愛情
-クニサキ-
子供の時から、父さんは俺の事より技術にこだわる様な人だった。ずっと前からこの国は隣と戦争してて、それで俺には、早く立派な技術者になってもっと強い道具を作って戦争に勝つんだ!って毎日のように言ってた。
まあ、そんな事はどうだって良いんだ。チャラス、ルセース、あとはマモスの為に、俺はあそこに戻らなきゃならねえ。
そこでふと、俺が何気なく見てみた本に、俺の知らない知識が乗ってあった。
何故?俺はこの部屋の全ての本を記憶していたはず…
『高性能影型外套の使い方について』
………。なるほどな。いや、つまり…何故かは知らんが俺の記憶は無くなっている。そして、今1度、この部屋の全ての本を見直してみるべきだな。
『能力のメカニズムについて』
「能力者は産まれた時から能力を持ってる人間と、後天的に能力を得る人間がいる。能力は実力が上の人間には通用せず、力量を測るにも丁度良いのかもしれない…か…」だからヤマギには能力が効かなかったのか…でも、今なら…?
部屋を出て、廊下を歩いてみる。壁には高そうな絵画やテーブルに置かれた壺がこちらを見つめてくる気がした。やっぱり気に食わねえ。俺はこんな所に戻る気はねえんだ。
チャラス…ルセースの為、そしてマモスの為…
握った拳からは、血が滲んでいた。
____こうやって、街を歩くのは初めてだな。前までは、父さんと一緒に街に出向く時にしか外に出られなかったから、ゆっくり歩いて、色々見てみるのも面白いかもな…
「きゃっ…!」まずい…「大丈夫か?」目の前にはワンピースを着た少女が倒れていた。恐らく俺とぶつかったのだろう。少女は俺を見ると、睨みつけて逃げていった。
そういえば…街の住人は皆、俺を避けている。いや、向き合わなきゃいけない。俺のした事…『罪』と。俺の能力はON/OFFの切り替えが出来ない。だから、いつも周りの人間の声が勝手に聞こえてくる。いや、本当は違う。能力は発想力だ。俺が能力をOFFに出来るとイメージ出来たら出来るんだろうが、
…無理だな、それに…俺はこれを聞いてなきゃいけない。
「裏切り者だ…」「のこのこと帰って来やがった」………
俺はただ、城下町を一周して帰った。
1、2年前、俺の母さんが死んだ。殺したのは…俺だ。あの生活に耐えられなかった俺は、母さんを殺して無理矢理家を出た。父さんは追いかけはしなかったと思うんだが。まあ、戦争の事しか頭に無い奴だしな…
街を出てすぐに、『霜月』という少女に出会った。彼女はとても美しくて、多分、見るもの全てを魅了させたと思う。俺は、その子の家で、少しの間、住ませてもらった。毎日料理を作ってくれて、そして毎日、『勇者パーティ』について絵本で語ってくれた。
なんでも、そいつらは通った街の悩み事を解決しながら、最終的には魔王と呼ばれていたものを討伐したらしい。俺は、「そもそも、この世界に魔族なんて呼ばれるものは見たことない」といい、否定したが、彼女はにっこりと笑い、「大丈夫、時が来れば、貴方も分かる時が来る」と言った。その時の彼女は、何か、いつもと違う…そうだな、オーラを放ってた。
次の日、彼女は「私に着いてきて、そして、私を見つけて…」と手紙を残して消えた。その後数日はその家で過ごしていたが、本当に彼女が帰ってこないことを知ると、俺はついに旅に出た。
そして…チャラスと会った。あいつは最初は、何か…心から、何かが抜けたような目と、感じがした。俺はあいつを、まあ、拾うって言い方が正しいかもしれない。そう、拾って、旅に出た。
最初はあまり乗り気じゃなかったけど、チャラスは結局、いつも見るみたいに、元気になって、いろんな場所を旅した。でも、世界は思ったより小さかった。一周して、戻ってこようとしてた。結局、霜月は見つからなかったし、何も得なかった。だが、あの街でルセースに、マモスに会ってから変わった。
始めて、あんな面倒な事に対応した。俺は「勇者パーティ」を思い出して、少し楽しくなってきたんだ。あいつらは、俺に『夢』を見せてくれた。だから、俺はまだ冒険を続けなきゃいけない。この世界はこんなにちっぽけじゃないって俺は知ってるよ。
なあ、霜月。………いや、今は辞めとく。今度お前に会ったら、その時に話してやる。だから、今は仲間とまた、冒険に出れるように頑張るよ。
そこから1週間ほど、自分の部屋で、全ての本を見た。何故かは分からないが、やはり知らない事が沢山あった。だから、それを覚えるのにほぼ1週間かかった。今度こそ、俺は自分のした事と向き合って、あいつらに会うんだ。
その時、父さんから呼び出された。「明日から、王位決定戦の投票がある。父さんはユウタを応援してるよ。じゃあ、頑張ってね」なんて、言ってたが。俺は街に出て、そこら辺を歩いてみた。
『ヤマギさんを王に!』『裏切り者を処刑しろ!』至る所にポスターが貼られていた。まあ、当然だろう。というより、俺の対抗はヤマギだったのか、「随分、慕われてるんだな」その声の先には、ヤマギが居た。
「へえ、分かったの。何で?」「さあな、もう分かってるんだろ?」俺がそう言うとヤマギはふっ、と笑い、得意気に語った。「お前、能力者だろ?知ってるよな?この国の能力者は、どうなるか」
「あぁ、知ってるさ、だから何なんだ?」俺がそこまで言うと周りに居た国民達がざわざわと騒ぎ出した。この国では、能力者の存在自体が犯罪になる。能力が発現すれば、すぐに抽出し、能力発現後1週間以内に抽出しなかった場合は…
「処刑だよ。知ってるだろって聞いたんだが…」ヤマギは口角を上げ、勝ち誇ったような表情を見せる。「結局、俺を捕まえれなければそれは行われないだろ?」その言葉にヤマギは笑顔を歪ませ、近付いて来た。
「そうか、じゃあやってやるよ。明日なんて待たずにお前等の王国は終わりだ!着いて来いよ。一対一だ」ふん、「そうだな、案内しろ」
___ヤマギが連れてきたのは草と花しかない原っぱだった。
「さあ、始めるか」俺がそう言い終わらない内に、ヤマギは突っ込んで来た。




