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堕天  作者: 中島
13/13

護る

心の修行、つったってなあ…

まあ、少し都合はいいかもしれない。何故なら、俺の勘はあの銃弾を使うべきじゃねえって言ってるから。俺の勘はやっぱり当たるんだよなあ…だから、刀を使うっていうのも多少は悪くねえかも…?


自分の部屋に帰った俺はこの屋敷に来た時自分に渡された木刀を見つめてみた。その木刀は俺は刀を見たことが無いから分からないけど、刃が付くであろう場所は所々欠けており、一応今まで頑張って修行してきた成果だと思われた。


次の日、その次の日も、毎日修行した。

そんなある日、俺はいつも通りメリーに起こされて…

「起きて!速く!し、師匠が!」


俺はいち早く飛び起き、何か、嫌な予感がしたのでリボルバーを持ち屋敷を出た。そこには、宰と剣を交えていた人物、顔はニコちゃんマークの仮面で見えなかったが、髪の毛は不自然で、不気味なくらい整ったポニーテールをしており、服はこれまた不気味な、不自然な程綺麗なメイド服を着ていた。


「師匠!俺も…」そう言って俺が近づくのを、宰は止めた。

「来るでない、弟子よ、この者は我と対等に刀を交えている。汝では殺す事が出来ぬ故、先を急げ…汝の敵の仲間であろうから、全てはあの泉にある」


「メリー!速く!行くぞ、行くしかない」俺はメリーに手を差し伸べ、メリーは恐る恐るその手を掴んだ。

「う、うん!行こう、速く!」メリーは自分の身体にピッタリとくっつき、怯えているようだった。


俺は直感を頼りに森を進んだ。俺は一応、運が良いから、ここを真っ直ぐ行けば…

あった。泉だ。そして…


「チャラス!?何でここに…?」

こちらを見て驚いた表情を浮かべるガルドと、その背後には、フィオスが居た。

フィオスはゆっくりとこちらを振り向くと、目元はハットで見えなかったが、確かに微笑んでいた。


「来たんだな、チャラス。俺の息子」フィオスの身体は湖に向かっていたが、やがて剣を構えながらこちらへ近付いて来た。


今、俺の武器はボコボコになった木刀、あとは1発だけのリボルバーしかない。どうする?

俺はメリーを左手て庇いながら右手に木刀を構えた。


「お前も湖に取り込んでやろう!」フィオスは剣をこちらへ向け、そのまま突進してきた。狙われているのは心臓。


ゴッ!

木刀の身体がフィオスの剣を受け止め穴が空くが何とか凌いだ。俺は反撃する為にフィオスに木刀を振りかざす。


バキッ!

当たり前の事だが穴の空いた木刀が衝撃に耐えられるとは思わない。フィオスの肩を支点として木刀は折れた。その隙を逃さず、フィオスは俺に剣を振りかざした__


「ぐぅ…」斬撃を受けたのは俺じゃなかった。咄嗟に前に出てきたメリーが俺を庇ったのだ。肩を斬られたメリーはその場に倒れ意識を失った。


「メリー…?なんで…」

守れなかった...?いや、そもそも、最初から守れるほど俺は強くなかったんだ。だから、守るなんておこがましく、傲慢な願い、願望だったんだ...


「チャラス」その優しく、落ち着いた声が俺を現実へ引き戻した。メリーは今、血を流し死に向かっている真っ最中だった。


いや落ち着け、俺の目の前には敵が2人。どうする…?リボルバーを使っても1発しかないんじゃどうにも…

「ふう…」

どうにか、拳でやるしか…


「さあ、俺の愛する息子、チャラス。早くお前も湖に入るんだ!」

左腕を捨てて…右手で殴る…!


カンッ…!

「あ…?」

さすがに、俺の左腕からこんな音はでない。目の前には…

「大丈夫か?チャラス。すまん、遅れた」

「…クニサキ!」クニサキが左腕からバリア…?的なのを出して…そのまま右手でフィオスを殴り飛ばした。


「こっちは任せろ。チャラス。お前はあいつを」

クニサキが指を指した方には、遠くからただ棒立ちでこちらを見つめるガルドが居た。


俺が…?いや、やらなきゃいけないな…守られてばかりじゃ駄目だろ。

俺はまず、思い切りガルドに向かって飛び蹴りをした。自分に攻撃が来るとは思ってなかったのか、ガルドはその攻撃をもろにくらい少し後ろに倒れた。


「チャラス、何で来ちまったんだよ。お前が来なければ、俺は罪悪感なんて感じずに湖に飛び込めたのに…」

見たところ、ガルドは武器を持っていなさそうだった。俺はガルドの言葉を無視し、右の拳でガルドを殴りつける。


-ガルド-

痛い。何で俺が殴られなきゃいけないんだ。口の中に血の味が広がる。かなりの力で殴ったな、チャラス。

全部お前のせいなのに、お前が悪いんだ。


そうだ、そうに決まってるんだ。父さんも、母さんも、殺したのお前だろ、チャラス。お前だけが悪いんだ、そうだろ?俺は悪くない!


