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どうしよう

作者: 秋月真氷

ジャンルに迷いました。

そのため、ジャンルにだまされたとおっしゃる方もいるかな。

まずいなあ。


僕はぼんやりと思った。


僕の目の前には倒れた女の人。

僕の足元には大量の血だまり。


こんなつもりじゃ無かったんだけどなあ。


息をしていない体と、それを見下ろす僕。

女の人は、僕の恋人だった人な訳で。

まあ、別れ話がこじれてこうなった訳だけど。


弱ったなあ、死体の処理なんか出来ないよ、きっと。


僕はこの人をまだ愛している訳で。

そして、ずっと一緒にいたいと思ってしまう訳で。

でも、それが出来ない事も理解している訳で。


死体の胸には包丁がざっくり刺さっていて。

その傍らには返り血にまみれた人がいるだけで。

この状況を見れば10人中10人が何があったかわかってしまう。


早く、コレの処理をしないとなあ…

疑われるしなあ。

まあ、弾みとは言え、人を殺した訳だけど。


死体と僕の目が合った。

見えているはず無いのに、その表情はどこか恨めしそうで。

僕に対して、怒っている様にも見えた。


この表情は嫌だなあ。


そう思うけど、今更だし。

死体の表情なんて、変えられる訳じゃないし。


それより、本当にどうしよう。

いつまでもこうしている訳にもいかないなあ…


考えていても、生き返る訳じゃないしなあ。

でも、どうやって処理しよう。


細かく切り刻んで捨てる?

いやいや、途中で刃物がダメになる。

仮に切り刻めたとして、ばらばらに捨てなきゃすぐにばれる。


人の形のまま捨てる?

うーん、死体って重そうだし、運ぶの面倒だなあ。

そもそも運んでいる最中に見つかるよ、絶対。


燃やして捨てる?

現実味がないなあ、どこで燃やすのさ。

人間を燃やすのって、それなりの火力が必要そうだし。


自殺した事にでもする?

それも無理、どう見ても他殺だし。

ケガは無いから正当防衛なんて主張できる状況じゃないよ。


第一発見者になりきってみる?

でも、真っ先に疑われるだろうなぁ。

そうなったら隠し通せるとは思えないよ。


ああ、どうしよう。

本当に思い浮かばない。

僕ってやっぱり、犯罪者に向いていないのかあ。


目を覚ましてくれないかなぁ。


ふと、彼女の方を見る。

彼女が目を覚ましたら、僕もこんなに煩わされずに済むのに。


…いや、それは無いか。


死体はどんどん硬くなっていくし。

血だまりはどんどん固まっていくし。

後始末がどんどん面倒になっていくし。


早く行動しないといけないんだけどなあ…


派手に喧嘩してたから、近所の人が通報しちゃったかも知れないし。

そうしたらきっと警察が来るだろうし。

それでもって警察はきっと彼女を連れて行ってしまうだろうし。


困ったなあ。

彼女と離れたくないんだけどなあ。


思いながら、もう一度死体に目を向ける。

濁った瞳でこっちを見ている。


そんな目で見ないで欲しいなぁ。

もし君が僕の立場にいたら、何かいい案でも浮かんだのかい?

それも無いだろう?

そもそも、君が死んでしまった事が原因なんだよ?

だからこうやって困っているんじゃないか。


…まあ、そう思ったところでどうしようもない訳だけど。


ああ、パトカーのサイレンが聞こえてきた。

僕は間に合わなかったんだ。

きっと警察官は、喧嘩を止めに来たんだろうね。

まあ、手遅れな訳だけど。


警察官が呼び鈴を鳴らす。

でも、僕は彼らを入れてやらない。


無粋だなぁ。もうちょっと待ってよ。

彼女との最後の別れの時なんだから。


僕はそっと、彼女に口づけをした。

体温なんて感じられない、僕の独りよがりな口づけ。

体温が感じられないのは、当然なんだけど。


警察官が、乱暴に扉を叩き始める。

でもまだ、入れてあげない。

入ってくるのは時間の問題かなあ。


そういう訳だから、もうお別れだね。

別れるのは寂しいけど、君の人生を僕の物に出来たと考えれば、満足かな。

それじゃあ…


さようなら、愛しい人。

守ってあげられなくて…ごめんね?


…………………


踏み込んだ時、部屋の中は既に固化しつつある血の海だった。


むせ返るような血の臭い。

そこにいたのは一組の男女。


1人は死体、1人は加害者。


別れ話がこじれての犯行だったらしい。

つい、かっとなって包丁で刺したと言う。

まさかそれが、心臓に達してしまうとも思わずに。


被害者の傍らに呆然と立ち尽くしていた加害者を緊急逮捕。

加害者は泣いていたと言う。

泣いて、謝っていたと。


ごめんなさい、ごめんなさい。

殺すつもりじゃなかった。

これからの一生を、あなたのために償うから。

あなたの一生を奪ってしまったけど。


血にまみれた手で顔を覆いながら、そう言っていたと言う。


しきりに唇をいじり。

血を吸って重くなってしまった髪を振り乱して。


警官は…泣きじゃくる「彼女」に手錠をかけ、その場を後にする。


そしてその様子を、男の死体が、濁った瞳で見つめていた。




…守ってあげられなくて、ごめんね?

はじめまして。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

わかりにくい話になってしまいました。

結局のところ、男の方が死んでいた、というオチ…のつもりです。


何しろ初の小説なので、どんなものかもわかりませんが、ご意見等頂けたら幸いです。


秋月真氷・拝

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― 新着の感想 ―
[一言] えぇ〜、叙述トリックですね。オチでアッと言わせられるのは大好きです。新鮮な感動をありがとう。  ちょっと疑問に思ったのですが『僕』=殺された男の幽霊なんでしょうか?そうじゃないと矛盾する箇所…
[一言]  こんばんは、評価する事の難しさを身に染みて感じている売国有罪という者です。僭越ながら感想を。  文体というか「僕」の口癖に関しては前の方が仰ってるので割愛させていただくとして、気になった…
[一言] どーも、魂の双子、辰巳です。 作品評価はまあまあ、普通の星3つ。 理由は、まあご自身も仰っている通り、ホラーでは無いと思ったからです。 「〜な訳で」とか、やたらと「訳」が多用されていたのは…
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