隠し通せない
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「今日は俺の発見した技術をこの国に、世界に届ける為に、頑張ろうか」
その日の俺は、少し浮足立ってた。何故なら、俺が発明した『能力抽出技術』はすごく革新的で、場合によっては世界を揺るがすかもしれないと思ったからだ。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」父さんの挨拶から始まったその日の発表会は、成功に終わって、俺は拍手に包まれた。今までずっとあの部屋で勉強して、研究した甲斐があったと思った。
でも、事件は次の日に起きた。母さんが、何者かに殺されていた。勿論、警備は沢山いたし、そもそも城に入れる人間はそう多くない。だから、父さんはそれを能力者の犯行だとし、この国に『能力者追放宣言』を発令した。
そして、能力を持っている人間は『能力抽出機』で抽出し、ただの一般人になって、この国で過ごしていた。だが、あれからおかしくなった父さんは俺をあの部屋に一生閉じ込めようとし、元々交友関係にあった隣の国に戦争を仕掛けた。何も近付けない為に。
そして俺はあの部屋で無限とまで思えるような時間を過ごした。使用人がたまにやってきてご飯を置いていくだけ。窓は撤去したから外は見れないし、ドアから外に出れば使用人にバレて中に入れられる。
そうやって、毎日を研究とご飯と睡眠だけで過ごしていたある日、俺は2つ目の技術を開発する。『記憶消去装置』だ。消去と言っても、他の関係ない記憶も消去してしまうし、記憶の改ざんも出来るが、使う事は無かった。
そして…はあ…もう、隠し通せないよな。
知ってるだろ。俺が母さんを殺した。あの研究の日々に嫌気がさして、むしゃくしゃして、殺した。
そうして、俺はそれを国中に拡散し、逃げるようにこの国を飛び出した。
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俺は結局、なんの為に国を出て、またここに戻ってきてしまったんだろうか。まあそりゃ、こうなる『運命』だったんだろうけど…何がしたかったんだろうか。
何も、変わらない。胸の中はただ、空虚だけが支配している。でも、結局、向き合わなきゃならない。それに、俺の旅路は、ここで終わっていい筈がない。
俺のローブには、抽出した能力が沢山詰まっている。目的は決まった。目の前のあいつを叩きのめし、そして、再びここから飛び立つんだ。
ヤマギの腰にも、ベルトのようなものが巻かれ、そこにUSBのようなアタッチメントを装着することで、外付けの能力が使えるようになると考えられる。
ヤマギはまず、青色のUSBを自分のベルトに指すと、『スプリント!』と機械音声が鳴った直後、恐ろしい速さでこちらに蹴りを入れてきた。俺はそれを両手でなんとか受け止めたが、衝撃が凄い。パワーがあるな。
「どうしたよ?こんなもんかぁ?」ヤマギは次々と攻撃を繰り出してくる。確かに、スピードも、パワーも強い。だが…
キィィィン!
