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しあわせの芥  作者: 柊春三
第一章 学園編
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第三話 食事

「申し訳ございません。思ったより時間がかかってしまって。」


そう言った男の子は、見た目に似合わぬ丁寧な言葉遣いで寮母に謝罪している。

上等の服に身を包んでいるがところどころ泥や草がついている。

髪を少しなおしながら少年は寮母と話している。


「いいんだよ。それに今日は二人新入生がきてるからね。その子たちに手伝ってもらってるのさ。」

「新入生?あぁ、今日は入学式でしたね。」


そう言ってこちらを振り向いた。

あどけない顔をした男の子はこちらを向いて少し微笑む。


「入学おめでとうございます。私、福福幸と申します。よろしくお願いします。」

「えっと、桃瀬徹と申します?」


しまった。つられて使ったことない敬語を使ってしまった。

慌てて口を押さえる。少し声が大きかったらしく寮母の控えめな笑い声が聞こえる。


「徹くんですね。よろしくお願いします。」

「あ、幸先輩!」

「来火くん。入学おめでとうございます。」

「ありがとうございます。というか、帰ってきてたんですね!」

「ええ先程。」


なんか会話が弾んでる。混ざりたいが何の話か全くわからない。

モヤモヤしていると、恵先生たちが食堂に入ってきた。


「幸先輩?もう帰られたんですね。」

「あら、お久しぶりです、幸先輩。」

「恵くん、カスミさんお久しぶりです。先ほど戻りました。」


(先生が先輩呼び?)


大人びた子どもに見えるが、この人は何者なのだろうか…。

徹が少し疑問に思い考えてると、寮母がパンパンッと手を叩いた。


「さあさあご飯が出揃いましたよ。幸ちゃん、あの子達呼んできてくれるかい?」

「かしこまりました。すぐ戻ります。」


そう言って2階へ続く階段を登って行った。

今がチャンスだと思い来火に近づき耳打ちをする。


「なんで幸先輩?」

「実は、ああ見えて幸先輩は玄人なんだよ。」

「玄人ってなんの?」

「そりゃこの学園だから。ここまでいったらわかるだろ?」

「すまない、わからない。」

「へ?お前どうやってここきたの?」


すまないがわからないものはわからない。だがここまで驚くことか?

その反応を少し不満に思い、ぶすくれた顔になる。

すると数名の人を引き連れて幸先輩が戻ってきた。


「呼んできました。ただ、白紋は今日は食事はとらないらしいです。」

「ありがとう。みんなと食べればいいのにねえ。」


少し呆れたような寮母はそう言って器具の片付けを始めた。

そうして徹たちは呼ばれてきた数名と一緒に卓子を囲む。


「これで全員ですね。それではいただきましょう。」

「「「いただきます」」」


そうしてカレーを頬張る。思ったより辛かった。

徹にとってはちょうど良かったが、来火は想定外だったらしくいそいそと水を入れて飲んでいる。


「幸先輩、進捗はどうでしたか?」

「まずまずって感じですね。反対派の声が大きくて、目立った進展はありません。」

「“将”の方は?」

「もうそろそろ限界です。今もまだ堪えてる方でしょうが、このまま進むとどうなるか。」


(将?)


何が何だかわからないが、他の人たちは頷いたり難しい顔をしている。隣にいる来火は食事に夢中だ。何かしら教えてくれることを期待したが、特に説明はなさそうだ。

よくわからないがカレーを咀嚼しながら聞き耳を立てる。

話の流れは概ね政治についてだろう。ただ知識がないので理解はできない。

先程の玄人についてもよくわからないので、それについては話が途切れた時に聞いてみるとする。






「ですかね。これ以上報告できることはなさそうです。」


今しかないと思い徹は手を上げる。


「あの幸先輩に一つ質問を宜しいでしょうか?」

「そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。どうしましたか?」

「では、さっきこいつが幸先輩は玄人だって言ってたんですけど、どういう意味ですか?」

「お前マジでわからねえの?」

「何も説明してくれなかっただろ?俺はここの予備知識がないから、説明してもらわないと困る。」

「何も知らないでここにきた?」


そう一人の少女が質問をする。一瞬睨まれたのかと思ったがそういう目つきみたいだ。

想定外の相手から質問されて緊張したが、徹は臆せずに応答する。


「知りません。」

「じゃあどうやって入った?」

「担任にここしか受け入れてもらえないと言われて...」

「なるほどねぇ。結晶の割に生粋の一般人かぁ。」


そう別の女性が言った。その女性は頬には鱗のようなものがこびりついており、目はまるで獲物を狙う蛇のようだ。女性はスプーンに映った自分の顔を見ながら話す。


「結晶?」

「あぁ一般人は知らないだろうねぇ。」


女性は少し悲しそうな笑みを浮かべる。


「何か隠されているんですか?」

「そうだよぉ。国は公にしたくないのさぁ。」


スプーンを皿に置いてこちらの顔を見つめる。

蛇に睨まれたようで徹の体が強張る。









「わしらみたいな紛い物はねぇ。」


妙にねっとりと放たれるその言葉には、少しの寂しさを感じさせるようだった。

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