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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

鳥達

作者: 谷 遥


こんなことになるならって何度考えただろう

でもそれって自分で変えられることだった?



ある日翼が生えた

自分含めクラスメイト15人全員

みんなそれぞれ違った翼を持っていた


みんな混乱してたけど僕にとって翼は自由の象徴だった

みんなの翼は人々に衝撃を与えた

そりゃそうだ

最初は困惑と疑惑と嫌悪の目だった

でも1人じゃなかったから僕は大丈夫だった

翼を持つのはこの世界でたったの15人。僕達だけ

そのうちの2人は気が滅入ってしまって塞ぎ込んでしまった

残りのみんなは直し方を調べた

僕は1人で飛ぶ練習

途中から諦めた何人かが練習に参加した

うまく飛べない奴もいたっけ

みんなで出かけて一緒に考えた

最初に行動したのは誰だったか

自分達を知ってもらおうと動画を撮り出した

その子の動画は再生回数を伸ばした

でも世間からの目はあまり良くなかった

コメント欄は目を瞑りたくなるようなもので溢れた

ついにはみんなで家から逃げ出した

家族さえも信じられなかった

僕の家族は信じてると言ってくれた

でも、僕はみんなと行くと言った

許してくれた家族には今でも感謝している


雀の翼を持った子が自殺した

続け様に白い翼を持った子が自身の翼を折った

気が滅入ってしまっていた2人だった

翼を折った子はあまりの激痛にか気絶してそのまま起きることはなかった

原因となってしまったのは家族だ。と2人と仲の良かった子が言った

森の中に埋めてあげた

その2人の羽を一枚ずつ持った

普通の鳥よりも大きな羽だ

みんなは家から持ってきた物で生活を補った

でもすぐに限界が来た

いつかくることは分かっていた

私は森の中で食べる物を探した。でも、1人が我慢の限界で森から飛び出した

何人かは止めようとしていた

一番飛ぶのが上手いからって僕も止めてくれって言われたけれど僕が上手なのは森の中などの複雑な地形での方向転換だ。

街の方に飛んでいった彼は隼の翼で他とは早さが違った

結局彼が帰ってきたのは2日後だった

翼はボロボロで傷まみれ

今にも倒れそうで手には水の入ったペットボトルが一本握られていた

家から持ち出していた救急キットを使い果たしてなんとか持ち堪えた

どうやら人間にやられたようだ

もう世間では僕達の事が異常として広まっているようだ

そこから彼は回復はしたものの重度の人間恐怖症を患った

一年が経った頃にはさらに数が減った

栄養失調、怪我からの感染症、食中毒、持病の悪化…

鷹の翼の子、茶色い翼の子、鳩の翼の子、烏の翼の子が死んだ

そこからまた仲間割れで二つの派閥に分かれてしまった

街に帰って共存か森に住むか

僕は正直どっちでもよかった

みんなと一緒ならどこだってついて行った

けれど、恐怖症を患った彼を少しでも看病した僕達は、人の怖さを知ってしまった僕は森に残ることを選んだ。

僕と仲の良かった子は街の方へ行ってしまった


そこからさらに森の奥へ引っ越しをして一年ぐらい過ぎた頃だった

見つかった

上はヘリが飛んで地面では人と犬の声がこだました

鴎の大きな翼を持った子が木々に翼を打ちつけて落ちて行った

黄色と緑色をしたインコの翼を持つ子が網で捕らえられた

僕と残りの2人は森を突き進んだ

我武者羅に飛んでいた

気づいたら1人いない

いつのまにか僕と恐怖症を患った彼だけになっていた

夜になった

もう1人を探していた僕は彼に止められた

これ以上はもう無理だ

また明日探そう

渋々僕は歩みを止めた

結局次の日もまたその次の日もその子を探し出すことは出来なかった

1ヶ月が過ぎた頃だった

川のほとりで水を飲もうとした時だった流れる川の表面に突き出た岩に何か水色の物が引っかかっている

近づいた私は絶句した

約1ヶ月前にはぐれた水色のインコの翼を持つ彼のこと亡き後だった

きっと泳げない彼の事だろう夜になって目が見えず誤って落水

そのまま溺死

すでに肉は腐り落ち所々骨が見え隠れしているのに彼の翼は嫌味ったらしく綺麗なままだ

彼を岸辺へ上げて花を添える

羽を一枚取り報告のために来た道を戻った

水色と白のグラデーションが綺麗な羽だった

それから長い時間が過ぎた

今まで数えていた日数も数えなくなっていた

ただ一つ疑問ができた

僕達はおかしいほどに姿が変わらなかった

歳をとっているように感じなかった

どうして?なんて今更で

どうでもよかった

そんなある日だった

僕が森の散策から帰ると悲鳴が響いた

彼が人に捕まろうとしていた

人と網恐怖症の彼は運悪くどちらともと相対していた

咄嗟に彼の前にいる人に体当たりをした

相手も突然のことで対応出来ずに地面に突っ伏した

叫んだ

飛べ!

