44.ユウマの戦闘テスト?
ユウマとグラントがお互い構えた状態で相手の初手を窺って動かないで、いや動けないでいると、1人の少女が目を覚ました。
「ううん、私達どうなったの?」
最初に目を覚ましたのは、比較的ダメージの少なかったアリアが目を覚まし、状況が把握できずに周りを見てから、格闘技場の方に目をやった。
「あっ、ユウ兄が戦ってる?あれ、でも動いてない。どうして?・・・ていうより私達どうなったの?」
アリアが格闘技場にいるユウマと先ほどみんなと一緒に戦っていたグラントを確認したら、今度はユウマが戦っている事に気が付いたが、どうも動いてないので何故と思って、自分達がどうなったのかに気が付き声をだした。
「ええ、戦闘が始まってかれこれ15メリテは動いていないわ。それにあなた達は気絶してグラントに負けたの」
アリアの独り言に答えるように、後ろにいた狐人の幼女がそう言葉に出した。
アリアは自分の知らない声に驚き振り返り確認すると、そこに先程ギルマスの部屋でグラントと一緒にいた女性、狐人の幼女がいるのに気が付いた。
そして、自分の横で気絶して寝かされているメイリと未菜の、2人がいるのにも気が付いた。
アリアが2人を見てから、何故ここに自分たちがと思って頭をかかげて考えていると、狐人の幼女がアリアに向けてこう言った。
「全員が目を覚ましたら、色々と説明してあげるわ。それまで彼達の戦いを見ていなさい」
そのころ、その動かないユウマとグラントは、お互いに構えた状態で話をしていた。
「おいおい、あんちゃん何故かかって来ない?そろそろかかって来たらどうだ!」
「ええ、攻撃したいなら、そちらからどうぞ」
2人は何気ない話をしているが、お互い何もしていないのに汗をかいて相手の動きを窺っている。
それで、この均衡が崩れる瞬間が訪れた。何故かと言うとお互い動かず汗を掻いていたがユウマの方は運悪くその汗が目に入り一瞬目を閉じてしまい、その瞬間グラントが懐に入って来られてしまった。
懐に入られた瞬間、ユウマはとっさに後方に飛び退き、グラントの攻撃、チャージアタックを寸前で交わした。
だが、風圧いや、チャージアタックの衝撃で、かなり遠くまで飛ばされてしまった。
実はこの戦闘でユウマが飛ばされるちょっと前に未菜が目を覚まし格闘技場の方を見た時に、ちょうどユウマにグラントの攻撃が当たったように見え、実際はユウマが自分から後方に跳んだのだが、勢い良く飛ばされたので攻撃を喰らったように見えていた。
その光景を見ていた2人は、ユウマがやられたーと思いそれぞれ声を出していた。
「ああ、あっ!ユウ兄ふっ飛ばされちゃった」
「えっ、ミナちゃんなんでそんなに落ち着いてるの?ユウ兄、吹き飛ばされちゃったよ」
未菜がユウマが攻撃を喰らって、吹き飛ばされたと思い落ち着いた声でかたり、アリアはそんなミナを見て不思議に思っていた。
ちょうどその後ぐらいに、メイリが目を覚ましてアリア達を見てから『どうしたの?』と首をかかげて格闘技場の方に目をやった。するとメイリ達のいる観客席のすぐ下まで飛ばされていたユウマに、気が付き声をかけた。
「ユウ兄様!」
ユウマはメイリの声に気が付き、そちらの方を見てから語りかけた。
「よっ!みんな目が覚めたか?」
「はい、ユウ兄様は・・・なにを?」
「ユウ兄!何やってんのあんなの喰らって」
「ん?俺は喰らって無いぞ。まあ、いいや、おとなしく観戦してろよ」
「えっ、だって・・・・えっ?どういうこと?」
メイリの方はユウマがここまで飛ばされたとは知らず、また未菜はユウマが攻撃を喰らったと思って声をかけたが、そのユウマは何事も無いようにメイリと会話して、未菜の方には攻撃は喰らって無いとだけ答えた。
そう返事をして、またグラントとの方を向き、二人に手を挙げてから声をかけた。
「じゃ、また行ってくるよ」
ユウマは、そう声をかけ全力でグラントの方に向かって駆けて行った。
常人には一瞬消えた様なスピードで、今までそこにいたはずのユウマが、突風とともに消えたユウマを見たメイリは、何が起こったか解らず目を《パチクリ》とさせて、後ろを向き声をかけた。
「ねぇねぇ、アリアちゃん。ミナちゃん。ユウ兄様、すっごく速いよね。すごいよね」
メイリが嬉しそうに2人に話しかけていた。
「へっ?えっ、ユウ兄って・・・やられたんじゃないの?」
アリアは、先程吹き飛ばされた辺りから目を逸らしていたため、先程ピンピンしていたユウマの現状を知らなかった。
「当然だよメイリ。あれでも私んとこのお兄ちゃんなんだから。ユウ兄は」
そう、このときメイリの語りかけに、何気に未菜はユウマは自分の身内である事をアピールしていた。だがメイリとアリアに関してはその部分は余り気にしてなかった。
しかしこのときメイリは、ユウマがグラントに攻撃をされたこと事態は全く見ておらず、目が覚めて自分達の居るすぐ下に、平然と立っているユウマの姿を見たので、何でアリアが《おろおろ》して、未菜が頬を膨らませていたのかが、まったく解っていなかった。
現在闘技場の真ん中では、グラントが自分の前までやって来た、ユウマを見てから声をかけた。
「ほう、あの攻撃を一瞬で判断して、わざわざ後方に飛び退くとはな、たいしたもんだ」
「いやいや、てかっ、何ですか?あの衝撃波は、ちょっと後ろに避けるはずが、端の方まで飛ばすなんて?普通じゃ無いですよ。まったく」
「ふん、俺としてはな。あんちゃんを壁に叩き付けたかったんだがな。そこまで吹き飛ばんかったのが悔しいがな」
《ニヤッ》と、いやらしい笑みを浮かべ言い放っていた。
しかしユウマの方もグラントに、あんたの攻撃どんだけの威力なんだとお互い話していた。
「なら、あんちゃんよ。今からはお互い探り合い無しの、戦闘をしようじゃないか、どうだい?」
「いやぁ、痛いのは嫌なんですけどね。まあしょうがないですよね」
「よっしゃ、なら第二ラウンド開始といこうや」
グラントが大きな声で第二ラウンドを始めようと、声に出してから気を練り上げるように気合を入れだした。
このグラントの行為を見て、何といえない気配に《ピリピリ》と肌に感じてから鳥肌がたっていた。