「ねえ、怖いの?」

その瞬間、世界も俺も、止まったように動かなくなった。目の前には1人の女性がこちらを覗き込んでいる。

「ふふ、そんなに怯えないで。それより、君は可哀想だね。あの子に親を殺されて、ちょっと前までひとりぼっちだったもんね?」


「誰だ…?何で動けない?それに…」

俺がそこまで言うと彼女はこちらへ手を伸ばし左手で頬を撫でた。

「でもさ、全部貴方のせいでしょ?貴方が親を恨んで、友達に生殺与奪の権利を与えてしまったんだから。」


「あ…ああ…」駄目だ、やめて。それ以上言わないでくれ…違う、俺のせいじゃない。

「それに君、ずうっと本当に怖がってるね?何が怖いの?もはや君を指さす人間すら君の周りから消えちゃったのに?」


「何を…言って」嫌だ、俺だってこうなるなんて知らなかった…それを俺に言わないで…

「分かってるのに逃げるの?本当に臆病なんだね?どうせ本当は、貴方の友達にナイフを刺す事も出来ないんでしょ?」


その女は最後、俺に右手でも頬を撫でるとこう言った。

「大丈夫、恐怖は力だから。身を任せて、力を感じて。貴方は怖がるだけでいいの。さあ、みるみるうちに、身体が生まれ変わって…」


助けて

誰か

ずっと、ずっと怖いだけ

いつも誰かが俺に指を差してくるんだ

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


-チャラス-

目の前のガルドが頭を抱え始めたと思ったら、脇腹、背中、太もも辺りから人間の腕が生え、ガルドをつつみ始めた。


「これは…?」前にハープネスに起こった、能力の暴走に似てる。あの時は目の前でなった訳じゃないから、どう変化するかは分からなかったけど…


そんな事を考えてる内に、こちらへちぎれた腕が飛んできた…?俺は寸前で回避したが、ガルドを見た時、『それ』はもう俺の知ってるガルドとは違っていた


全身が影で出来たように黒ずみ、腕は鋭い爪が生え、顔はくり抜かれたように穴が空いている。

「やめろ…助けてくれよ…」


あいつが時折漏れ出るようにそう語り掛けている。俺にも、誰にも届かない悲痛な叫びを。

ガルドが俺に爪を伸ばし攻撃してくる。反応出来なかった俺は、そのまま刺されると思った…が。


ガキィィン!

またもや俺は助けられた。今度は、目の前に立ってるのは宰だった。全身に切り傷を負っているが、深手は負っていなさそうだった。


「汝、怪我は?」

「いや、特には。向こうで仲間が戦ってる、早く助けねえと。」まただ。また助けられた。それほどまでに俺はまだ、弱いのかよ。


「なんでにげるんですか?けんしさん。まだたたかいましょうよ」後からさっき宰と戦ってた仮面の奴が飛んできた。左腕を切り落とされているが全く気にしていない様子だった。