俺の左手には、バリアが付いている。「お前だって、これは知らなかったろ?」そして、バリアは衝撃を吸収し、右手による拳にパワーがチャージされる…「お前に教えてやろう。俺は、ここで立ち止まっているような奴じゃない」俺はカウンターパンチをヤマギに喰らわせると、ヤマギは数メートル吹っ飛び倒れた。
ヤマギは少しの間その場で倒れていたが、やがて起き上がると「なんでだよ…どうして…どうしてお前ばかり上なんだ!常に!」そう叫んだ。そして今度はもう片方に、赤色のUSBを挿した。『パワー!』とベルトが鳴ると、今度はヤマギの拳は更に威力が増した。
「お前が、自分で作ったのか?」俺はそう問いかけ、左腕を構えた。バリアは確かに攻撃を受け止めたが、『バリア機能破壊。修復します』と鳴り、バリアは閉じた。だが、「これで十分だ」カウンターのパンチは、ヤマギをもう一度捉え、ヤマギは再び吹っ飛んだ。ヤマギは目に涙を浮かべ、そのまま倒れ込んだ。
「どうして、お前は常に俺の上を行く…?」ヤマギが吐き捨てた言葉は、ただの恨みではなかった。その悲痛な叫びに俺は、聞こえないふりをしながら、近付くことしか出来なかった。
「多分、結局、隠し通せないよな…」ヤマギはそう呟くと、こう続けた。「俺だよ、あんたの母さんを殺したのは。」「……そうか」
「羨ましかったんだ。俺は、無色透明の能力を持ってる。それで、城の中に入り込んで、殺した。そして、お前に記憶消去装置を使ってお前が殺したように記憶を書き換えた」
ヤマギは右手を空へ掲げた。「お前は、何故何も求めない?何故、夢を持たないような目をしている?」………俺は…「俺は、夢の求め方を知らないだけだ。お前が夢を持ってるなら、俺はお前が羨ましい」
-ヤマギ-
「ねえ!ママ!僕ね、将来はあの人みたいなヒーローになりたいな!」
昔、テレビでやってたヒーローの番組。俺の夢は、ああいう…みんなを助けれる。強い人間になりたかった。でも…今は。結局、王の統制のせいでテレビは使えなくなったし、俺が今抱いてるのは…憧れじゃなく、嫉妬だ。
俺はあの日、クニサキの発表会に参加して、皆に拍手を受けているクニサキを見て、始めて誰かを恨んだ。ヒーローになるのはあいつじゃない。俺じゃなきゃ駄目だ…
……俺は何を得たんだろうか。結局、クニサキに全てバラしてしまったし、それをあいつが拡散すれば徐々に俺の信頼は無くなり、王になれてもすぐに転落するだろう。
俺の『夢』。忘れていた、奥の方へ押しやっていた思い出が、俺になだれ込んで来て、俺は泣いた。泣き叫んだんだ。
-クニサキ-
ヤマギは一通り泣き終えると、こちらを見つめ、こう呟いた。
「真相は俺の口から話す。だから、明日はお前の勝ちだ」
俺はヤマギに手を差し伸べると、こう言った。「立ってくれ、お前はヒーローだ。だから、お前が王にならなければならない。それに、俺はこの国にいる気はない」
ヤマギは困惑した表情を見せ、俺の手を弾いた。「そうかよ。なら、言葉に甘えさせてもらう」ヤマギは立ち上がらなかったが、俺はその場を離れた。そして、離れ際、こう言った。「俺は全てを断ち切る。罪は俺が背負う。放浪者なら、放浪者たる理由が必要だろうからな?」
次の日、国にはとんでもないニュースが拡散された。
『この国の元王子であるクニサキ ユウタが王である父を殺害し逃走か』
勿論、次の王はヤマギになり、クニサキは入国禁止とすることでこの事件は幕を閉じた。
____戻って…
決闘が終わり、クニサキが立ち去ったあと、ヤマギも立ち上がろうとした時、何かがヤマギを拘束し、首を絞めた。「ふふ、こういうのって…契約違反って言うらしいんですけど…どうされます?」ヤマギは何も言えぬまま、その場で硬直していた。
「あの…メディさんに聞かされてるんですよ。貴方に知恵を貸したから、クニサキを排除しろって契約をしたって…でも、負けましたよね?」
「あ、あぁ…殺さないで…くれ…」ヤマギは歯を鳴らし、カタカタという音を出しながらそう言った。
「殺さないですよ〜!」その奴は笑顔でそう答えると、こう言った。「う〜ん、貴方を殺すとクニサキさんに僕の存在がバレるかもしれないじゃないですか?でも、何も罰がないっていうのはおかしいですよね?」
ヤマギは、息をするだけで精一杯らしい。息をする音しか出さなかった。
「なので…貴方の国から、少しだけ人を貰っていきます。それで良いですよね?」ヤマギからすれば、顔こそ見えないが、何か恐ろしい、この世の物ではないものと会話をしている気がした。
ヤマギは必死で頷くと、気付けば先程まで居たはずの、化け物のような奴は居なくなっていた。