彼は飛んだ

僕は飛べなかった

少しの痛みとすぐに後を追ってくる倦怠感

足を見ると麻酔中の弾らしきものが刺さっていた

抜き取るがことすでに遅い

強烈な眩暈と共に地面が迫った

そこで僕の意識は途切れた


ピッピッピッ

うるさい

ピッピッピッ

何の音だ

ピッピッピッ

目が覚める

白い天井

白いベッド

白い服

自分の翼

隣には一定の音を出す機会

白い吊るしカーテン

点滴

ドア

空いた窓からの

もう二度と目覚めないと思っていた

ガチャ、と典型的な、でも久しく聞いていない音がした

⁈…あぁ…やっと…目が覚めたんだね…

ベッドの端に寄る私を見ている中年代の細っこい男性

…怖がるのも無理はないか、でもこれだけは言わせてほしい、僕達は君の味方だよ

信用なんてできないでもまだ決めつけるには早すぎる

…まずは今までの説明だね

大人しく耳を傾けた

仲間のことだった

そこからはもう感情なんてぐちゃぐちゃだ

途中で分かれた街へ行った4人はすでに死んでいること

まだ私達に対しての考えが浅く酷かった頃で

4人はすぐに捕まって実験の繰り返し

その末に過度なストレスにより自殺又は実験中の"事故"により死亡

分かれた後森に残って捕まった2人も死んでいた

その時はすでに国による保護の対象としても取り上げられ人々の考えもまとまってきていた頃だった

それでも一部の人にとっては金儲けの格好の的

売り捌かれて結局自殺してしまったらしい

らしいというのも見つけた時にはすでに…という状態だったそうだ

そして最後に彼

ハヤブサの翼の彼

最後の僕の仲間


…そうか、起きたばかりだから聞いてなかったのかな…


ああ、

もう彼は


君の隣で寝てるよ、


少しの間を置いて隣の白いカーテンを勢いよく開け放つ

ジャッという音と共に彼を視界に入れる

途端に溢れ出た感情は止まることなく彼の布団に落ちる

あぁ、久しぶりだ

ふかふかのベッドも

すっきりした寝起きも

涙も

喜びも

やっと動き出したんだ


次の日に彼は目覚めた

互いに抱き合って泣いた

仲間の死も共有した

しばらく経ってからあの中年の人に連れられて中庭に出た

そこに一台のトラックが停められ中から黒いビニールを被った大きめの何かが出された

その数6

取ってみて

と、どこか静かに促される

一番近い他と比べて小さめのビニールをめくった

目を見張った

大きな黄色と黄緑のインコの翼

全てのビニールを取っ払う

彼らだ

仲間達の象徴

彼らの翼だ

ああ、ああ

なんて懐かしい

なんて

なんて綺麗なんだろう


なんて…痛々しいものなのだろう

嬉しさと悲しみと驚きと…

言い表せないこれはきっと彼も感じている

ポケットから取り出す

ここにはいない彼らの翼の一部

白、黒、茶色、グレー…

地面に座り込む

どうしてこんなことになったんだっけ

彼らはどこに行ったの?

僕が大好きだった彼らはどこ?

翼と羽は美しく輝いている

こんなものと引き換えに彼らを失うなんて

彼らは翼よりも大事だった

彼らの笑顔が一番だった

なんでこんなことに?

どうして?

どこにもぶつけることができない激情はただ声と涙になっていった



月日が経った

ハヤブサの彼が死んだ

人の子供を助けて死んだ

助けなくてよかった

恐怖症、治らなきゃよかった

彼は死んだ

どうでもいいやつのために

彼やその守られた子を恨むことだってできる

残されたのは悲しいけれど

でもそんなことしたくないんだ

私の仲間はいい奴すぎる

私はそんな仲間が大好きだ



今日も私は仲間に囲まれながら字を書いている

彼らがいたことをいつまでも残すために


















以下参考程度にどうぞ

クラスメイトの翼の種類

本文で出た子

白鳥

雉(雌)

鸚哥(黄色、黄緑)

鸚哥(水色、白)

本文で出なかった子

話し手の翼

翡翠

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