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しあわせの芥  作者: 柊春三
第一章 学園編
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第五話 ツノ

食事を終えた徹たちはそれぞれの部屋にもどった。


(考えることが多すぎる。)


祈りや結晶について知らないことが多すぎる。知らない世界が知れた高揚もあったが、それ以上に情報負荷の頭痛の方が頭に重く残っている。

ただ考えるだけでは頭が爆発しそうなので紙に書き記してみることにした。ちょうどいい紙と机に置いてあった万年筆を取り紙に文字を書いていく。

人が神に祈ることによってそれが具現化される。それが祈りの結晶。そしてそれらが使うのが祈りの力。

恵先生と幸先輩の言っていたことを思い出しながら、紙に書き記していく。

ここまではまだいい。


(俺は、祈りの結晶なのか?)


万年筆を置いて少し考える。

そんな力を使った記憶はないし、さっきの女性のように見た目が特徴的なわけでもない。

試しに壁に向かって力を使うときをイメージした動きをしてみる。

もちろん何も起きない。


(何してんだろ。)


途端に恥ずかしくなり急いで机に戻る。

熱くなり始める顔を抑えながら他のことを考えることにする。


(そう言えば白紋って誰だ?)


幸先輩は白紋は食事は取らないと言っていた。


(人なのか?それともハクモンソウ?)


ハクモンソウとはコウの国に自生している植物だ。

毒を持ち、主に葬式や死の象徴と言われている。


(縁起がいいのはキモンソウだろうに。)


キモンソウもコウの国に自生する植物だ。

ハクモンソウと違い毒はなく、幸福や祭りの象徴とされている。

ここの学園名や寮名はハクモンソウから来たのだろう。

なぜわざわざ不吉な方をつけたのか…


「考えてもわかるまい。」


わからないものは仕方ない。徹は諦めて寝ることにした。

灯を消し布団に潜り瞼を閉じた後、頭の上で青白い光が見えた気がした。

気になりはしたが眠気には勝てず、徹の意識は深い夢の中に落ちていった。



「な、なんだこれえええ?!」


朝起きた徹は頭部に違和感を覚えた。

急いで洗面台まで向かう。

鏡を見ると、徹の頭にはツノのようなものがついていた。









「ツノですね。これは。」


たおやかな女性がそう言う。女性の名前は防護明希。養護の先生らしい。


「ど、どうしたらいいですか?俺こう言うの初めてで。」

「うーん、どうしましょうね。私もこのパターンは初めてで。何せみんなわかってからここに入りものですからね。」


ツノを触りながら落ち着いた声で明希先生は話す。

ゆっくりとした優しい口調を聞いていると、幾分か落ち着けてきた気がする。

うーんと二人して唸っていると来訪者が来た。


「結果はどうだったか?」

「おや、恵先生。」


恵先生は徹に養護室に行けと助言したため様子を見に来たらしい。明希先生は恵先生にツノについての説明をする。


(これ大丈夫か?)


ツノを触りながら、徹は二人の会話を聞く。

ちらりと養護室を見渡すと見慣れない器具や絆創膏や包帯が置いてある。

鼻の中をくすぐる消毒液の匂いで非日常を感じ、少しソワソワする。


「なるほどツノが。」

「そうなんですよ。どうしたらいいですか?」

「まあ箔がつくと思うしいいだろう。」

「何の箔ですか!」


励ますにしても適当なことを言われても困る。半眼になりながら恵先生を見る。当の本人は特に動揺することなく、こちらを見てくる。困ったような明希先生の様子と睨み続ける徹の様子から何か感じ取ったようで


「すまない。励まし方が悪かったか。」

「いえ、そんなことは...」

「恵先生はしっかり言わないとわからないからしっかり言っちゃっていいですよ。」


そう明希先生は笑顔でこちらを見てくる。恵先生も恵先生で期待に満ち溢れた目でこちらを見てくる。


「え、あ」

「言ってくれていいんだぞ。」

「...まあさっきの言葉は励ましっぽくはないですね。」


少し狼狽えながら答える。


「じゃあ何といえばよかった?」

「…。」


言われてみればわからない。返答に困って明希先生を見るも同じように悩んでいるようだ。

そうして少しの沈黙が流れる。


(キーンコーンカーンコーン)


静寂を切り裂くように本鈴が鳴り響く。

音量の操作ができていないのか音がとんでもなく大きい。

思わず耳を押さえながら鳴り終わるのを待つ。


「本鈴か。」

「あれ?授業の担当って?」

「私だな。」

「「「ん?」」」


あっけらかんと言い放つ恵先生。

担当教師も遅刻であることに安心したのも束の間、もう一人の同級生の顔を思い浮かべて二人は走って養護室を飛び出した。

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