされまして、何故か急に求婚をせまってきてまして、その際にシルフィーがユウマ様の事をお話しになられてから、おかしな流れになってしまって・・・・・、ホントに申し訳ありません」
ようやくするとこう言う話らしい、まず昨日ここトライアを納めている領主に挨拶にいったらしい。
普段は挨拶だけで済むはずが、実はここの領主様は、シルフィーの叔父に当たる方であり、ここに来るまでの道中に、危険な事が多々あった事を心配して一晩だけでもこの領主の館に滞在するように言われ、断る事が出来ずしょうがなく滞在したそうだ。
だが、不運にもここにやって来ていた領主の甥である青年が、何故かシルフィーに一目惚れして、結婚をせまってきて返事も待たずに話を進め出したそうだ。
それでシルフィーは、何故か断る口実でユウマの名を出し、出会いを美化して説明したそうだ。するとその話しを聞いた領主はユウマに興味を持ち、甥の方はユウマを説得してシルフィーを自分の物にするので、ぜひとも会いたいと言う流れになったそうなのだ。
なんで、そんな事になってんだと、ユウマは諦め半分で話しを進め答えた。
「解りました一緒に行きます。ただ、朝食を一緒に取る代わりに、ちゃんと必要に応じて助け舟を出してくださいよ。俺、礼儀とか解りませんから?それにあくまで振りですからね」
「ええ、その点は十分承知しています。それにご心配なくちゃんと、フォローもいたしますので」
ユウマはその言葉を聞き、観念して領主の館に同行する事を約束した。
「未菜、どうせ起きて聞いてたんだろ。そう言う事だからちょっと行ってくるよ」
「ふぁぁい、私はアリアちゃん達と、一緒に過ごすからご心配なく。いってらっはぁーい。ぐぅぅぅ」
とりあえず一言未菜の声を掛けて、レーネさんに付いてヘアを出て行った。
しかし、未菜は半分寝ぼけて答えていたが、俺が出て行った後また寝るつもりなら部屋の施錠は、どうするつもりなんだと思っていると《ガチャリ》と出てきた部屋から施錠音が聞こえてきた。