3.女神さまの説明と残念な娘・・・?
女神フィーナは、視線をこちらに向けうなずいてから話を進めた。
「はい、確かに8人います。どうも1人は召喚の時に巻き込まれてしまい、ここに一緒に来ているようなのです。 なので、その人には個人的に確認して、もし希望されるのであれば、特別に地球へと帰還させてもらいます。 他の方達は申し訳ありませんが、今後の未来にどの様な影響が出るか分かりません。なので申し訳ありませんが地球への帰還は、させられません」
そう説明したとたんに全員が顔を上げ、フィーナ様を見てわれ先にと確認しだしたのである。
まずは最初にOL風の女性が両手をあげて慌てて尋ねた。
「ねっ、ねっ、巻き込まれたのは、私でしょ、私、死んでないのでしょ。だから早く地球に戻して帰してよ。おねがい」
次にオロオロとしていた少年が、浮遊しているフィーナ様の下付近に行き、土下座した状態で見上げて訴えかけた。
「ぼっ、僕なんだろっ。あなた女神様なら生き返らせてくれよ。もう悪いことしませんから・・・お願いします。助けてください」
何故か一生懸命、頭を地面に擦り付け泣きながら、謝罪して頼み込んでいた。
しかし、この少年は死んだかどうか解らないのに、生き返らせてとお願いするのは、何故だろうとユウマを含めた少女達3人が思っていた。
すると女神フィーナは、OL風の女性と少年達に視線を向けて、首を左右に振って答えた。
「残念ですが、大島 愛実さん、あなたは先程の事故では運良く無傷ですが、神界、ここでの未来予見で、自動車で事故を起こして死んでしまう予定でした。 しかし、なぜか未来予見での歴史が著しく変わりました。 なので、今のあなたには、チャントした肉体と魂のつながりがあり存在しています。」
愛美と呼ばれたOL風の女性の目を見て解り易く説明をしていた。
そして続けて少年達の方に身体を向けて2人の少年を交互に見てから続けて話しかけた。
「そして次に飯田 隆さんと鎧塚 航さん、あなた達はすでに事故で死んでいます。実を言うと未来予見での大災害の発端であり、すべての原因はあなた達なのです。でも今回の事故はほんの小さな事故ですんでいます。もし条件が揃っていたら大災害になって大変な事になっていました。それにもうあなた達には、肉体自体がありません。今現在は辛うじて魂のみで存在しています、なので、特にあなた達はあきらめてください」
その説明を聞いた大柄な少年の方が、あっけらかんとした表情で語りかけた。
「へっ、死んだのか、なら地球に戻ってもつまんねぇや、俺はチート能力をもらって異世界に行くぜ。隆!おめーも、一緒に来い」
嫌がっている少年の首に腕を回した。
なるほど、ガタイの良い少年が飯田 隆と言う名で、鎧塚 航と言う名の少年が、先程土下座をしていた子のようだ。
どうやら2人の少年は、もう死んでいるようだ。 しかもOL風の女性以外で、俺を含めた5人のうち1人だけがどうも巻き込まれて、この場所にいるみたいだな。しっかし、巻き込まれた子は結構運が無いよな。 まあ、地球に戻してもらえるからラッキーかな。
自分では無いだろうと思いながら、ユウマがそう考えていた。
すると、未菜ちゃんと結愛ちゃんが俺の方を見上げて、悲しそうに語りかけてきた。
「「ユウ兄ぃ、もう、家に帰れないのぉ?」」
不安げにユウマの服の裾を掴み、涙目でそう尋ねてきた。
そして唯香ちゃんは、震えながら俺の腕にしがみ付き、消え入りそうな声で語ってきた。
「ユ、ユウ兄さま、私たちどうなるのですか?これからなにが起きるのですか?」
双子と同じ様に目に涙をためて不安をあらわにしていた。
そして、少し離れたところから、こちらに近づいて来ていた後輩の鈴香ちゃんが、俺を見て近付いてから・・・・。
なぜか、ニコニコと笑顔で俺の前に来て、俺の両肩を掴み目を見つめて話しかけてきた。
「先輩っ!帰れないのは非常ぉぉぉに残念だけど、異世界だって、チートだよぉ。ラノベの主人公みたいだよぉ♪」
目をキラキラと輝かしていた。 ・・・何がそんなに、うれしいのだろうか?
