第二十七話 たすく想いのその先は 中編
次に丞が目覚めたのはその丸一日後だった。
目が覚めた時、神様みたいな男の人は寝具の隣にある椅子に座って眠っていた。
目の下にはクマができている。
(ずっと隣にいてくれたのかな?)
声をかけようとしたら腹の虫が鳴った。
「ん?」
その音で男の人は起きた。
吸い込まれそうな緑の瞳が丞を映す。
「起きたんだね。」
「あ“っゲホッゲホッ。」
声を出そうとすると喉が酷く痛み、掠れた音しか出ない。特に慌てた様子もなく男の人は水を差し出す。
丞は差し出された水を飲み干す。水が喉を潤し少し喉の痛みがマシになった。
「ここはどこ?」
「ここは僕の職場の医務室だよ。ちゃんとした場所だから安心してね。」
そう言って男の人は笑う。少し安心した丞だったがすぐに不安に襲われる。
「母さんと父さんは?」
「...。」
周りを見渡しても両親らしき人はいない。ただ暗い顔をした男の人がそこにいるだけだ。
「あたしきらわれちゃったのかなぁ。」
そう呟いた丞の手のひらには大粒の水滴が落ちた。止めようと目を覆っても水滴は止まることを知らない。
布団が涙で濡れる。
口からは鳴き声とも言えないような嗚咽が漏れ出た。
「会いたいの?」
「...。」
「君に暴力を振るうような人たちだよ。」
「でも、母さんと父さんはきっとあたしを…。」
そこまで言って丞は止まった。
もう自分が愛されているのかも分からなくなっていた。
涙が溢れる。止まってほしいのに止まらない。
男の人は困ったように笑った。
「じゃあ明後日会えるようにするね。」
それだけ言って男の人は出ていった。
丞はまた1人になった。
「はい、お粥ですわ。」
「ありがとう。」
上品な言葉を使うこの人は男の人と入れ替わりで入ってきた。名前はイザベラというらしい。
「姐さんと呼んでくださいまし。」
「ねえさん。」
「よくできました。」
姐さんと呼ぶとイザベラは大層喜んだ。
「全く環は自分勝手ですわね。」
「たまき?」
「あなたを拾ってきた人の名前ですわ。知らなくって?」
「神様みたいな人?」
そう丞がいった時イザベラは一瞬ぽかんとした顔をした。
「神様…ええ神様かもしれないですわね。」
イザベラは少し悲しそうな顔をした。
(神様ってよくないの?)
少し不安になる。
「おかゆ冷えちゃいますわよ。」
「ん。」
そう言われ粥を頬張る。
前まで食べていたのと同じ粥だ。でも前より少し塩辛く感じた。
明後日とは言われたが意外に長い。
やることがない丞は布団に寝ているだけだった。
「ねえさん。環はこないの?」
「仕事をしていますわ。」
「会えない?」
「環は今忙しいのです。だからきっと会えませんわ。」
イザベラはそう言う。
(つまんないな。)
そう膨れていると頭の中に声が響く。
『環も忙しいのはわかりますけど、この子にも会いにきてあげて欲しいですわ。自分で拾ってきたと言うのに。』
驚いて、ため息を吐いているイザベラを見る。イザベラは少し驚いた顔をした。
「やっぱりそう思うよね!」
「何がですの?」
「拾ってきたのに放置はひどいって言ってたでしょ!」
イザベラは顔を顰める。
『この子今何を...。』
「何をってねえさんが声に出して言ってるでしょ?」
「え?あなた今何歳ですの?」
「7歳だけど。」
「なるほど。ちょっとお待ちくださいまし。」
そう言ってイザベラは廊下に出て人を呼びつけ話をする。
(あんまり良くなかったのかな...。)
不安に駆られ今にも泣き出しそうな丞。
戻ってきたイザベラから変な声は聞こえてこなくなっていた。
「環に想定より早く会えるかもしれませんわ。」
そう言ってイザベラは複雑そうな顔をした。