「汝は、痛覚も感じぬ、人形の様であるが故、切り離すように心掛けたのだが、 着いてきたか…」宰が刀に着いた血を振り払い、再び体制を作り直した。


「ぬるはにんぎょうではなくにんげんです。このけん、あとでべんしょうしてほしいです」自分をぬると名乗ったやつは宰に折られたのであろう剣を見つめていた。


「助けてくれよ…誰か…」ガルドだった者が宰に爪で攻撃するが、宰はそれを弾くと、すかさず反撃を入れ、ガルドだった者の両腕を切り飛ばした。


最期に、ガルドは胸を開き、中から牙のような物を伸ばしてきたが、宰はそれをガードすると、足で身体に蹴りを入れ、刀が一閃し、次にはガルドの首が飛ばされていた。


がしかし、それを待っていたかのように、宰の影から爪が伸び、宰の腹を貫いた。宰は

「なるほど、影か。汝、我はまだ戦えるが故、あの者と決着をつけねばならん。これを」と言って、包帯を渡してきた。


「ダメージ軽減の為、中に何枚か噛ませたが止血しなければならぬだろう。速く行け」

メリーの為だろうが、ほんと、どこまで見えてるんだ、この人。


俺はすぐにメリーまで走って処置を施した。子供の時から怪我することはよくあったから、包帯を巻くだけなら俺でも出来た。


が、メリーはなおも眠ったままだった。だが、心臓が止まった訳では無いので、一安心だ。


メリーは…ひとまず置いておいても良いよな。俺も師匠と、クニサキの為、戦わねえと。

宰の元へ行くと、宰は苦戦を強いられていた。先程貫かれた傷と、ぬるがダメージを負っていないのが辛いのだろう。


「師匠!俺…」

「分かっている。汝が修行を好かなかった事も、あの生活に疑問を抱いていた事も、だが、それら全てが、汝にとって心の修行だったのだ。弟子よ」


「我は魂としてここに留められているに過ぎなかった。だから、この末路は我にとって最高なのだ。汝、道を下向きで進んではならぬ。前を向いて、ちゃんと道を選ばねば、どれだけ下へ堕ちても、救ってやれぬからな」


その言葉を皮切りに、宰は右肩から心臓に向けてを切り裂かれ、その場に倒れた。そして、折れた宰の刀がこちらへ向かって転がってきた。


「うぅ、けんしさん、つよかったです。つぎはあなた?」ぬるが俺に向かってくる。俺は必死で宰の刀を取った。その瞬間、何かが頭の中に流れ込んできた。


-『遺物』呪縛牢(魂の哻る場所)について-

著者_下凪 宰

我が魂と肉体の繋がる鎖を断ち切った時、行き場を失った魂は、地縛霊の様に、満足するまで我の足元にしがみつき、鎖で我の魂を縛った。


それが我の能力であり、使命であるから、我はそれに疑問を抱くことこそ無けれど、罪だけは、我を指さし、ありとあらゆる視線を向けた。


その視線が軽蔑である、我はそれを死ぬまで受けなければならぬであろう。だが、たった1つ。罪を懺悔すれば、罪は払われ我は報われる事も我は知っている。


だが、この罪を祓うということは、我に取り憑いた魂どもは行き場を失い干からびて行く為、我は絶命するその日まで、これをここに書くに留める。


遺物能力レリックスキル天楼呪縛牢てんろうじゅばくろう

殺した者の魂を刀に取り込み、1人まで従え、他は力として吸収する


-チャラス-

今のは…?宰の…遺した何か?この武器に触れた瞬間、頭に記憶みたいに流れてきて…それで…

「ぼーっとしないでください」

「くっ」

ガキィィン!

重い…!ぬるがこちらへ突っ込んで来た時、勝手に刀が動いた気がした。もしかして、()()()()()()()()()そういえば、魂を一つだけ従えるって書いてあったよな?なら…ずっと宰は自分を従えて、何年も生きてたのか…?


「むぅ、あなた、さっきよりつよいですね。なぜですか?」ぬるは目にも止まらぬ速さで剣を振ってくる。俺はなんとか受け止めるだけで精一杯だった。


「ふぅ…」このまま続けててもこっちが負ける。なら、一矢報いる為には…!

ガンッ!

「…!」俺が思い切り刀を振り切ると、ぬるが驚いた顔をしながら少し後ろへノックバックした。


今は、目の前だけ見ろ。何も考えるな。感情を、昂らせろ。あいつを、師匠の仇を殺す。

次の瞬間、刀の失われた刀身が表れ、俺は、居合切りの姿勢を取り、深く息を吐いた。


スッ____

なんとも軽い音だが、次の瞬間ぬるの首は飛んだ。後ろの方へ吹っ飛び、残った身体は後ろへ倒れた。


「はあ…はあ…」

やった…俺が、あいつを倒せた。でも、攻撃の時、あいつも反撃してきやがった。痛えけど、まだ終わりじゃない。クニサキを助けねえと…その前に、メリーを…


俺がよろよろとまだ痺れる足を動かしながらメリーの方へ歩くと、メリーの傍には1人、見覚えの無い人影があった。


黒いスーツの上からコートを着ており、顔は左目を眼帯で覆い、口はマフラーで隠し、身体の至る所には銃創が見受けられるが特に支障はなさそう。背中には大剣を背負っており、左腕は既に使い物にならなそうな、見るからに歴戦の男がそこに立っていた。


