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第2話 再会?

 もともと変だと思ったんだ。

 閑散としている映画館で、私のすぐ隣に五十代ぐらいの髪の毛がはげかかったおっさんが座ったときからさ。



 あのレッサーパンダと出会ってから、「あれは本当に何だったんだ?」と私の中で悶々とし始めて。これでも結構気にするたちなんだって。

 仕事中とか、友達と話していても。「れ」という単語が出るだけで反応しちゃうんだもん。

 結構重症だと思って。それで余計に悩んで……。

 それで休みの日に、映画でも見て気分転換でもしようと、あのショッピングモールの映画館にやってきた。

 そんなとき。

 隣に座った親父が、私の太ももを触ってきたんだ。



 あーーーーっ!!!もう我慢ならんっ!!!

 「ちょっと止めてくださいっ!!」

 いらいらしているのに。こんな歳にもなって痴漢なんかしてんじゃねぇよっ!!

 私は館内に響き渡る大声でおっさんに叫び、席を立った。

 静かに見ていた皆さんごめんなさい。

 でも、これは許せないからね。

 私はおっさんを睨みつけて映画館を出た。



 映画代がもったいないなぁ……と少しは思うけど。

 どうしてこんな日に、こんな目に合うのか……。



「ちょっとぉっ!!」

 は?後ろから声をかけられ、私は振り返る。

 でっ!!あのくそおやじじゃんっ!!

「いきなり人を睨んで叫ぶって……何考えてんだっ!!」

 ああああああっ!?何言ってんの、このくそおやじっ!?

「はぁ?あんたが私の太もも触ったからでしょうっ!?

 何もしなかったら、叫ぶわけないじゃんっ!!」

 こっちは頭にきてんだ。普段にも増して、私の口は饒舌になっているんだから。

 

 

 何事かと、ショッピングモールの通路には、私とこのくそおやじを取り囲むように人盛りが出来始めた。

「ふざけるなっ!!私は何もしてないだろうっ!!」

 サイテーーーーっ。いるんだ……こんな人間のクズ。ガチにくそだわ、こいつ。

「……したから言ってんでしょうが。余計に自分のしたってこと認めてんだよ、あんた?」

 よくよくこのくそおやじの身なりを見てみる。

 あたまはハゲてるけど、スーツを着込んで……ただのサラリーマンにしては、それなりの役職についているとでも言いたいのかな?

 どこぞの先生とか?わぁぁ。教わってる生徒が可哀想。

 こんなやつが、よく電車で痴漢とかして捕まって、ニュースを賑わすだけの地位にいるやつだったりするのよねぇ。

「撤回しなさいっ!!私だって身に覚えのないことで迷惑をかけられるのはごめんだよ」

 最悪……ぶん殴りてぇ、こいつ。

 怒りで声が出ない。手が震える。

「君。可愛いんだからさ。このまま私に従いなさい。そうすれば、もっといいことしてあげるから……」

 加齢臭ぷんぷんで、汚い顔を近づけるんじゃねぇっ!!

 いやらしい笑みを浮かべて私にそう言ってきた、キモいくそおやじ。

 私が我慢しきれず、手を上げようとしたときに。



「警備員さん。この人です。この女性に痴漢行為をした男は」

 え?

 キモイおやじが、数人のこの警備員に取り押さえられて……。

 一体何が起こったのか、私は一瞬わからなくて。

「大丈夫、お姉ちゃん」

 私の震えていた手を握る小さい手の感触。

 私は呆然とその感触の主を見て……はいぃぃぃっ!!?



「久しぶりだね、お姉ちゃん」

 あのレッサーパンダじゃぁんっ!!!

「……あ……」

 痴漢のこととか、この瞬間全部ふっとんだわよ。



「すみません。警備員を呼びに行っていて遅くなってしまいました。

 怖くて声も出なかったのですね。大丈夫ですか?」

「パパ。このお姉ちゃんが前にぼくに駅までの道を教えてくれた人だよ」

「そうでしたか。それは大変お世話になりました」

 あの時のレッサーパンダにはお父さんがいたんかい?

 私より身長のある凛々しいレッサーパンダが笑顔……なのかなぁ?そんな顔で私を見ていた。

「あ……そんなこと。それに大丈夫です。ありがとうございました」

 ここは助けて貰ったんだし。お礼は言わないとね……。

 でも。ラフな着こなしをしているけど、それなりにセンスは良さそう。

 ……顔はレッサーパンダなんだけど……。

 この子もレッサーパンダなんだけど……。

「あの……」

「名乗るほどのものではありません。お怪我がなくてよかったです」

 確かに名前はすんげぇ、気になりますけど。

 どうして周りの人は平気な顔してんのぉぉっ!?

「それでは……」

「じゃね、お姉ちゃんっ!!」

 礼儀正しいレッサーパンダ親子さんたちは、そのまま私に頭を下げて遠ざかっていく。

 私はこの後警備員に経緯を聞かれ、そのまま男は警察へと突き出された。

 それは良かったんだけど……あのレッサーパンダの正体がちょーーーー気になるじゃないっ!!

 このままこの話って終わりなのっ!!?








 結局。余計に悶々とした日々を送る羽目になった私。



 どうしてレッサーパンダがいるの?どうして親子なの?

 どうして誰も気にしないの?どこに住んでるの?何食べてるの?やっぱりレッサーパンダらしい食事なの?仕事してんの?ってか、レッサーパンダなんだけど??



 あーーっ。いらいらする。



 ビーー。

 私の部屋のチャイムが鳴る。

 あ、そう言えば今日にも、大家さんが隣の部屋に新しい人が越してくるって言っていたっけ。

 そんなことを思い出す。

 ドアの魚眼レンズから外を見る。



 ………………。

「はいぃぃぃぃぃっ!!!!????」



 私は慌ててドアを開けた。

「ああ、まさかあなたが住んでいるマンションだったなんて。奇遇ですね」

 


 あのレッサーパンダ(父)が、あの笑顔?でドアの前に菓子折り片手に立っていた。

「あ……今日引っ越してくる人って……あなただったんですか……」

 私、こんな答えであってるよね?

「あの時は本当に失礼いたしました。

 私は今日ここに越してきました五籐列砂ごとうれっさと申します」

「……五籐さんですか……私は八島かおるといいます……」

 


 余計に悩む日々が始まりそうだわ………。


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