好奇心(コンパス)の向く先は
昔々、あるところに1つの冒険者パーティがあったの!そのパーティは魔王を討伐するほどの力があって、『勇者パーティ』と言われてた。そのパーティは3人の少数だったのに本当に魔王を討伐しちゃったの!最悪だよね〜?
セリシアの家でご馳走を貰い、全てを平らげた後、その日はそのまま寝かせてもらった。
次の日、村を出ようとするとセリシアが着いてきた。
「お嬢様…」マモスが1歩踏み出しセリシアに跪く。
セリシアは少し目に涙を浮かべながら話し出す。「マモス。結局、行ってしまうのね…もう、帰ってこないのかしら…?」マモスはセリシアの手を取り「お嬢様…僕は必ず帰ってきます。その時は…僕のお嫁さんとして、迎えてくれませんか?」と言った。
「なっ!マジか!?お前あいつのこと好きだったのか!?」クニサキが騒いでいるチャラスを引っぱたく。セリシアはクスッと笑うとセリシアの頭を撫で「絶対、死なないでね?」と囁いた。マモスが立ちあがり「はい、必ず」とセリシアに答えた。
少しだけ村を離れた頃、疲れたのか俺とクニサキ以外寝てしまった。クニサキが静かに語り始める。「マモスは強くなるっていう旅の目的を得たんだ。お前もいつかはそうなれるといいな」そう言うクニサキの目はどこか儚げだった。
クニサキはなんでコンパスを受け取らなかったの?
クニサキは遠くを見つめたまま「それは…俺にも分からねえ。旅が好きだったのはそうだが、何か、あいつにとって大事なもののように思えたから…かもな」
そっか。次は何処に行くの?
クニサキは地図を取り出し指さす。「ハープネスの言うにはさっきの村を出て海を渡ったはずだ。だがここの海域は並大抵の船じゃ突っ切れない。だからこの海沿いにある街や村を1つずつ行こうと思ってる」
なら…次の目的地はここの中のどこか?
俺は地図を指さした。地図には2つの街があり、そのすぐ離れた場所に1つ、小さな街がある。クニサキは少し考えこんだあと、決心して話し始めた。そうだな…先にこの離れの街に行こう。そうして、その日は眠りについた。
次の日、目を覚ますともう既に街の目の前まで来ていた。街は荒れ果てており、そこら辺にスクラップやらが落ちていた。そんな事よりチャラスの様子が変だ。緊張してるというか、何かに怯えている。
「な、なあ…ちょっとトイレ行ってくるよ…」チャラスが逃げるように走って去って行く。その直後、目の前に、大きな身体をした中折れ帽を深くかぶった男が立っていた。よく見ると、その男の後ろには手下と思われる人が四人いた。男は、クニサキの前に近付くと、低い声でこう言った。
「この辺で、黒い帽子をかぶって、左目を隠してるスーツの男は見なかったか?」黒い帽子…左目を隠してる…スーツ…うーん、そんなの一人しか…
クニサキが考え込むようにしながら「いや、見てないな」と言った。
身体の大きい男は目元は暗くてよく見えないが、口元はうっすらと笑みを浮かべ「そうか…俺の名前はフィオス。よく覚えといたほうがいいぞ」と言いながら去っていった。
フィオスが去った後、クニサキは振り返りこういった。「あいつは明らかにチャラスを追っていた。それに、チャラスも様子がおかしかった。つまり、チャラスは何か秘密を隠している。これは、探らないといけない」
でも、どうやって探るの?
するとマモスが「とりあえず、ここの人達に色々話を聞いてみましょう。なにか分かるかもしれません」と言った。街を探索すると、まず目につくのはカジノや闘技場などのいわゆる『闇』と言われてる物が沢山あった。そして進んでいくと、フィオスが一人で歩いていた。クニサキは「尾行しよう。この距離じゃあいつの心を読むことは出来ない。少しずつ近付くんだ」と言い、俺達はフィオスを尾行し始めた。するとフィオスはすぐに路地裏に入り見えなくなってしまいそうだ。慌てて後を追うと、少し開けた場所に出て、フィオスがこちらを向いていた。フィオスは「少し前から、尾行していたな?まあ、俺はお前等を待ってたんだが」と言い剣を取り出した。クニサキは納得した表情でこう言った。「なるほどな、どおりでお前一人しか居ないわけだ。それに、そこら中に仲間を潜ませたな?」
フィオスはニヤリと笑い、こちらに突進してきた。クニサキは寸前の所で避け、反撃しようとしたが、フィオスの剣に斬りつけられ、その場に倒れた。マモスが立ち向かおうと前に進んだが、何処からか狙撃され、何かをするまでもなく倒れた。そしてフィオスがこちらに近付いてくる。
「君は何かしてこないのか?すぐに仲間の元へ行けるぞ?」といいあちこちから彼の仲間が現れた。
もうだめだ…これで…終わりなの…?
