48.戦闘終了?
これで勝利だろうと思って、グラントは気を抜き地に伏せたユウマに向けて話しかけた。
「はあ、はあどうだ。ふう、あんちゃん。はあ、はあ、参っ・・?」
グラントの肩で息をしなが喋っている途中で、ユウマがグラントの足を払いのけ、その場で転ばして、瞬時に後方に飛び退いた。
「おっさん!油断しすぎ、そんで気の抜きすぎだぜ」
「おいおい、はあ、はあ、マジかよさっきの攻撃当たったよな?」
「うん?ああ、避けられないと思って木刀の柄頭で受け止めたんだ。でも、衝撃と勢いで地面にしこたま身体を打ちつけた。ホント!一瞬目の前が真っ白になったぞ」
「マジか、あの一瞬でそんな事を?畜生っ今度こそ・・・」
会話を終らせ、また戦闘を再開させた。
そんなことが起きて、そろそろグラントとユウマの決着がつきそうになってきている。
一時期グラント優勢と思われていたが、ユウマが木刀による剣戟から魔法を使用して、反撃が行なわれだして、それから形勢が逆転しだしていた。
それからユウマが一旦間合いを取り、グラントに話しかけた。
「おっさん、今から成功するか解らんが、俺の必殺技の一つを喰らってみるか?」
「ほう、なら打ってこいよあんちゃん。いや、ユウマ・・・」
「なら、いくぜ!月下水鏡、不知火まいるっ」
ユウマが今から行なう剣の技を、口に出し腰を落とし霞の構えを取り、静かに気合を込めた。
それから一歩踏み出したとともに、恐らく常人には一瞬消えたと思うほどのスピードで相手の横をすれ違った。
そしてすれ違いざまに、目には見えないほどの剣戟を繰り出し、最後は静かに歩き木刀を腰に収めた。それと同時に《バキバキ、ゴッバン》と木刀が粉砕してしまった。
「うっ、うそだろ、その技は、グランドスラッシュじゃねぇか。かはっ」
グラントは最後にその技の名をグランドクラッシュと言ってから《ドスン》と崩れ落ちた。
このユウマの最後の攻撃を見ていた面々、特にフィリア以外は、なにが起きたかが全然解らず、ぽかんと口を開けてから何がどうなったの、どういう事とみんなフィリアの方を見ていた。
フィリアの方もユウマの最後の攻撃を見て一瞬驚いたが、少女達がこちらを見ていたのに気が付き。
「ふう、どうやら決着がついたようね、まさか最後にグランドスラッシュいえ、恐らく違うわね。攻撃を当てる時の動きは全然違ってたもの、でもすごく似た技だったわね?でも、まさかグラントに勝ってしますなんて思ってもいなかったわ」
決着のついたユウマは、倒れたグラントの介抱を行い、意識を取り戻したグラントに【軽度治療】の回復魔法をかけてから、肩を貸して話しながらみんなのいる観客席のところまで歩いていったのである。
「いやぁ、参った参ったぁ、まさか負けるとは、思わなんだ。次は負けんからな、あんちゃん」
「いえ、俺はやりたくないです。これ以上やったら自分がいやになります」
「うん?どうしてだ?」
「はい、戦ってて思ったんですけど。その俺も戦いが楽しくてしょうがなくなって、途中から止められなくなって、自分が自分じゃなくなりそうで怖かったんですよ」
「ははは、いいじゃないか、バトルジャンキー。俺は大歓迎だ!」
親指を立てて《にかっ》とすがすがしい笑顔をグラントは、ユウマに向けた。
そのままグラントとユウマは、2人で格闘技場から観客席に行く階段を上がって行って、まずグラントにフィリアが近づいてからひと言、言い放った。
「なっさけないわね。グラント!」
「いやはや、面目ない」
「でどうだった。あの子?」
「ありゃ、本物の化け物だね。しかもまだまだ強くなる。あのデータで間違いがない」
フィリアとグラントがこそこそ話してユウマはどうだったかを確認し合っていた。
フィリアはグラントと話した後、全員がそろったのを確認してから、ユウマに向けて声をかけた。
「ねえ、ユウマ。お願いがあるのだけど、私とも戦ってみない?」
「はあ、いやいや、もう勘弁してください。もう疲れましたよ」
「あっそう、ちょっと残念ね。まあ、いつか私とも戦ってね」
ホントに残念そうに答えてから、何時かはと言ってウインクしてお願いしてきた。
そして、ユウマはある事を思い出しフリィアに向けて尋ねた。
「すいません。実はいまさらなんですけど、あなたのお名前を教えて貰えませんか?」
申し訳ないように、フィリアに向けてお願いした。
「あら、そういえば、あなたに名乗るの忘れてたわね。私の名はフィリア・フィーリスよろしくね、ユウマ」
ユウマに自分の名を語ったフィリアは、またウインクをして挨拶をしてきた。
それからグラントが、そろそろ元の部屋に戻るかと言って、この闘技場に来た時に使った、水晶に手を置き「転送」と言葉をかけた。
すると闘技場に飛ばされる前にいたギルマスの部屋、マスタールームの室内の扉の前にみんな立っていた。
「ちょっとみんな、すごい汚れてるわね。特にグラントとユウマの汚れ方が尋常じゃないわね。ばばっちぃわね」
フィリアが全員を見渡してそう言葉をかけて来た。