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しあわせの芥  作者: 柊春三
第二章 街編
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第十四話 また手を取って

「さっきのって…。」

「ええ、徹ちゃんが思っている通りよ。」


空と別れが帰り道でカスミ先生と徹は話す。


(それにしても丸々天気を変えるって…。)


なかなかとんでもない力を持った奴を引き当ててしまったと徹は思った。

このまま本人に自覚がないままだと将来大変なことを引き起こしそうな気がする。


「また、あの子のところに行かなきゃね。」


そう言いながらカスミ先生はいつもより真剣な顔をしていた。

来火と凪は気付いたらすっかり仲良くなっていたようで、徹がよくわからない話題で盛り上がっている。

夕日が四人を照らす。凪の氷のような髪が照らされて綺麗だった。








「俺ここら辺だから。」


そう言って凪は立ち止まる。かなり街の外れまで来ていた。


「おう気をつけて帰れよ。」

「…うん。わかったよ。」


そう言って凪は眉を下げて笑った。


そのまま凪と別れて帰路に着く。

三人で今日のことを話しながら歩いていると徹はふと気になったことがあった。


「あの、先帰って貰っていいですか?」

「え?でもこのまま日が暮れたら暗くて帰れねえぞ。」


(確かにその通りだ、でも…。)


「凪ちゃんのところに泊まるのね。」

「え?」


微笑みながら問いかけるカスミ先生。それは質問ではなく確認だった。


「泊まるのよね?」

「あ、はい。」


押されるまま答える。するとカスミ先生は頷きゆっくり背を向けて歩いていく。


「いいんっすか?」

「久しぶりに会った友達よ。積もる話もあるでしょう?」


そう言ってカスミ先生は門の方に歩いていく。来火も納得はできていないが渋々ついて帰っていく。

よくわからないが凪と一対一で話すことができる。


「急がないと。」


そう言って徹は来た道を走って戻っていった。


□□□

ゆらゆらと明るい炎が揺れる。道端に落ちてた燐寸はこれで最後だ。

野盗に襲われた異国の商隊から奪った刃物を持つ。鞄の中に刃物を入れ外套を深く被って外に出る。

昼間の賑やかさはどこへやら、静まり返った大通りを歩き路地に入る。

路地裏を歩いていると後ろから気配がした。

急いで刃物を持ち気配を消す。物陰に隠れて気配の主を待つ。警戒もしないそいつは気配も消さずにこちらへ向かって歩いてくる。

目の前を通ると思った時気配が消えた。


(どこにいる。)


冷や汗を垂らしながら気配を探っていると後ろから声がした。


「凪。」

「!?」


声の方向には徹がいた。


「なんで…」

「帰ろう。」


そう言った徹の笑みは酷く優しく見えた。




「…えれない。」


うまく声が出ない。動揺で心臓の音がうるさい。


「なんて?」

「帰れない。」


声を絞り出す。


「もう、帰れない。」


頬は湿らず嗚咽で唇が湿る。


「そっか。」


徹はそれだけ言った。たったそれだけだったが友に見放されたと思った。

汚れた手を見る。もうこんな手を見たくはなかった。


「寒いな。」


徹は空を見上げる。


「なあ凪。」

「…。」

「何を見てきたか教えて欲しい。」


徹はしゃがみ込んで目線を合わせる。


「俺は、何も…。」

「何もない奴はそんなもの持たない。」


徹が指を指す。その場から逃げ出そうと思った。だが足がすくんで動けない。

徹は悲しそうな顔をしながらこちらに近づいてくる。


「と、おる…。」

「誰だ!そこにいるものは!」


後ろから大きな声がする。大勢の足音がこちらに近づいてくる。


「どうしよう。」


焦って徹を見るが、顔色ひとつ変えずに凪を抱える。


「捕まってろ。」


そう言って徹は飛び上がり屋根の上まで飛んだ。

口を呆然と開ける凪を見て徹は苦笑する。


「俺もどうやら人智を越えてるらしいわ。」


そう言いながら凪を屋根の上に下ろす。

屋根の上なんて歩いたことがないので、生まれたての子鹿のようにプルプルと震える。

そうすると、徹が凪の手を握り走り出す。


「どこに行く?」

「え、わからない。」

「そうか。」


そう言うと走りながら徹は何か考える。


「そうだ、星が綺麗に見えるところに行こう、今日は流星群らしいぞ。」


そうしていつものように優しく笑った徹はさらに強く凪の手を握る。


二人は夜の街を駆け抜けた。

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