友情
-チャラス-
子供の頃、俺たち5人は河原に捨てられてたって親父が言ってた。それを親父が拾って、男手ひとつで育ててくれたらしい。
俺たち5人は学校に行く金が無かったから、俺以外の4人は毎日学校に行けない代わりに沢山勉強してた。俺は…勉強するのか嫌だったから、毎日外で遊んでた。でも親父はそんな俺を許して、毎日遊ばせてくれたし、俺が賭けに勝ったら一緒に喜んでくれた。
でも近所の奴らはそうはいかなかった。毎日俺を見るたび泥や石を投げつけてきて、誰かがギャンブルに負けた腹いせに殴りに来たりもした。何で俺はこんなに虐められないといけないんだって、泣きそうになった。でも、親父はそんな俺にこう言ってくれたんだ。
「辛い時ほど笑えうんだ。何ともねえって、ハッタリをかましてやるんだ」それから俺は、何をされても泣く事はしなかった。
代わりに、もっとギャンブルで大勝ちしてやったり、石でもなんでも、投げ返してやった。そうしたら、俺の周りから人は消えた。誰も関わろうとしなくなったんだよ。
そして、つまんねえと思いながら歩いてたら、あの空き地に着いたんだ。そこには何もねえ、ただ草が生い茂ってるだけだった。
でも、その空き地で、俺はガルドと出会った。聞いた所によると、ガルドは学校が嫌になって、それでたまたまここまで来たらしい。意気投合した俺達はそれから毎日共に遊び回った。カジノでイカサマをして金稼いだり、レストランで食い逃げしたり、あぁ…今思い出してもいい思い出だな。でも、ガルドの両親はそれを許さなかったんだ。
………
「大丈夫か?」宰が足を止めこちらを向いてくる
「あぁ、少し…昔のことを思い出してたんだ。もう大丈夫」
「忘れ物があったんだ。銃を、取りに戻りたい」
宰は、「そうか」とだけ言うと、街の方へ方向を変えた。
-ガルド-
毎日、学校に行って、勉強して、ご飯を食べて、寝る。それだけ。何も面白くなんかないし、誰とも遊ぶなって言われてたから、学校でも面白いことなんて無かった。
だんだん、自分は影になってしまえば良いって思ってきて、そうしたら、いつの間にか能力が使えた。名前は…影開拓者と呼ぶことにした。でも、親はそんな事より勉強しろって、もっと勉強して、あそこにある大きな街で立派な大人になれって…俺も、そうならなきゃと思って勉強してた。
ある日、その日はいつもと違う道で帰ってみようと思って、空き地を通った時、あいつが居たんだ。名前はチャラス、年齢に見合わぬ黒いスーツに、左目に7の文字が刻まれているような、不思議な目をしている。俺はそこでチャラスと話し、意気投合した俺達はそれから毎日共に遊び回った。でもそんなある日、家に帰ると、俺の両親は俺を殴ったんだ。
「あんな学校にも行ってないような子と遊んではいけません!それに、そもそもこの街では誰とも遊ぶなって言ったでしょ?なんで言ったことが分からないの!?」それを聞いた俺は、思わず家を飛び出した。
家を飛び出した俺が向かったのは、あの、いつもの空き地。そこにいつもの様にチャラスが居た。右手でコインを回して遊んでいる。
俺はいつもの様に隣に座ると、それをするのが自然であるかの様に、静かに、吐き捨てる様に、今日起きた出来事を語った。それを聞いたチャラスは「ふーん…」とだけ言うと、再び、右手のコインを回し始めた。
『裏』
コイントスで裏が出た時、チャラスの連続表記録が34で止まった時、チャラスはこっちを向いて言った。
「じゃあ…居なくなれば良いんじゃねえか?そいつら」
「………え?」
ふと彼の顔を見ると、左目には、7の様な、不思議な模様が着いている。その不思議さに吸い込まれたのかもしれない、あるいは、そうする運命だったのかもしれない。俺は吐き捨てる様に、
「お願い、チャラス」
と言うと、チャラスは肩に手を置き、何事も無かった様に、コインを回し始め、「今度は50回連続だぜ!」って言ってた。その日は特に何処かに行くこともなく帰り、両親の罵詈雑言を受けながら2階に戻って寝た。
………
ん…?あぁ、寝てたのか、この記憶は、嫌な出来事でも、良い出来事でもない。それに、俺が言ったんだ。だから何をされても文句は言えなかった。でも…それでも、俺の大切な両親を…『殺した』のは、あいつだ。悪いのは全部…あいつなんだ…
-チャラス-
そういえば、気になる事がある。知ってるかは分からないが、宰に聞いた。「俺…さっき武器を持ってなかったのに銃を撃ったんだ。意味分かんねえけど、ほんとだ」
それを聞いた宰は、「なるほど」と言い、こっちに近付いた。
「今、右手には何も持っておらぬ、刀も鞘に入っておる」そう言いながら右手を開いて見せてきた。次に
「だが、ふとした時には、ここに刀があるであろう?」見ると、確かに刀があった。
「何で何にもねえとこから剣が出てくんだよ?」不思議に思い、俺はその刀に触れたが、それは宰の手を離れた途端に消えた。
宰は「これは精神力だ。いわば心の具現化怒りや、極限の集中など、心が最大限パワーを発揮している時に出現する。」と言い、「汝も、これを使えるほど、心が強いのであろうな」と、笑った
心がつよい、か…「いや」今は出せる気がしねえ。ガルド…やっぱり、ずっと根に持ってたんだよ。俺が、帰る所はもうねえんだ。親父も、意味分かんねえし…街の奴らも居ねえ。何で…何で俺は!
気付けば、既に自分の家の前に居た。「行くのではないのか?」宰が首を傾げながらこちらを見つめてくる。「あ、あぁ…すまねえな」とだけ言うと、俺は中に入った。
いつも通り、玄関を上がってまっすぐいきゃあリビングがあるし、階段を登れば俺達5人の部屋がある。……でも、もう誰も居ねえ。毎日リビングで新聞を読んでた親父も、4人で勉強かボードゲームでもして待ってた兄弟達も。
俺は親父の部屋にある、引き出しを開けると、中には大事にしてた家族写真と、母さんの写真のペンダント、そして俺の銃と弾を見つけた。全部取って家から出ると、宰は空を見て待っていた。
「終わったか?」
「あぁ…もう、帰って来ねえからな…」
俺は言い聞かすように呟くと、宰の後を追い歩き始めた。
森に戻ったと思ってから、しばらくすると、屋敷のような所に出た。見たところ、元はこいつの家じゃ無かったみてぇだが、勝手に住み着いてるように見える。
「この街、森の住人は皆居なくなったのだ。さすれば、我がここを使おうが勝手であろう?」
「…そうだな」
特に何も言わず、俺は宰の後ろを行き、館に入った。