「なっ…誰だ…?お前…なにしてる…」

俺が戦えないのを見て、目の前の男は背中の大剣を抜くとこう言った。

「メリーは俺のメリーだ。俺はお前の応急処置が酷かったから俺が改めて行っただけだ。そして、俺の名はリィン。お前を殺す者の名だ」


「はっ、俺はまだ、死にたくなんてないんでな…!」

俺は精一杯動けるように振る舞い、リィンを見据えた。リィンは背中の大剣を抜く様子も見せずこう言った。

「今回は俺の要求に応えれば、生命は助けてやる。そこの死体、それとメリーを貰っていく」


と言い、メリーを担ぎ倒れてるぬる身体に近付いた。

「くそ…」

当然、あんな奴に今から戦いを挑んでも結果は分かってるから、俺はその場でリィンが立ち去るまで見ていることしか出来なかった。


-クニサキ-

「くっ…」

バリアは今充電中、他の技に頼るしかないんだが…

次の瞬間、クニサキの姿は消え、足音だけが聞こえた。フィオスは余裕そうな微笑みを浮かべている。


「そろそろ終わりにしよう。お前は強かったが、俺を殺すには速すぎたようだな」

フィオスが剣を振り下ろす。

くそ…「でもな…間に合ったらしい」

ガキィィン!


「はっ、今度は俺が助ける番だ、クニサキ」

チャラス。信じてたぞ。

「さあ、やるか」


フィオスが剣を突き出し突進してくる。2人はそれを避けるとチャラスが刀を振り下ろす。しかし、それはフィオスが振り向きざまに振り上げた剣で防がれる。


しかしその隙を逃さず拳でもう一方からクニサキに攻撃され、フィオスは後ろへノックバックする。


よろよろと体制を立て直したフィオスは、いつもの動きで兄弟達を呼ぶが、それに呼応する者はもう居ない。


「はは、ははは!」フィオスはその場で大きな笑い声を上げ、目から頬にかけて、うっすらと線を描いていた。


「駄目だ、チャラス。行ってはいけない。お前が来て、様々な事が起こったが、それは同時に俺を縛り付けていたんだ」再び、フィオスはクニサキに狙いをつけ、剣を前へ突き出し、突進の構えをとる。


「お前が行ったことで、俺に返ってきたものを、精算して貰わなければ、俺はどうやって地獄に堕ちることが出来る!」


-フィオス-

ある日、雨の降る日、4人の顔の似た兄弟と、1人の捨て子を拾った。俺はそれぞれに名前をつけ、背の高い順番に兄弟にした。


4人の兄弟は真っ当に、元気に、普通に育った。だが、1人だけは違った。そうだ、チャラス。あいつが色んな所で馬鹿をしてきた時、俺はあいつに自分を重ねると共に、どうしても憎たらしく思えた。


もう、現役だった時の俺は居ない。

「親父、あそこには2つ、おっきな街があるって!」

「そうだな、沢山勉強して、大きくなったらあそこにも行ける。だからお前も勉強しろ」


でも、あいつは朝と夜。飯の時しか家に帰ってこなかった。こんな街だ、何処かで死んでてもおかしくはなかったが、あいつはちゃんと帰ってきた。


あいつが人を殺した時、俺は、()()()やってしまったかと思った。まあ、勉強なんてしてこなかったし、しょうがないと思った。


その日から、あいつは帰って来なかった。死んだかと思ったが、あの日、またあいつは帰ってきた。あの人が街と、森を支配し始めてからちょっと経った後だったな。


チャラス、俺の忌まわしき1人の息子。そして、俺自身のような、存在。


-チャラス-

フィオスが突進してきたが、その攻撃が俺に当たる事は無かった。フィオスはドゴォォン!と言う大きな音と共に、隣の木に叩きつけられていたからだ。


それをやったのは、リィン。大剣でフィオスを吹き飛ばしたのだ。フィオスの上半身は跡形もなく消し飛び、下半身は木に丸い衝撃の跡を遺している。


「じゃあな、チャラス。楽しみにしてるぞ」

そう言い、リィンはどこかへ去ってしまった。クニサキが誰かと聞いてきたが、俺は名前しか知らず、さっき起きた事を話した。


やがて、落ち着いて考え、次何をするか話し合った。そして、結論は、ルセースを助け、旅を再び進めるという事で一致した。


「ルセースを探す。原理は知っておかなくても大丈夫だろ?」クニサキはそう言い、その場で集中し始めた。


やがて、何かを確信したクニサキが走り出すと、俺もその後に続き何処かへ走り出した。

遺物について________

遺物とは、能力者が能力と真摯に向き合い、能力と密接に生きた後、死んだ魂に刻まれた能力が生前使われていた何かに結びつく事で生まれる『物に宿った能力』です。


遺物に刻まれた能力は生前のものと系統が異なる場合があり、遺物を使いすぎれば自らの身体が崩壊します。


遺物に思念ページが刻まれており、それを読み解く事で遺物の能力、遺物能力レリックスキルが使えるようになります。

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