それにまだ、1人地球に戻れ帰れるかもしれないのに? それが、もしかしたら鈴香ちゃんなのかもしれないのに? それにこの子・・・こんなに残念な娘だったか?
俺が呆れ顔で鈴香ちゃんを見ていると、俺にしがみ付いていた3人娘は、そんな鈴香ちゃんの顔を凝視して唖然としてから、「「「プッ」」」と、3人一斉に吹き出し笑顔になった。
そして、一瞬にして暗い雰囲気になっていた3人娘達に、笑顔が戻ってきた。
そう言えば、鈴香ちゃんは昔から明るい娘で、回りの人達や色々なグループなどでは、ムードメーカー的な存在だったなと、ユウマは思っていた。
だが実際は、先程ユウマの肩を掴んでいる時に、彼女の手が若干震えいるのと、目にもうっすらと涙を浮かべていたのを、俺は見逃さなかった。
おそらくこの娘達を不安がらせない様に、とっさに出た言葉だったのだろう。なら後で出来るだけフォローをしてやろうと、ユウマは思っていたが? ・・・その考えは直ぐに消え失せた、なにせこの後の行動と台詞を聞いたら・・・そんな考えは消え失せてしまっていた。 そして盛大な溜息を吐いてしまった。
「ねえ!ねー!結愛、私たちF・O・Bみたいな異世界にいけるみたいだよ。 そして固有スキルをもらってチートで冒険して、そんでモンスター倒しまくって無双状態に出きるかなぁ、結愛!私達どんなスキルで、何をもらえるのかな。もし選んで良いのなら何が良いかなぁ。ねっ!ねっ!ねっ」
結愛ちゃんに抱きつき、目をキラキラと輝かせウンウンとうなりながら、必死に聞いている。
はぁっ、さすがにこの姿を見たら、みんなドン引きするよな。 てかもう既にドン引きしているし。
そう思いつつ他の2人に視線をやると、「「うわぁぁぁ、駄目だこりゃ」」と小声で言葉にだしていた。
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そして、真面目な顔で結愛ちゃんが、その抱きついている鈴香ちゃんに語りかけた。
「リン姉ぇ、こういう状況の時に、そう言う事はぁ・・・」
少し表情を強張らせていたが、徐々に表情を緩め《ニヘラ》とにやけた。
「ウヘヘ、でも、ウ・フ・フ、冒険者になって無双・・・《ニヤァ》いいですねその言葉は、ウヘヘ、それにいいですね固有スキルは、何を貰えるですかね。選べるなら創造魔法なんていいですねぇ。ウヘヘ・・・」
不適な笑みを浮かべながら、抱き付いていた鈴香ちゃんといつの間にか離れ、一緒に手をつなぎぴょんぴょんと跳ね回りだし喜んでいた。
ウワー、残念な娘が2人に増えたよ。
さらにドン引きした状態で、ぴょんぴょんと跳ね回る、2人に冷たい視線をユウマ達がおくっていた。
すると、そんな残念な状態の子を見ながら、唯香ちゃんと未菜ちゃんが溜息を吐きながら説明してくれた。
「はぁー、あの2人は最近はやってるF・O・BのVRゲームと小説に、はまってるんです」
「それに、元々から同じ同人誌サークルグループに入っているし。もう一種の病気みたいに完全にはまり込んでるのです。もう重症で手が付けられないです」
その2人が最後に手を額に置いて首を左右に振り残念がっていた。
それでその5人の状況を、微笑ましく見守っていた女神フィーナ様が、コホンと声に出して尋ねてきた。
「あのぉ、そろそろ続き話してもよろしいですか?」
俺達の近くまで降りてきた女神フィーナ様が、笑顔でそう語ったのであった。