表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

#5 ハプニング

 劇も中盤。それまでは、全く差し支えることなく順調に進んでいた。歩自身も満足できる芝居が出来たと思う。

 しかし、このクラスの一番の見せ場である魔法使いがお城にいけないシンデレラに魔法を掛けるという瞬間早変わりの時、予想だにしないアクシデントが起こった。

 歩はパニックに陥った。どうすれば良いの?

 それが頭の中を駆け巡った。もちろん相手役の魔法使いも同様であった。目配せしながら、アドリブでもう一度長い呪文を掛けるから、何とかして!と言わんばかりである。

 そんな時、岡部が手近に有った暗幕を掴むとライトの有る所からその暗幕を垂らして観客から視界を遮ったのである。慌てて早変わりする瞬間が終わると、その暗幕は引き上げられ何とかその場を脱した。

 周りで事の成り行きを見守っていたクラス中の者たちは、それでホッと息をつくことができた。失敗に終わったにしろ、何はともあれ繋ぐことは出来たのである。この山場を終えると、お城での王子様とのダンスシーン。しかし、その先にはそれが困難な事態が待っていたのである。


「おい!血が出てるぞ!大丈夫か!?」

 どうやら、ライトの場所まで上った際、右太腿を切ったようで、血が滴り落ちている。しかも、出番が近いため、衣装着であった。衣装係はどうすれば良いのかと悩んでいたが、

「はさみをくれ!」

 岡部はいきなりはさみを持つと、長いズボンを短く切り刻んだのである。そして、血が滲み出しているその部分に肌色のテーピングを巻きつけると、

「短パンの王子でも良いじゃん?」

 ニッと軽く笑った。それにつられるように、今まで心配していた歩やクラスのみんなは大笑いした。短パンの王子なんておかしすぎる。しかし、怪我人が出たからといって全てを投げる訳には行かないし、衣装の変えも無い。ならこうするのが一番得策かもしれない。笑いを取るのも一興。さすが、こう言う事に慣れているなとそう思った。


 劇はそのまま続けられる。お城に行ってダンスをし、階段にガラスの靴を忘れて、お触れが出てシンデレラ捜し。みんな知っているお話だけど最後はハッピーエンド。そして、劇は終了した。

 歩はホッと息を付くのもつかの間、岡部に保健室に行くように勧めた。テーピングの下から滲み出すことをやめないその血が目に付いたからである。

「な〜に、心配要らないって!」

 岡部はたいしたことが無いからと拒否したが、歩は心配だった。

「駄目だよ!ちゃんと診てもらったほうが良いいよ!私が付き添ってあげるから!もし何かあった時クラス中が気になるんだから……岡部がいないとクラスって感じしないよ!」

 その歩の言動の勢いに飲まれたのか、一瞬真顔になってそれからいつになく照れたように、

「うん。そうするよ……」

 素直に保健室へと向かったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