―――ザンッ!
気が付くと、俺は椅子に縛り付けられていた。クニサキは…?マモスは?
するとその奥の暗闇から1人、近付いて来た。それは…見たことのない、女性だった。彼女は対面の椅子に座り、ゆっくりと話しだした。
「ふふ、おびえなくていいさ。私はフィオスの友達なんかじゃないよ。ああそうか、自己紹介がまだだったね?私の名前はメディ。さあ、仲良くしようじゃないか」
信用出来ない。どうやって助けたんだろうか。
「ふふ、君は喋るのが苦手なのかな?ここに来てからも、一言も発していない。なら、ゲームをしようじゃないか。大丈夫、何も賭けないし、ルールも簡単だ」そう言うと、メディはトランプを配った。そしてメディは自分5枚のカードを一枚場に出しこう言った。「カードが4枚あるだろ?その中で1つカードを選んでくれよ、そうして2人が一枚ずつだし、数字の強い方が勝ち。そしてカードが無くなった時、多く勝ってた方の勝ちだ。簡単だろ?」
なるほど…強いカードを先に出せば後で不利になる。でも弱いカードを先に出しても勝てるかどうか…
俺はカードを場に出した。そして、メディがカードをだすと、数字は4と13。その次は8と13。その次は12と13。最後は9と13で負けた。
メディはカードを拾いながら「ふふ、君は可愛いな。この街の住人にはそんなんじゃ勝てないよ?」と言った。
カードを拾い終えたメディが真剣な表情で、こちらに向いてくる。
メディが「さて、君にはお父さんやお母さんはいるかな?」と言い、続けて「君にはお父さんもお母さんも居なさそうだけどね…」と言った。そして最後にこう言った。「もし、君のお父さんを殺したのが私だって言ったら?」
「אני הורג אותך」そう言い、俺はメディの首を両手で締め付けた。
メディは笑いながら「あはは!はあ…念の為縛っておいたのにそれをも破るなんて…やっぱり君は…」と言い、その瞬間、メディを締め付けるほどに自分も苦しくなってきた。俺がメディから手を離すとメディはすかさず俺に抱きついてこう言った。「ずっと探してたんだよ…さあ、行こうか」
そうして、半ば強制的にメディに連いて行かされた。
-クニサキ-
目が覚めると、俺は病院のベッドにいた。隣にはフィオスがいて、その仲間もいた。俺は痛む体を起こしながらこう聞いた「マモスは…ルセースは何処に行った…?」フィオスは目元は見えないが、口元は笑いながらこう言った。「あんたの友達は死んだよ。両方な」それを聞いて俺は怒りを抑えながらこう言った。「嘘をついてるな?本当の事を言え」それを聞いたフィオスは少し口元から笑いが消え、「なるほど…考えてることが分かる…とかか?まあいい、身体の小さい方は誰かに連れ去られた。もう一人は本当に死んだ」と言った。俺は痛みで身体が動かなかったが、フィオスを睨みつけ、「お前はそれ相応の最期が用意されてると思え」言った。その時、病室のドアが開かれ、チャラスが入ってきた。チャラスは部下を押しのけ、フィオスの襟を掴み叫んだ。「てめぇ!やって良いことと悪い事も分からなくなったか!?」フィオスの部下がチャラスを抑え、フィオスがチャラスを見下ろしながら言う。「お前のした『お遊び』の結果がこれだ。何を得たんだ?お前は」チャラスはフィオスを見上げながら呟く。「分かった、もう家に帰る。だからそいつは助けてやってくれ、親父」
フィオスはチャラスの手を取り、病室を出ていく、チャラスは俺に振り返らず、出ていった。